順天では、理科は探究学習のカテゴリーに配置されている。放課後Sクラスの実験室では、好奇心、オープンマインド、疑問という科学者の3つの精神で満ち満ちた生徒が実験に集中していた。
能動的な姿勢で臨む
サイエンスクラスマネージャーの高野先生(理科副主任)は、「理科では実験はたしかに探究学習の基礎ですから、実験を通して最終的にはポスターセッションやレポート作成、プレゼンと進んでいくのは当然です。しかし、最も大事なのは、能動的な姿勢です。こういう実験を自分たちでやりたいとか、実験をやってみたが、うまくいかなかった。それはなぜだろう。もう一度やり直したい。そういう能動的な意欲は、持ちなさいと言って持てるものではないのです。どこまでもその生徒たちの想いや試みに付き合っていくことが大事です」と。
またしてもファシリテーターとしての順天教師の面目躍如なのであるが、この実験は放課後に行われている。成功するまで6時を過ぎても生徒は取り組んでいる。もちろん教師もいっしょ。しかも高野先生だけではなく、Sクラスの理科にかかわっている教師全員がである。
教科書に用意された予定調和的な実験をやっていれば、授業時間内で終わるが、生徒たちが自らやりたい実験をやるのである。どうなるかわからない。しかしそこから出発するからこそ好奇心の目は光輝くのである。
モチベーションマネジメント
順天のSクラスの生徒のエゴグラムを見せて頂いた。前回紹介した傾向どおりの順天生の特徴そのままであるが、そのパーセントの割合の数の大きいことに驚愕。つまり心的エネルギーが躍動感で満ち満ちているということを示唆しているのである。
これは、SクラスやEクラスをつくったからそうなったのだろうか?長塚校長は「それももちろんあるが、長い間積み上げてきたグループコミュニケーションのプログラムがベースにあるからね。21会の他の学校が取り組んでいる哲学授業やIBディプロマのTOKのようなプログラムです。」
また、片倉副校長は「それがあるから、シラバスも双方向で組み立てているのですよ。教師側の目標とその目標を達成するための生徒側の活動の項目群。今はやりのCan Doリストですね。授業という活動だけではなく、そのベースのシラバスの段階からプログラムしていくのです。」
さらに、中原国際部長は「つまりは、ボトムアップ的な学びの構造になっていて、はじめから与えられたものをトップダウン的に覚えていくということはできるだけしないのですよ。」
まずは、モチベーションで燃え上がっている集団を創り上げようということなのだろうか。グループコミュニケーションやシラバス、そしてボトムアップ的な探究活動・・・。今回のリサーチでは、そこまで詳細に把握することは、筆者の力量ではいっぱいっぱいだった。次回またグループコミュニケーションやラップトップを活用した教育活動の現場を見学させていただきながら、お話を伺う約束をし、実験室を後にした。