佼成女子の留学プログラムをコーディネートしている国際交流部長の宍戸先生と江川教頭先生に、佼成女子の留学のポイントについてお話を伺った。
佼成女子の留学プログラムは参加者も年々増えていますが、支持されているポイントはどこにあるのでしょうか。
海外留学は、今の日本の教育の中で不足している部分を補うような面があると感じています。つまり、家庭や地域が本来持っていた「しつけ」だとか、昔の日本のハングリー精神などといった面を、彼らは海外で教わってきているのではないかと思うのです。その最たるものがホームステイですね。彼らは決してホームステイでお客様扱いをされるわけではありません。テーブルマナーについて厳しく言われて涙を流す生徒もいますし、イギリスに来ているのだから日常会話程度の英語は事前に勉強してくるのが当たり前でしょうと言われたりすることもあります。
本校の留学プログラムが支持されているのは、そういった留学の厳しい面も生徒や保護者に伝えた上で、その体験が成長につながること、またそれを乗り越えるための事前準備をしっかりとしていくことを理解してもらっているからだと思います。
本校では、ホームステイを重視しているので、修学旅行でも英国の方はほとんどすべてホストファミリーとともに過ごすという形をとっています。ただし、修学旅行で行く場合はハードルをあまり高くしないように、割とよいホストファミリーが集まっている地域に送るようにしています。その後に3週間残る留学組には、イギリス人のまた別の気質が感じられるようなエリアで、もう少し自立心が鍛えられる環境に滞在するプログラム内容になっています。中学生の方でもファームステイを2日間入れており、日本の都会育ちでは得られない体験をしてもらうようにしています。
日本では味わうことのできない体験をするわけですから、楽しいことばかりとは限りません。先ほどお話したように、厳しい面もあるわけです。ですから事前の説明会では、過去の事例で、ホストから出たクレームや生徒から出たクレームを出して、どういうことがトラブルになるのかを理解してもらいます。そうすることで、行く前の準備段階で何をしなければならないかということについて目的意識が明確になるのです。お客さん意識、つまり受け身でいては駄目だという感覚になり、主体的に動くようになるわけです。
留学から戻ってくると生徒はどんな風に成長してくるのでしょうか。
まずは忍耐力がついてきます。そういう意味では受験などに対する取り組みでも非常によい影響があると考えています。また何より嬉しいのは、親や周囲の人に対する感謝の気持ちを持つようになってくることです。返事や挨拶についても「人に何かしてもらったら必ずThank you と言いなさい」というしつけを受けて帰ってくるので、見違えるほどしっかりしてきます。いかに日本で過ごしている日常生活が恵まれたものだったかということを痛感するようですね。
日本に対して友好的なニュージーランドであっても、アジア人であることで不当な扱いを受けたりすることもあるわけです。そのような体験によって、外から自分たちがどのように見られているかということも理解してくることになる。いつもいつも守られているという環境ではないわけです。
そういう意味では、日本人であることの誇りも育つのでしょうね。ところで、現地でのケアやサポート体制はどのようになっているのでしょうか。
それからもう一つ大事なことは、留学に行く前に十分な事前準備を行うことです。もちろん英語力を高めることも行うのですが、それ以上に本校が重視しているのは、気持ちの面を鍛えることです。
具体的には自分の気持ちを開いていく「自己開示」をしながら、他者と向き合えるようなメンタリティを育んでいきます。SGE(構成的グループエンカウンター)という手法で、毎週1回、そして、年に4回の合宿を含めて、自己開示と対話を繰り返していきます。もちろん毎回教員が見守り、行き過ぎになりそうな場合は、抑えをきかせながら、グループの人間関係を良好なものにしていくわけです。
留学先で生徒たちはペアを組むことになります。ペアを組む相手がどんな人であろうと、留学先で協力し合い、時には厳しいことを言って、高め合う関係を構築できるかどうかは、留学生活を充実させるためにとても重要なことなのです。ですから、留学に行く前に、このようなアクティビティを通して人間関係構築のための準備をします。
留学先でもちょうど半分が過ぎた時期に、各校に分散していた生徒が一同に集まってSGEを実施します。英語スピーチや TOEIC型テストによる英語の実力診断も行います。それによって、英語の伸び具合なども生徒にフィードバックされることになり、残りの半分を奮起することにつながっているわけです。