富士見丘 パラリンピックを応援する生徒現る

世界のグローバル教育の象徴の1つにIB(国際バカロレア)、日本のグローバル教育ではSGH(スーパーグローバルハイスクール)があります。富士見丘もSGH指定校ですが、どちらもハイレベルの学びとハイレベルのエッセイライティングを学ぶ場です。

しかし、実は何より大切なのは、世界貢献ができるボランティアです。SGH指定校は2年前に成立したばかりですから、卒業生の活躍はまだこれからですが、IBでは、真のグローバルエリート人材としてフィランソロピストが多く活躍しています。SGH指定校からも同じような人材が輩出される気運が流れていますが、今回富士見丘の生徒に未来のフィランソロピストを予感させる生徒が現れました。

先日、富士見丘に東京オリンピック・パラリンピック担当の遠藤大臣がやってきました。みなさんといっしょに東京オリンピック・パラリンピックを成功させましょうという趣旨の講演をしたのですが、そのとき1人の中3の富士見丘生が立ち上がりました。そして、「障害をお持ちの方のスポーツの支援をするボランティアに参加していますが、その重要性につてメディアなどがまだまだ取り上げていませんが、今後もっとその重要性を広報して頂けますか」と大臣に質問をしたのです。by 本間勇人 私立学校研究家

遠藤大臣は、大いに感動し、オリンピックとパラリンピックを公平に盛り上げていくことが重要だから、私たちもそのように運営し、広めていく活動をする。ぜひあなたのように多くの生徒の皆さんもボランティア活動をしてほしいと回答しました。

そのシーンを見て、大臣に臆することなく、きっぱりと表現できる勇気と自信はどこからやってくるのだろうと好奇心旺盛になり、大島先生にインタビューを設定してもらいました。そして、そのことを、ストレートに聞くと、すでに準備していたプレゼンテーションポートフォリオによって、丁寧に詳しく話してくれました。

もともとのきっかけは、中1の英語の授業だったそうです。オリンピックは目立つのに、パラリンピックは予算規模から報道規模から、世の中の人の意識から、あらゆる点でスモールサイズで目立たないという記事を読んで、たしかに障害者スポーツについて自分も知らないことが多いと思ったそうです。

それから、ニュースやテレビなどを気にしていたところ、昨年のソチパラリンピックで、障害者スポーツの全貌を概観できるようになったと同時に、パラリンピックのニュースや新聞記事などで扱われる情報が明らかに少ないと感じ、調べることにしたそうです。

背中を押してくれたのは、富士見丘の中1から高2まで毎年学ぶ「自主探究5×2」という一年間継続して行う探究学習の機会があったからだと教えてくれました。5×2とは富士見丘は月曜日から金曜日は、教師が準備した学びの機会を活用し、土曜日と日曜日は自主的にテーマを広く深く学んでいく自主探究の場として活用するという同校の学びのコンセプトのことです。

「5×2」で探求した内容について、毎年学期末にプレゼンテーション・コンクールがあります。彼女は、中1の探究で「病院」をテーマに選び、見事に最優秀賞に輝いています。実際に病院や福祉の現場を訪れ、実習体験や患者の方との触れ合いもあったそうです。その体験がこの車いすバスケットの選手をはじめとする障害者スポーツやパラリンピックへの関心を高めっていったのです。

調べていくと、そもそもパラリンピックは、戦争で負傷した兵士たちのリハビリテーションとして「手術よりスポーツをもって治療に導く」という理念から出発していることに気づきます。戦争や病気、格差から生まれてくる問題の解決の1つが「病院」であるけれども、病院の外でも、そのような問題を解決する営みがあり、その1つに障害者スポーツという場があるのだと気づいたのです。

そこから内閣総理大臣杯争奪 車椅子バスケットボール選手権大会を見に行ったり、車椅子バスケ体験ワークショップに参加したりすることになります。

(写真は、東京都車椅子バスケットボール連盟から)

そこで、北九州チャンピオンズカップ日本代表で、リオパラリンピック日本代表候補の湯浅剛選手に出会います。湯浅選手の仲間とも会って、「車椅子バスケはまだまだ知られていない障害者スポーツです。イベントで興味を持ってくれる人もいますが、それ以上追い続ける人はほとんどいないのが現状です。だから中学生のあなたからどんどん情報を発信していってください」と声をかけられ、自分のやらなければならない意志がはっきりしたのだと。

(写真は、SPORTSHOOTERー車椅子バスケットボールばかりのブログから)

それで、大臣にきっぱり自分の志を貫いたのですねと尋ねたところ、「そうですね。しかしあのときの私の支えになったものはあと2つあります」と話を続けてくれました。

その1つは、夏休みの課題図書リストの中から「りかさん」に出逢ったことで、「差別にも澄んだものとにごりのあるものがある」という主人公の言葉に、今までのオリンピックとパラリンピックの違いに横たわる問題があるのではないかと気づき、自分は、その澄んだものとにごりのあるものを意識しながら活動していこうと思ったというのです。

もう1つは、説明会や入学式、そしてことある度に、吉田校長が「私たちの学校は地球にやさしく人にやさしい学校です。人にやさしいということは目に見えません。だからとても大切なことなのです」と学校の理念「忠恕」の話を聞かせてくれることですときっぱり。

(遠藤大臣に少林寺の演武を披露したあと、あの質問をした。)

自分の想い、多くの人々の想い、そして学校の想い、それに東京オリパラに向けての想いが、重なり合った強力なボランティアのパワー。彼女は、富士見丘を勇気づけ元気づける部活の1つ少林寺部の部員でもあります。文武両道とボランティア精神。真のグローバルエリートの条件を見事に満たしているのです。

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