「第2回21stCEO静岡シンポジウム」(2)

トークセッション 新しい波

次に、トークセッション。「中学入試の新しい波 教育情報と学力情報」と題し、首都圏模試センターの北一成氏(教育情報部長)と山下一氏(統括マネージャー)が首都圏の中学入試事情を語ってくださいました。
 
お二人によると、首都圏の中学入試が変化しているとのこと。東京・神奈川の入試の中心は2科4科だが、思考力入試や英語入試といった新しい入試が増えてきています。グループディスカッション、プレゼンテーション、調べ学習、ものづくりなど、新しい評価軸での入試も多くなっています。
 
こうした流れは、今までの2科4科受験で掬われてこなかった多様な才能・資質を発見し、発掘しようという学校の意志の現れといえます。
また、小学生のライフスタイルが変化していることもあります。放課後は学びだけでなく、スポーツ・音楽・芸術、英語といった習い事に勤しみ、中学受験塾に通い詰める子は減っているそうです。
 
実際、2018年入試は私学の適性検査型(思考力型)入試の実施校が136校、応募者数は11000人程度。英語入試の実施校は112校、5年間で7倍となりました。英語を勉強している子が増えた一方で、帰国生にも対応しようという動きが垣間見えます。
 
また、私学のダイバーシティ化の進展もあり、帰国生を受け入れる学校も増えているそうです。加えて、習い事(自己PR・プレゼン型)も増加し、私立中入試はさらに多様化することが予測されます。
 
そして、大学入試で問われる「思考力・判断力・表現力」を問う入試問題も生まれています。大学入学者評価テスト(センター入試の後継)の国語のように、情報を獲得しながら論理的に説明するような問題が難関校でも課されています。
 
こうした入試の変化に対応するために、首都圏模試センターではブルームのタキソノミーをベースとした「思考コード」をつくり、作問や分析に当たっています。知識を入れて理解すること、および論理的に事柄を捉える思考が主となりがちな学校の中で、物事をクリティカルに捉えて創造的に思考する力を求める学校が出現している様子がわかります。
 
後者のような学校は、思考コード(メタルーブリック)を学校でつくっています。従来の知識中心・論理中心のテストでは測りきれない創造的な思考をどのように育むか、教育の中に埋め込んでいるのです。そして、こうした学校は高大接続改革や学習指導要領改訂での肝となる「主体的・対話的(協働性)・深い学び」の実現可能性が高いといえます。
 
教育の現場では単一の評価で、一律で並べて評価することが定説と化しました。しかし、人間の能力は多様なのは自明です。大学入試も上記のように評価軸が変わり、中学受験生の保護者は2020年大学入試改革とその先の変化を見据えています。そうした才能を拾い上げる学びを展開する学校を見つける指標として、思考コード(メタルーブリック)を持つ学校かどうかという物差しを持つとよいのではないでしょうか。
 
 
そして、中学入試もこうした流れに則り、大学入試改革を先取りした変化が起こりつつあります。教育理念を軸に世に送り出したい人物像を明確にし、その育成のためのカリキュラムを築き上げ、授業が展開される。こうした学校が、真の実力を持つ学校と言えるでしょうし、人気が出る学校になります。
 
こうした学校を見つけるためには、先見性 があるかどうかが一つの指標になるでしょう。ICT教育、自主性、協働性、英語4技能、多様性。こうした掛け合わせにより自他を肯定し、自らの存在価値を高めていくものです。そうしたことを具現化したものが21世紀型教育です。
 
既存の価値観、偏差値重視・進学実績重視の学校は、混沌とした未来に生きる子どもを送り出すことを見据えた学校と言えるでしょうか。そうした教育をクリティカルに見て、子どもファーストの教育を実践しようという志がある学校をご選択いただきたいです。
 
そして、こうした新しい学校が私学だけでなく、公立にも生まれている現実。公立はここまでやるのだから、私立はどうするのか、と両氏が訴えかけているような印象を受けました。2020年に向かって大学受験は厳しくなります。大学入試改革、英語CEFRで言えばBレベルからCレベルへ、論理的思考だけでなく創造的思考まで問われるようになります。そうした流れの中で、どのような私学をご選択なさるかが、受験生の未来が決まるといっても過言ではありません。
 
中学受験はキャリアデザインの入口です。6年間のキャリア教育のあり方は中学次第。未来をひらく子どもになるか、環境に依存する子どもになるか。この選択にかかっていると言えるでしょう。
 
最後に、北氏からは「21世紀型教育を行っている学校は難関校ではない。これから先の力を身に付けられる力を育む希望の私学がある。学校の中身を見てほしい」、山下氏は「21世紀型教育はこれからの教育の形。これからも見守っていきたい」と訴え、トークセッションが終了しました。
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