近藤彰郎会長 新春インタビュー(3)

【2014年の私立学校】

   <今こそ「感性教育」を> 近藤彰郎会長新春インタビュー 

   「制度における大学の今後 私立中高一貫校の今後」

近藤先生:今制度の違いという話をしましたが、これは学校を選ぶ側にも影響を及ぼします。それは、公立学校は、私立学校と違って、それぞれ独自の建学精神で運営されているわけではないという話なのです。

公立学校がそれぞれ独自の理念で動くことが難しいということは、高校入試などで学校を選択するとき、何をモノサシにして選ぶのかということにつながります。

もうおわかりですね。学力の優劣で選択するのです。これって、本当の選択ですか。そうじゃないでしょう。本当の多様な価値の選択になるように教育も変わっていかなくてはならないことはグローバルな時代では明かでしょう。

だから、公立学校は、進学や学力で選んでいかざるを得ないから、学力エリートを必然的に生み出すことになってきた。しかし、これでは日本はダメになるという認識がここに来てはっきりしてきた。

ただ、ここで重要なのは、だからといって政府や文科省が、1点刻みの大学入試をやめよう、もっと一人ひとりの才能や思考力を見出せるような評価に転換しようと、あたかもそういう制度を作ろうというのは、本当は変な話だということに私たちは気づかなければならないのです。

というのは、本来それは大学が自ら言わねばならないことだからです。大学は公立中高と違って、その自己判断の幅は相当広いのです。それをやらないできたから、いわゆる学力エリートを生み出してきたともいえます。

しかし、いずれにしても変わらざるを得ないのは時代の精神に照らし合わせれば、当然でしょう。

大学ばかりか、私たちも制度をきっちり理解し、時代の要請に適合する教育環境と制度の整合性をつくる活動をしていかなくてはならない。

今年制度上でも、私立中高一貫校は、教育環境を実践してくうえで、デメリットになりそうな壁をすべてクリアできました。

それは何かというと、私立学校も「併設型」の中高一貫校の登録に踏み込めるようになったということです。法的に認められるということなのです。

この話は、世間では、私立中高一貫校は、今の公立中高一貫校が法律で明文化される前にすでに存在していたではないかと思われると思います。

まさに、その通りなのです。しかし、公立中高一貫校を国がつくるとき、私立中高一貫校の表面的なところを法律として制定してしまった。もっとよく私立中高一貫校の教育の内容をリサーチしなければならなかったのですが、学力向上の部分だけみてしまったと思います。

ですから、教育の総合力、特に感性教育の部分を、果たして「併設型」中高一貫校として登録したときに、続けることができるのかどうかはっきりしなかったのです。

豊かな教育をするときに、6年間のカリキュラムやクラス運営は柔軟にしなければなりません。ですから、そのように柔軟に積み上げてきたわけです。その現実に合わせて、もし制度ができていなかったとしたら、「登録」したとたん、今まで積み上げてきた教育ができないと指摘されるおそれがあった。

だから、そこを文科省に、日本私立中学高等学校連合会会長の吉田晋会長と協力して、詰めてきたわけです。教育の実態を網羅して条文にするのは、法律は当然難しい。解釈上の問題はどうしても起きてしまう。

だから、きっちり議論し、それを明記しておく必要がある。昨年末、この「併設型」中高一貫校に登録することによって、従来の私立学校の「中高一貫校」としての機能はすべてできることになった。

これによって、あの未履修の問題に象徴されるようなことは、届け出はしなければならいですが、なくなったわけです。この問題解決は私のライフワークの1つでしたから、あとは、東京の私立中高一貫校138校が「併設型」中高一貫校の登録していくことです。そうすれば、中高一貫校500校の目標を国は一気に達成したことにもなるのです。

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