21世紀型教育機構は、グローバル教育3.0のステージに向かって、学内外のネットワークを広げ、グローバルイマージョンの環境を学校でつくっています。聖学院も、タイ研修という生徒が自己開示し、他者の痛みを感じ世界精神を自ら生み出す規格外の教育を実施しています。また、都市デザインや東京パラリンピック支援、はちみつをつくりその利益を寄付する起業プロジェクトなど、多様な実践的教育を行っています。
入試においては、生徒の才能に応じた多様な思考力入試を開発・実施し、NHKや静岡放送など多くのメディアでも取りあげられています。
しかし、他の学校と大きく違うのは、このような規格外の教育活動が、日々の授業と結びついているというコトです。ふだんの授業がPBL形式で進行するため、一時間一時間の授業が、生徒自身にとって特別で新鮮です。いつも自分にとって特別な時間が待っている最高の授業が聖学院では行われています。by 本間勇人 私立学校研究家
(聖学院は2カ月に1度くらいの割合で、有志の先生が集まって、授業デザインの勉強会を行っています。PBL型のワークショップ形式で進み、静岡聖光学院の先生方や東大の研究者も参加しています。仕掛け人は、21教育企画部長児浦先生。)
児浦先生の数学の授業は、PBL(プロジェクト学習)型授業。空間図形の切り口を学ぶ授業は、ポリドロンで立体図形を組み立て、切り口のそれぞれの頂点をひもで結んでいきます。ポリドロンにひもを結び付けて、切り口の図形をイメージする創意工夫は、児浦先生自身のアイデアです。
二次元のポリドロンを三次元に変換し、点を結んで立体を切るから、三次元と一次元を結合して、二次元に変換するというトランスフォーメーションの連続が、触る感覚を通してイメージされていくのです。
児浦先生は、指は第二の脳であるという信念をもっていて、まずは指で触りモノをつくりながら、脳内にイメージを転写していく学びのプロセスを大切にしています。感覚と脳のコミュニケーションが生まれる数学の授業なのです。
そして、アプリを使って、サイバー上で空間図形の切り口をイメージを確認していくような授業展開。また、その思考過程を言語化することも忘れません。Yチャートという思考ツールを使うため、生徒は言語化するときにそのツールでサポートされます。
児浦先生は、PBLの最後は、きちんと講義をします。グループワークでは、様々な学びのツールや思考ツールを、生徒の考えるサポートメディアとするファシリテーターをやり、最後は教師のロールプレイもするのです。
この授業で、生徒たちは、数式を図式化、言語化、立体化など相互に変換し合います。一次元、二次元、三次元を自在に変換転換する作業もします。体験と定義の相互関係も発見していきます。数学的思考の醍醐味が1時間の中につまっているわけです。
生田先生の理科の授業。水素の化学的性質や生活の中でどう使われるかなど、トリガーになる対話からはじまります。また、水素を使った実験のリスクマネージメントの話も。クリエイティブテンションのマインドセットから始まるのです。この体験という実験は、危険も伴うスリリングな体験。知的な精神だけではなく、自律する精神も同時に養います。
そして、生徒の知的好奇心は、水素と火によってでる音を聞いたり、美しく水素が燃える様子を見たり、運動エネルギーに転換してプラカップロケットを飛ばしたり、多角的な視点で、水素の性質のアイデンティティを組み立てていく思考として成長していきます。
条件を変えての仮説実験。五感と思考と物質のアイデンティティの関係を結合する実験の過程。そして、水素の特徴をまとめ、気体という物質の概念へ駆け上っていく生徒たち。さらに、リフレクションとシェア。実験を通して科学的思考を生徒は標準搭載することになるのです。