八雲学園の新年度のスタートは、大切な意味のある「とき」である。4月には入学式、新入生歓迎会、オリエンテーション、5月にはいり中3の合宿研修、中1は6月に催されるレシテーションコンテストの準備にはやくもとりかかる。各学年の芸術鑑賞なども目白押し。
また、この時期は、高1生の中で選抜された生徒の3ヶ月留学の事前学習も始まっている。この高1生は、新年度に入る前の2月に、つまり、中3の段階で全員サンタバーバラ研修に、15日間行っている。3月には、高校生は、大学に合格したばかりのOGによる進路チュータリング・ワークショップにも参加している。
2月から5月にかけて、全学年が、八雲学園の教育の4本柱「英語教育」「芸術鑑賞」「チューター方式」「進路指導」の環の中にすでにいる。すなわち、今年1年間の教育の準備が十分になされている。そして5月の末から6月の初旬の時期に、エール大学の女性コーラスグループ「Whim's Rythm」が訪れる。音楽を通して国際交流を行うのだが、同時に八雲生にとっては、4本の教育を基盤に、1年間の新たな目標とモチベーションを抱く大切な出発点でもある。(本間勇人/私立学校研究家)
(エール大学女性コーラスチームと八雲学園の声楽部が合唱するシーン)
エール大学の女性コーラスグループ「Whim's Rythm」が、八雲学園を訪れるようになって、今年で3度目。このグループが訪れるたびに、八雲生の教育環境や進路活動は進化してきた。同校の教師は、ハイクオリティである一定水準の教育を構築してきたが、それは生徒の意欲に応える形で積み上げられてきた。
(ミュージカルのクラブ「glee部」は、今回も、コンサートで歌い踊った)
1年目に、エール大学の女性コーラスグループが訪れたときに、すぐに生徒はモチベーションを燃やした。自分たちも英語でもっと歌いたい踊りたい。そして有志が集まり「glee部」を結成。2年目に彼女たちが訪れたとき、ミュージカルを披露。このコンサートは、もちろん八雲生全員が参加するから、人気の部活ドリル部同様、脚光を浴びた。その年、サークルから部活に一挙に昇格。人気の部活となり、部員数は写真からもわかるように、ものすごい数になっている。
さて、このglee部やドリル部の価値がこんなにも重要なのだと学校全体で共感できるのも、このコンサートである。エール大学の学生は、自分たちがコーラスをするだけではなく、八雲生といっしょに歌tったりもするが、八雲生のパフォーマンスを見る聴衆者として観客席にも座る。もともと米国文化のドリルやミュージカルであるから、エール大学の学生が感動すれば本物であろう。
八雲生がパフォーマンスするたびに、スタンディングオベーションとなる。拍手喝采あり、涙あり、賞賛の口笛ありと、このようなイベントを盛り上げるマナーを表現する。それがまた、八雲生の意欲をかきたてる。
1年目のモチベーションは、ミュージカルのクラブを創る意欲ばかりではなく、英語そのものをもっと使いたいという想いを生み出した。昨年の3ヶ月留学プログラムが誕生したのも、エール大学の学生の影響は大きい。
(八雲学園公式facebookから)
エール大学のコーラスグループとの交流は、コンサートの前日同校でも行われる。書道体験、空手体験、和食作り体験、軽音や吹奏楽部との交流など、八雲学園と日本の両方の文化を満喫する。菅原先生によると、昨年3ヶ月留学を体験した16人の八雲生が、エール大学の学生と自然と英語で対話し、盛り上がったということだ。3年目に、英語力の成果がドッとでた。
それは、コンサート当日も発揮された。3ヶ月留学体験グループが、コンサートの司会をしたのだが、その英語のスピーチ力に驚いた。
しかし、もっと驚いたのは、生徒会会長が最後にお礼の言葉を英語でスピーチしたときのことだ。あまりにも見事な英語力と的確なジェスチャーに、政治家の演説を聞いているようだった。菅原先生によると、「彼女は、軽音でも活躍しているし、グリー部立ち上げ一期生でもあります」と。
なるほど、エール大学の影響を八雲の日々の学園生活にダイレクトに浸透させているのである。
エール大学と八雲学園のジョイントのコーディネートをされ、glee部顧問でもある英語科主任の榑松先生は、生徒会会長のスピーチを聞いて、これからの生徒会の公用語は英語でも可能であるぐらいの勢いのエールを贈った。
それにしても、エール大学の学生のコーラスは、音楽といい、表情といい、パフォーマンスといい、まさに香り高い教養にあふれ、八雲学園の教育の総合力のベースになる感性教育のモデルでもある。
そして、そのモデルの意味は、ロールモデルであると同時にメンタルモデルでもある。
このエール大学の女性コーラスグループの善きメンタルモデルは、八雲生と共鳴共感し、ミュージカルのクラブ、3ヶ月留学プログラムを生み、すでにその成果もあげている。さて、3年目の音楽交流コンサートは、今度はどんな影響を与えるのだろう。おそらく、進路にダイレクトに影響を与えるに違いない。八雲学園の英語教育のさらなる進化が楽しみでならない。