共立女子 「問題発見・解決型」授業

「解なき社会」において直面する課題に、自ら取り組み独自の判断ができる女性の育成を目標とする共立女子中学のオープンキャンパスに伺い、三つの体験授業に参加させていただいた。「理科:ホバークラフトをつくろう」「社会:地理実験教室」「国語:短いが勝ち!作文競争」。これらの授業において共通していたのは、知識の伝達よりも「まずはその科目を楽しむこと、身近な現象に目を向けること」を重視している先生方の姿勢だ。生徒はもちろん、先生方も生き生きとしているのが印象的であった。(TES社特派員 松本実沙音 東京大学1年 )
 

1 「楽しさ」を伝える

ホバークラフトを作る授業では、風船や紙コップ、プラスチック容器などを使って、実際に机を浮上する装置を作った。浮上する原理だとか、実際に浮くかどうかといったことよりも、まずは作る楽しみを味わうことが大切だという雰囲気が伝わってくる。自分で作るからこそ、うまくいった時の喜びもあるし、また、うまくいかなければ微調整もできるというものである。
 
 
全員のホバークラフトが完成したら、今度はそれを使ってボーリングゲームが行われた。風船の空気が抜け切る前にホバークラフトがピンに到達しなければならず、さらに、方向などを定める力加減も難しい。ここでも子供たちは試行錯誤しつつ、浮上する原理を知識として教わるのではなく、「ボーリング実験」にのめり込んでいく。
 
見学してしばらくは、摩擦や空気圧といった概念をいつ教えるのだろうかと見ていたのだが、授業前に説明会で聞いた渡辺校長の言葉が蘇ってきて、ようやく私にも授業の狙いが見えてきた。校長は、「解なき社会に独自の判断ができる女性の育成」を語っていた。なるほど、この授業もまた、自力で考えるための材料が提示されているのである。これは「問題発見・問題解決型」の授業だなと思えてきた。原理を発見、推論するためには、目の前の現象をしつこく観察しなくてはいけない。だからこそ、楽しく試行錯誤するのである。教科書を読んで知識を得るだけの勉強と比べ、遥かに実践的で応用のきく学習ができるだろう。
 
2 身近な現象をモデルで理解
 
地理実験教室では、自然現象をモデル化して示してくれた。液状化現象、断層、火山の噴火などといった自然現象である。液状化現象は小さな水槽の中で再現され、地層は小麦粉とコーヒーで作り上げられ、火山の噴火は小麦粉と風船によって再現された。

自然現象をモデルで理解するということもまた「解なき社会」を生きる上で大切なことに違いない。それによって十分に検証ができるということを意味しているからである。

3 生徒が主体となる参加型授業

国語の体験授業では、決められた語群を使って出来る限り短い文章を作るという参加型の授業が行われていた。指定された言葉は、「六月」「めきめき」「パンダ」「さす」「おいしい」「旗」「驚く」「単純だ」であった。

このアクティビティも決められた解答があるわけではない。いかにしてわかりやすく、かつ簡潔に書くかという作文の授業なのだが、全く堅苦しさがなく、生徒たちは楽しみながら文章を書いていた。何かよい書き方の見本があって、それを参考に文章を書くのであれば、独創性は育たない。かといって、ただ「自由に書きなさい」でも、多くの生徒は書き方が分からない。使う言葉を限定して、しかも短くまとめた方がよいという縛りが、逆に生徒のゲーム感覚を刺激しているようである。

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