富士見丘 教育の根源「ダイバーシティカフェ」(3)外に出よう!

富士見丘の生徒は自主探究ができるように育つ。その学びの環境の凝縮したものが、ダイバーシティカフェである。自主学習、クラスメイトとの対話、先輩との対話、大学や企業の方との対話、留学生との対話・・・と多様な人々との対話をベースにした環境がある。そして、たとえば、内気だった生徒が、自分の殻を破り、自分から話しだしてみるというような挑戦をしていく。

その小さな変化が、興味と関心を広げ、さらに探求したいという意欲を内側から生み出す。すると、「外に出て、視野を広げよう、興味関心を掘り下げていこう」という活動につながっていく。今回も、慶應義塾大学 理工学部 伊香賀研究室との共同研究のために、有志(富士見丘は全員参加させるという強制的な活動はない。あくまで自主的)の生徒が、慶応義塾大学日吉校舎を訪れた。

朝8時40分、日吉駅集合。伊香賀教授自らお出迎えという贅沢な一日が始まった。

研究テーマは「運動と学習の関係の検証実験」。すでに、伊香賀研究室のメンバーは、2回ほど富士見丘に訪れていて、生徒は、今回の研究のテーマやデータをとるための活動量計を装着する準備など学んでいる。そして、100名以上の生徒の活動量のデータも蓄積された。

今回は、その活動量データと学習をどのように関係づけるか調べるための実験を行った。富士見丘では、「自主研究5×2」という1人ひとりのプロジェクト学習を行っているが、今回の実験は、その探究活動をより学問的にあるいは科学的に行っていくためのインターンシップ的な役割も果たした。

上記の写真のように、制限時間いっぱい使って、ひたすら計算、ひたすらマインドマップ、ひたすら比較という3つのワークを行う。これがどんな意味があるのかは、すべてのデータが測定されてからわかる。はじめに解釈をいれずに、ただひたすら。

この作業を45分で行う。そしてそれを3回繰り返す(ワークの問題は異なっている)のだが、ただ繰り返すのではなく、グループを大きく分けて、写真のように、休憩時間、一方のグループは教室の外に出て走り回り、つまり活動し、もう一方のグループは、安静に教室に留まっているというぐあいに条件を順番に変えていく。もちろん、今回も参加者全員活動量計を装着している。

このプログラムは、あくまで実験であるから、学習活動に影響を与える、空調や気温、湿度、ほこりなど目に見えない条件も一定にしなければならない。そのため、大学院生は、定期的に環境のデータも測定していた。

学習と活動、環境との関係を測定する姿に、生徒は、工学やヘルス、教育など文理融合がこれからの大学の活動であるということも実感したことだろう。キャリアガイダンスの機会にもなっていて、他ではなかなか体験できない複合的なプログラムである。

2回目が終わったときに、ランチタイムになるが、その前に、伊香賀俊治教授(慶應義塾大学教授 大学院理工学研究科 開放環境科学専攻 空間・環境デザイン工学専修)自らが、キャンパスツアーを行った。なんて贅沢な話なのだろうか。実は、この教授自らの行動は、慶応義塾創立者福沢諭吉以来の伝統で、先生と生徒の差をつけなという慶応の文化遺伝子。富士見丘の建学の精神「忠恕」にも通じている。それを生徒は実体験したのであるから、これまた貴重な体験というよりほかあるまい。

こうして、富士見丘の生徒は、学問の眼差しは、権威ではなく、科学リテラシーや科学的なものの見方が大切であり、それによって、好奇心や開放的な精神が豊かになり、新たな疑問が立ち上がるという体験をしたことになる。また、その疑問を解決するために探究する方法として、仮説の立て方、データの集め方、条件の設定の仕方などを本格的に学んだことになる。

この探究は、まだまだ続く。今回のデータが収集され、どんな結果が出るのか、生徒自身もどんな仮説を立てるのか、ますます楽しみにである。

さて、活動と学習。言うまでもなく、お腹がすく。大学の食堂で、ランチを思いきり食す富士見丘の生徒であった。もちろん、このときも活動量計は作動しているのは言うまでもない。

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