静岡聖光学院は、一気呵成にグローバル教育の内容も質もアップデートすることになった。その突破口は、先月、あのイートン・カレッジとの新たな交流の連携が確定したことによる。イートンと言えば、伝統的な学校と思われがちだが、伝統と革新を統合させてきたからこそ、600年もの歴史を創り上げてこれたのだと同校サイトには記述されている。
その意味では、静岡聖光学院もキリスト教教育や探究という学問的な伝統と21世紀型教育という革新の統合を企図しているという点で同じである。両校が果たしてどのような連携を行っていくのか、今後その発展が大いに期待されるわけであるが、まずは、この3月にその出発点にしっかりと立ったわけである。by 本間勇人 私立学校研究家
(イートンカレッジは、イノベーティブな教育も促進している。写真は同校サイトから。)
今年3月、静岡聖光学院の副校長星野明宏先生と国際交流担当の佐々木陽平先生が、イギリスに飛び、マレーシアなど経由して、エスタブリッシュな私立学校視察を行いつつ、「グローバル教育3.0」のプロジェクトも同時に構築してきた。まずはイートン・カレッジとの2つのプログラムである。
とにかく、両校は、出遭った瞬間から意気投合したということだ。キリスト教教育をベースにした伝統的教育とイノベーティブな革新的な教育を実践しているし、ラグビーを始めとする卓越したスポーツやアクティビティのプログラムを実践しているからである。
もちろん、最も重要なことは、そのような伝統と革新の統合されたオールラウンドな教育によって、生徒のタレント(ここでは聖書に出てくるタラントの意味も含んでいる)を豊かにし、論理的思考を土台としたクリティカルシンキングやクリエイティブシンキングのスキルを高めること、強い身体と精神を育てるという生徒の成長を目標としているという点で強烈に一致したということである。
まずは、7月に実施するイートン・カレッジ・サマースクールのプログラムが確定したということだ。歴史が刻み込まれた学校施設を使って同校の教員から実際に指導を受ける。 英国そのものを築き上げてきた最高水準の教育と生きた国際感覚を体感するというのである。
そして、2つめは、2019年にイートン・カレッジのラグビー部初来日の受け入れ先が静岡聖光学院だということなのだ。受け入れるとは具体的には、部員全員のホームステイ先を静岡聖学院の在校生の家族が歓迎するというものである。そこを拠点に、静岡聖光学院をはじめ、いくつかの日本の高校のラグビー部とラグビー交流を行っていく。
このような交流ができるのは、静岡聖光学院のラグビー部が、花園の試合に出場してきた実績やその実力があるからであり、同時にイギリス伝統の競技としてジェントルマンの精神を内に秘めている生徒の存在があるからであろう。
(静岡聖光学院のラグビー場は、富士山を仰ぎながらのロケーション。イートンの生徒の驚く姿が目に浮かぶ。)
いずれにしても、2019年といえば、ラグビーのワールドカップも日本で行われるので、このラグビー交流は世間の耳目を集めることになるだろう。
それゆえ、静岡聖光学院では、ますますPBL型授業でディスカッションのスキルを鍛え、英語力を高めるさらなる創意工夫が展開していくことになる。開かれた学校は、相互に刺激を与えあいながら、教師も生徒もその成長曲線は指数関数的な弧を描くわけである。
そして、このような交流はイートン・カレッジにとどまらず、今回訪問してきた幾つかのパブリックスクールの中の1校であるハロー校とも交流が始まることが確定されたということだ。ハロー校と言えば、イートンと並び、イギリスパブリックスクールの双璧である。
さらにマレーシアのエスタブリッシュ私立学校マレーカレッジとの国際交流も7月から始まる。マレーカレッジは、イートンカレッジをモデルにしているため、伝統と革新の統合が図られているようである。革新的教育においては、ニューロサイエンス部・英語社会部・ユネスコ部・ロボット部・ソーラ ー部等は国内屈指の活躍をしているということだ。そういえば、イートン・カレッジもニューロサイエンスをはじめコンピュータサイエンスなどイノベーティブな学びにも力を入れている。
(マレーカレッジキャンパス)
毎年7月に行われているインターナショナルサミットに参加させてもらうことが決定。テーマはロボット・サイエンス・テクノロジーで、東南アジア各国から招待校が参加する。4名が招待されているから、7月までに、学校を挙げてその準備にかかる。こうして、教師も生徒も、そして学校も成長カーブを描くことになる。
2月に行われている国際 7人制トーナメントにも招待をうけているというから、イギリスから東南アジアにかけて、多様な文化、歴史、価値観との交流の幅が広がり、新しい時代を切り開く発想や思考の技術を創発させていくことになるだろう。
静岡聖光学院のグローバル教育の今後の進化に大いに期待したい。