今年6月、校名変更及び新しいカリキュラムを発表した三田国際学園中学校・高等学校(以降「三田国際」)。学校説明会の参加者が激増し、21世紀型教育の時代の扉を開いた。その人気の教育の中核は、「相互通行型授業」。
今やっと東京大学でも、「聞くだけの授業は、終わりにしよう」というスローガンのもと、大学教員、中高教員を対象としたオンラインによるノウハウ養成講座が始まるというのに、三田国際は来春からの新コース開設を目標に、昨年から準備が着々と進んでいる。原田啓志先生(進路・学習指導部)の挑戦を追った。by 本間勇人:私立学校研究家
「相互通行型授業」は、学びの空間が大切
「相互通行型授業」の基本は、対話、ディスカッションョンである。対話やディスカッションは楽しいが、それはチャットや井戸端会議である場合がある。三田国際の授業ではもちろん、チャットや井戸端会議はやらない。
しかし、実は対話とチャット、ディスカッションと井戸端会議の境界線を引くのは、意外と難しい。チャットと井戸端会議はやってはダメだよと規制するや、「相互通行型授業」は成り立たたなくなる。
というのは、この授業の本位は、クリエイティビティだからだ。自由な発想だからである。規制ほどこの創造的行為にふさわしくないものはない。
ここを乗り越えるには、ふだんから対話やディスカッションの自由な雰囲気をつくるのが大切である。
だから生徒がはいってくる入り口の空間から下駄箱を一掃し、オープンスペースをつくり、そこにおしゃれな円卓の机を複数並べている。
もちろん、これは単純にファッショナブルな雰囲気をつくるためではない。「相互通行型授業」を形成する学習理論や認知科学にある「アフォーダンス」というモチベーションをアップする手法の1つである。
つまり、生徒の潜在意識を刺激する空間デザインをするというのが「アフォーダンス」。今ではコンテンポラリーアートや建築デザインの手法にも取り入れられている。
だから、いうなれば、三田国際の教育空間は潜在意識に働きかけるアート空間という頭のフェイントを応用しているといえる。教育空間によって、「相互通行型授業」や「考える行為」の準備が行われている。三田国際の教師は、緻密な学びのデザイナーであもる。