八雲学園 英語教育も総合力へ(1)

八雲学園と言えば、英語教育。メディアでも英語教育に力を入れている№1の学校として取り上げられている。

17年前、新たに中学を立ち上げたとき、現代型の英語教育に着手した。その積み上げが評価されてきた。

ところが学内では、№1に到達した時点で、次のステップに進む気運が生まれている。現代化は、常に新たなチャレンジ、冒険が生成する。次のステップの構想について聞いた。by 本間勇人:私立学校研究家

左から菅原先生(高校部長)、榑松先生(理事)、近藤先生(理事長・校長)、田畑先生(英語科主任)、横山先生(中学部長・広報部長)

八雲学園の先見性

八雲学園は、平成7年に中高一貫体制を立ち上げたとき、従来型の英語教育を現代型の英語教育にいちはやく転換した。

今でこそ、国際理解のために意志の疎通をする能力の育成を図るアウトプット型の英語教育が唱えられている。大学入試センター試験においても、英語のリスニング試験が導入されるようになっているし、小学校高学年において英語の教科化の話題もでているほどである。

この英語教育の新しい動きは、実は、平成11年の学習指導要領や平成15年の「英語が使える日本人」の行動計画が出されたころから、やっと動き出した。しかし、まだまだ教育現場では、文法訳読式で、日本語に置き換えて意味を指導する方法からなかなか抜けだすことができないでいる。

(文化祭の中3の英語劇:全クラスが演戯する)

ところが時代はインターナショナリゼーションからグローバリゼーションに転換し、現代型英語教育への移行は喫緊の課題。

それゆえ、現行学習指導要領では、英語を通じて、積極的にコミュニケーシヨンを図ろうとする態度の育成を図り、言語や文化に対する理解を深めることを目標にし、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことなどのコミュニケーシヨン能力の基礎を養うことが強調されている。

つまり、日本の英語教育は、八雲学園が17年前から積み上げてきた現代型の英語教育を、国際理解教育の段階、グローバル人材育成の段階の2段階に分けて追いかけてきたことになる。

しかし、このような多様な英語教育の政策にもかかわらず、日本の現代型の英語教育は根付いていない。すでに現代型の英語教育を実践している八雲学園が注目を浴びるのは当然であるが、八雲学園の英語教育はさらに進化するのだと近藤校長は語る。

八雲学園の英語教育の次のステップ

近藤校長:17年前から、八雲学園が現代型の英語教育を積み上げてきたのは、生徒たちにとって必要だからである。時代が、国際化あるいはグローバル化と変化しているのだから、その時代に生まれた生徒が生きていくために必要なものは何かと想いをめぐらせば、英語の知識や文法を中心とした英語教育では十分でないというのは明かである。

文科省もそのことはわかっているから、英語教育を現代型にしたいと政策をつくっているはず。しかし、大事なことは、いま目のまえの生徒に必要な教育を行わなければならない。5年後10年後に変わるでは、今この時代にいる生徒はどうするのかという問題が残ってしまう。

(今年7月エール大学の古賀さんと友人のアートパフォーマンスを通じての交流)

だから、八雲学園は、現代型英語教育を先生方と懸命に取り組んできた。そして、イングリッシュパフォーマンス、ファンフェア、英語劇、姉妹校ケイトスクールの交流、エール大学の学生との交流など授業以外にも英語を使える環境を、積み上げてきた。

大学入試の英語力はもちろん、使える英語の力もついてきた。だから、今こそこれから英語の教育の質をさらに高めていくことが次のステップになる。これだけやっているからよいということは教育にはないからね。生徒に必要なことはどんどん進化する。

では、次のステップとはどういうことか?

それは今話題のIB(国際バカロレア)の教育を導入するというようなことではない。私立学校は独自の建学の精神に基づいて教育の総合力を積み上げてきている。その総合力を豊かにするときに、外から何かよい道具を導入すれば、総合力が豊かになるかどうかは、きちんと見極めなければならない。

今考えている次のステップは、米国の中高及び大学とのネットワークも太くなってきたので、このネットワークのサポートをお願いしようと思っている。

今までは、日本人の英語をつかって、外国の方が聴いてくれるという前提でアウトプットしてきた。しかし、これからは、八雲の生徒は、もっと生きた英語を使うようにならなければ、このグローバルな世界で、自分の思いや意志を伝えることは本当にはできないということなのだ。

これはサンタバーバラに行って、実際に交流する体験を通して、生徒自身が一番感じている。生徒がスピーチの原稿や英語劇で英語を使うとき、それを指導する教師の英語力を、さらにチェックする段階にきたと思っている。

ネイティブスピーカーの教師を英語が話せるからと雇用したり、IBのプログラムをやったりしても、きちんと英語をチェックできるかというと必ずしもそうではない。

日本語の指導の場合をちょっと考えればわかると思うよ。日本人だから、日本語の指導ができるというものではないだろう。

語学というより、ことばとしての英語を指導するには、ネイティブスピーカーである以上に、言語としての英語の専門家と八雲の英語教師が協力し合える環境をつくっていくことだと思っている。

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