共立女子 世界を見つめるアクティブラーニング(1)

11月19日(木)、共立女子の中3の公民の授業で行われた「ニュース報告」。13日のパリ同時テロを受けて、戦争やテロが起こる根本的な世界問題を洞察する場となりました。

安全保障関連法や辺野古問題に横たわる問題が、今回のパリ同時テロの問題と根本的なところでつながっているかもしれないという世界問題を鋭く読み解く共立女子の生徒。18歳選挙のことも重ね合わせ、世界の問題を解決する国づくりにどうかかわるのかコミットする瞬間もありました。

ニュース報告のあとに行われた担当の菊地先生の授業も、その想いを授業につなげながら展開していました。「世界-自分-授業」がつながる。まさに世界の問題をアクティブに洞察する学びが広がっていたのです。by 本間勇人 私立学校研究家

共立女子は「対話」に満ちた学校ですが、それはおそらく語るべきこと、考えるべきことが、生徒一人ひとりの内面に広く深く豊かになっているからでしょう。なぜ豊かに語り考えることが内面に広がるのでしょう。それはおそらく、生徒全員が、本とニュースを読み込み、自分の想いをアウトプットする機会を設定されているからです。

読書については、読書感想文で終わらずに、さらに複数冊の本の精神的つながりを発見してそれを発表する「ブックトーク」というアクティブラーニングにつなげています。ニュース報告では、生徒一人ひとりが関心のある新聞記事を中心に、世界を読み、それを洞察している自分の判断力や意志をアウトプットするアクティブラーニングとして展開しています。

「ニュース報告」は、中3の公民の授業の冒頭で、毎回行われます。授業の進度の関係にもよりますが、2人ずつぐらいがプレゼンします。生徒は自分が気になったニュースを新聞から切抜き、その事実を説明するだけではなく、いくつかの記事を読んだり、自分で事件の背景を調べながら、何が根本的な問題なのかを探し、自分の考えを発表するのです。

テレビのニュース番組で言えば、アナウンサーであり、解説者であり、キャスターであり、コメンテーターでもあり、多様な役割をコンパクトに3分くらいにまとめた感覚のプレゼンになっています。かなり鋭い洞察力が発揮されている様子を想像することは難しくないでしょう。

(今年9月に行われたブックトーク。フリップを使いながらプレゼンテーション)

中1から中3までブックトークを行っているということもあり、ニュース報告のプレゼンも実に余裕があって、ストーリーテラーよろしく聞き手を語り手の世界に引き込んでいきます。また、ブックトークではフリップも活用するので、思考をデザインとして可視化するトレーニングも、ニュース報告で活かされていました。レジュメの左ページは記事のスクラップで、右ページはプレゼンの流れが文章ではなく、チャート形式で編集されています。

最近話題になているデザイン思考とシステム思考の統合がなされていると捉えることもできます。広報担当で国語科教諭でもある金井先生は、こう語ります。

「ブックトークとニュース報告とでは、扱う素材が違うのは当然なのですが、生徒がアクティブに学ぶ活動は共通しています。読書することも新聞を読むことも、情報リテラシーを活用する点では同じですし、読書感想文のように論理的文章を書く学びは、発表する時のストーリーを創るときにも大いに役立つはずです。

そして何より、私たちは、文章表現力だけではなく、絵や図で描く表現力も気にかけています。絵や図は、本当に生徒一人ひとり特徴がはっきりあらわれてきますから、そこを大切にすることは、生徒にとっては自分を大切にすることにつながるからです。

知識や論理とそれを活用して自分色を出していけることは、内発的モチベーションをあげることになると確信しています。このような学び方や考え方という点では、共立らしさという意味で各教科あたかも阿吽の呼吸で共通していると思います。」

今回は、パリ同時テロの問題が多く取り上げられました。2つのクラスを見学したのですが、1つ目のクラスでは2人報告したうち、1人は「辺野古移転問題」、もう一人は「パリ同時テロ」のニュースについて報告しました。

2つ目のクラスは、4人ニュース報告者がいましたが、4人ともパリ同時テロについてニュースを取り扱っていました。しかし、新聞記事の切り抜きはみな違っていました。したがって、プレゼンの切り口や問題へのアプローチにおいて、それぞれ特徴がでていたのは言うまでもありません。

今回の事件に関するオバマ大統領のコメントに焦点をあてた生徒もいたし、オランド大統領のスピーチへの危うさについて語った生徒もいました。ヨーロッパとイスラムの歴史に言及する生徒もいたし、日本も対岸の火事ではないという切り口で語る生徒もいました。もうすぐ自分たちも18歳選挙を行使する立場になるということを深く受けとめてこの問題を考えようと問いかける生徒もいました。

このように切り口はみな違いましたが、戦争を止めるにはどうすべきかを対話していくことの重要性について語っていました。この根本的な問いにおいて、辺野古移転問題を語った生徒の考えも一致していました。もちろん、現実と理想の越えがたい矛盾に対する悲痛の思いも共有していました。しかし、にもかかわらずであると。未来の世界は自分たちが創っていくのだからという強い意志が伝わってきたのです。

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