聖パウロ学園 生徒1人ひとりの希望を応援

聖パウロ学園は、高尾山に連なる自然豊かな森の中にある。少人数の高校がゆえに、生徒1人ひとりの才能を見出す学びの環境を大切にしている。もともと教師と生徒の「対話」がベースになっている授業やイベント、部活が実践されているから、知識偏重型の教育から、主体性・多様性・協働性という人間力と思考力・判断力・表現力という考える力を重視する転換ビジョンを掲げる学習指導要領の改訂は、大歓迎である。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
 
2017年1月9日、次の日の始業式の準備の一環として、教員全体研修が行われた。その名も「学園長勉強会」。高橋博学園長による21世紀型教育改革のビジョンを先生方1人ひとりと共有する勉強会。
 
そのビジョンとは、21世紀型教育改革は、知識をたくさん覚えてすばやく引き出せる能力だけを学力とするのではなく、生徒一人ひとりが、自分の関心のあることを、リサーチし、議論し、考えて深めて、自分の世界観やものの見方を広げ深めていける力を身につけていく学びの環境を創ること。
 
 
それぞれの関心を広げ深めていくのだから、その過程でオリジナリティ、クリエイティビティが豊かになる。一方で、その過程では、協働というチームワークが大切になるから、聖パウロ学園が大切にしているman for othersの精神も豊かになる。
 
それぞれの関心は、生徒1人ひとりによって違う。しかし、その関心を世界に広げていく学びのスキルは、聖パウロ学園のオリジナルでかつ普遍的な学びの理論に基づいている。
 
ただ、その学びの理論を今まで見える化して、学園の教師全員が共有するという研修はあまり行ってこなかった。そこで、今回「学園長勉強会」を通して、聖パウロ学園の学びのシステムの見える化を高橋学園長は企図したのだ。ワークショップ型の研修は、具体的で実践的な展開になるから、その過程で、わかった気になっていたビジョンを改めて実感できるようになる。
 
 
学園長自らがフォシリテーターになって、先生方と議論し、先生方が共通して持っている暗黙知としての学びの理論をシェアしていく。
 
題材は、昨年の東大法学部の推薦入試の論文問題。難民受け入れに対する3つの異なる考え方をディスカッションによってクリティカルに考え、自分の難民問題の解決策を提案する問題。
 
もちろん、高橋学園長は、この問題を先生方と解くことを目的とするのではなく、このような問題を解くには、聖パウロ学園としてどのようなキーコンピテンシーを育成していけばよいのか、またそのキーコンピテンシーを土台に、どのような学びのスキルを生徒とシェアしていけばよいのか授業の方法を語り合い、図に変換し、プレゼンする研修となった。
 
 
いわゆるアクティブラーニングのプロトタイプをワークショップ型スタイルで議論し、共有していったのである。
 
高橋学園長は、ふだんから、自己肯定感の低い日本の生徒たちが、聖パウロ学園の生徒のように、自分の関心ごとを広げ深めていきながら、自信をもち、自分の未来展望に希望が持てるようになってほしいと先生方と対話している。
 
そのためには、まずは聖パウロ学園の授業をその確固たるモデルにしていきたい、そのために定期的に「学園長勉強会」をいっしょにやっていこうと会を締めくくった。
 
 
そして、この研修を持続可能にし、かつ普段の授業で最適なカタチとするために、学習する組織にしたいと「プロジェクトチーム」を立ち上げることも付け加えた。
 
聖パウロ学園は、生徒一人ひとりの希望の実現をサポートする学習する組織を形成していく。今年の4月から迎え入れる高1は、2019年に大学を受験するから、2020年大学入試改革は一見すると関係がない。
 
しかし、すでに4技能英語は前倒しで改革が行われているし、高校時代の学習履歴とクリティカルシンキングを重視する東大推薦入試タイプの入試問題も増えてきている。大学入試改革を待つまでもなく、学びの体験や思考力、コミュニケーション力は重要である。
 
 
(研修会終了後、リフレクションと今後のプランを議論するプロジェクトチーム)
 
そして、その学びのスキルや能力は、大学卒業後、激動の社会の中で人生を歩んでいくときにも必要なものである。聖パウロ学園の教育は、いまここで生徒1人ひとりが未来を創る力を身につけることを応援する新しい態勢づくりに挑戦しているのである。
 
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