PBL

21世紀型教育機構 新次元教育の挑戦(3)グローバル教育3.0

本機構が、21世紀型教育の実践をゴールにすることから、新次元へジャンプする跳躍台にシフトしたのには、時代の精神を読み解きながら、守るべきものは守り、変えるべきところは変えるという、理念と革新の両方の関係の最適化を試行錯誤してきた結果である。

【表1】

1980年代から2010年までは、まだグローバル教育1.0の時代だった。CEFRという基準は、すでに欧州評議会が作成していたが、これが今ほど、日本国内で、認知されるようになるには、もう少し時間がかかった。授業のスタイルも講義形式で、それに対し何の疑いもなかった。海外の研修も多くは語学研修どまりであった。インターネットも1995年ウィンドーズ95のインパクトを超えるものではなった。

思考力も、知識を憶えこみ、それを頼りに、与えられた文章やその他の情報を理解することこそが思考することだと思われてきた。それが如実に反映していたのが、センター試験である。

ところが2011年以降、SNSの浸透力やWiFiの広がり、スマホのグローバルな広がりはすさまじく、あっという間に、Web2.0の時代にシフトした。それまでのビジネスは、B2Bが中心だったのが、B2C、C2Cへの移行も多くみられた。インタラクティブなやり取りが、経済領域にグローバルに広がったのである。個人の時代への兆候でもあった。

また、ジャスミン革命の影響は良くも悪くもグロバリゼーションの次のステージを用意した。グローバリゼーションの光と影が、Webを駆け巡って、広く知れ渡ることにもなった。もはや一望監視装置ではなく、ネットワークは相互監視装置にもなったといわれるようになったのもWeb2.0の時代の特徴である。

こうなってくると、海外研修も、一方通行型ではなく、自分の思考力は応用・論理にまで高次思考が要求されるようになったし、意志決定も自分で判断しなければならなくなった。それが留学が広まった大きな契機だったのだろう。

英語力も4技能を駆使して、海外でプレゼンテーションできる力が必要とされた。サンデル教授の白熱教室やTEDという番組が、それに拍車をけることになったのは記憶に新しい。

このグローバル教育2.0は、2020年の大学入試改革にも大きな影響を与え、高次思考力、4技能英語など話題に事欠かなくなり、センター試験に代わり、大学入学共通テストに移行することになった。選択式問題のみならず、記述式問題も加わるのだから、たしかに高度な思考力が要求される気配が漂ってきた。

このグローバル教育2.0を受け入れるかどうか、教育現場は混乱も続いているが、21世紀型教育機構は、受け入れる前に、先に進んでしまった。そして、試行錯誤しながら取り組んでいるうちに、グローバル教育3.0という今までとは異次元の教育に遭遇し、そこに行き着いた自分たちのパワーに驚きつつも、さらに邁進することにした。

その象徴的な動きが、グローバルイマージョンという現象である。英語のイマージョンのレベルを超えて、海外と日本の生活の境界線がボーダレスになっているのである。グローバル教育2.0までは、一握りの生徒が留学の恩恵に浴することができたが、グローバル教育3.0では、海外に留学しようが、国内にとどまろうが、英語の授業以外の授業も英語で行われたり、ネイティブスピーカーの教師が10人前後も学園生活を共にしたりしている。

したがって、すべての生徒が言語のみならず文化や生活なども日常生活そのものがグローバルな状態になっている。一部のエリートのみが、グローバル教育を受けるのではなく、21世紀型教育機構の加盟校のすべての生徒が、いつでもどこでも丸ごとグローバルな生活に浸れるようになる。

フィリピンやメキシコの大統領が、必ずしもエリート教育を受けていなくても、個人の力量で選ばれる時代が、すでにやってきているが、これはグローバル教育3.0にシフトすることが必然的な時代の流れであること示す出来事でもあろう。

シンギュラリティ―やインダストリー4.0などを待つまでもなく、Web3.0はすでに到来している。AIはいたるところで活用され、将棋や囲碁、大学入試問題などの場で人間と対戦し、AIの勝利に、多くの人が驚愕してきたが、すでに株価の予想にまで活用されるようになった。自動車のシステムにも組み込まれ始めている。また、IoTは家電に組み込まれ、すでに日常生活が遠隔操作できるようになっている。 

授業も、オンラインシステムをアプリを活用して、海外と英語でディスカッションしながら進めらるようになった。リアルな空間だけではなく、ヴァーチャールな空間でも、グローバルイマージョンは展開している。

こうなってくると、CEFR基準でC1レベルの英語力が必要になるのは当然だし、ディスカッションや対話が授業をはじめとする知的な場で、不可欠になる。海外との交流は、当然世界の共通する問題であり、SGDsのグローバルゴールズを到達するには、自分たちは何ができるのかという対話になる。

具体的な解決策を論じるときに、批判的・創造的思考はもちろん必要だが、その実行プランには、STEAM領域のスキルが必要になる。いわゆるオーセンティックな教育が展開するようになる。

このようなグローバル教育3.0は、いますでに始まっており、今後ますます広がっていく。大学もその選択肢として海外にも広がる。知的好奇心は、多様な中でこそ豊かになり、アイデアもまたそうであるから、これは自然な流れだろう。

そうはいっても、日本の教育において、この流れは、まだまだ緩慢で、よどみかけてもいる。21世紀型教育機構の加盟校は、この流れを加速する突破力を発揮しようとしている。2018年を、「グローバル教育3.0」のターニングポイントとして宣言したのには、このような背景があったのである。

 

 

21世紀型教育機構 新次元教育の挑戦(2)生徒1人ひとりの価値

21世紀型教育機構にとって、生徒1人ひとりの価値を生み出す学校になることが新次元教育のゴールであるが、そのようなことはいかにした可能か?

最近では、アダプティブラーニングという学びやアダプティブリーダーという新しいリーダーシップについて語られることが多くなっており、実際にそのようなことが実践されている。

【図3】

その方法論やリーダーシップ観が、正しいかどうかはあまり問題ではなく、世界が個人に焦点をあてる時代がやってきたことを示唆する出来事であることは確かであろう。もちろん、今までも個人主義という言葉やそのような主義によって生きる人間は実在したし、今もいる。

ここでいう、個人の時代というのは、組織や社会のルールに反して自分勝手な言動をとる個人のことを言っているわけではもちろんない。個人主義というのは、あらゆるルールや価値観は相対的であるという信念に基づいている。

しかし、21世紀型教育機構の生徒1人ひとりの価値を生みだすというとき、それは2つの価値の関係が創造的存在者を生み出すことをいう。創造的であるがゆえに、オリジナルのアイデアを有する個人が成長していく。

その2つの価値というのは、一つは「普遍的価値」であり、もう一つは「有用な価値」である。

本機構は、「普遍的価値」は、「あなたがして欲しいことを相手にもしなさい」という聖書の言葉「ゴールデンルール(黄金律)」という価値を大切にしている。そのことは加盟校の規定の前文にも記載されている。

ただし、ここでいうゴールデンルールは、ニューヨーク国連本部のギャラリーに設置されているノーマン・ロックウェルのモザイク画「ゴールデンルール」に依拠している。このモザイク画にゴールデンルールが刻まれているのであるが、国連は、このルールは、キリスト教のみにとどまるのではなく、すべての宗教や民族、異なる価値観、異なる文化を越境して共通して通じるルールであることを認めている。

加盟校の建学の精神は、文言は違うが、この国連の意図を汲み取ることができるため、加盟校が共有する「普遍的価値」とすることにしたのである。

「有用な価値」とは、実生活の中で生徒1人ひとりが個人として家族や仲間、社会、世界のために何ができるのか、どう役に立つのかを重視した。人間どうしの関係の中で、役に立つ言動ができることは、そこに「価値」が生まれる。

「普遍的価値」は精神の価値であり、「有用な価値」は実生活、つまり広くは政治経済社会における自分の実際的な価値である。

生徒は成長して、中高を卒業した時に、精神としての価値を土台に、命を相互に守っていくための実際的な価値を自ら高めていくことができるキーコンピテンシーを身につけていく必要がある。

それが、「生徒1人ひとりの価値創造学校」としてのゴールであるが、そのためには、真空の中で飛ぶことはできない。実際には空気が必要である。このゴールを達成するための空気に相当する状況が、今やグローバル3.0という新しい時代のウネリである。だからこそこの状況をウケて、21世紀型教育機構は、グローバル教育3.0の教育環境を生み出すことにしたのである(【図3】参照)。

21世紀型教育機構 新次元教育の挑戦(1)次のゴールへ

2018年21世紀型教育機構の加盟校は、それぞれ創意工夫しながら新次元教育の挑戦の局面を迎えた。2011年から21世紀型教育をリサーチし、教育イノベーションを実現し、アドミッション・ポリシーを確立し、カリキュラム・ポリシーを実践してきた。そして、2020年には、そのディプロマポリシーがある一定の成果を出すタイムスケジュールを立てているのであるが、はやくも2018年の春の段階で、3ポリシーとしての成果がでた。

 

【図1】

もちろん、新しい局面を迎えたというコトは、1つのステージをクリアしたというコトを意味する。【図2】にあるように、21世紀型教育機構は、昨年からアクレディテーションを実施し、各加盟校が、21世紀型教育を一定水準以上の質を保ちながら、実践していることを検証した。

これによって、これまでの7年間の準備と試行錯誤を経て、C1英語、PBL、ICT、リベラルアーツの現代化(哲学×STEAM)、論理的思考力の育成、クリティカルシンキングの育成、クリエイティブシンキングの育成など多角的に21世紀型教育を行ってきていると確信した。

【図2】

アクレディテーションのスコアは、5段階で、3段階以上に位置しないと21世紀型教育を実践していると認定されないが、まずはすべての加盟校は3段階以上となった。しかし、それに満足することなく、今後も、さらなる上位の段階へとアップデートしていくことも互いに誓い合った。

しかし、ある意味21世紀型教育というステージには到達したことは確かで、これ自体大きな3ポリシーとしての成果である。

このアクレディテーションは、外部団体を形成し、そこに調査委託するわけで、自己評価とはまた違う評価である。より客観的に評価することができる。アクレディテーションの基準は、ルーブリックによって構成されているが、もちろん、この基準の正当性、信頼性、妥当性は、今後も検証していくことになる。

こうして、2018年は、21世紀型教育の質の向上に向けて、機構加盟校は独自の研修などで切磋琢磨している。今年5月27日(日)は、機構内での「プレ・グローバル教育カウンシル」を行い、加盟校の教師と生徒が、会場である富士見丘に集まった。

そこで、互いに到達した21世紀型教育における「学び」や「思考力」についてディスカッションワークショップを行った。その模様については、本サイトで既に公開しているが、極めて重要なことは、21世紀型教育の質向上だけではなく、つまり、今までのように、21世紀型教育をゴールとするのではなく、それは、今やスタート地点となり、今度は、そこから、新たな次元の教育に挑戦している加盟校の姿がくっきりと映し出されたことである。

すなわち、ゴールは到達されるや、新たなゴールにジャンプする足場になったのである。

2018年6月には、経済産業省によって、第一次提言としてのレポート「50センチ革命×越境×試行錯誤」が発表されたが、この提言の内容は、21世紀型教育機構が到達した21世紀型教育の内容をほぼ支持するものであった。

この提言が意味するのは、日本のすべての教育が――学校領域も超えて提言されているのだが――、20世紀型教育から21世紀型教育に100%シフトする時期が来たことを宣言しているというコトだ。

しばらく、日本の教育改革は、【図2】のように、一斉に21世紀型教育(名称はいろいろあるだろうが)に促進されることになる。

一方、21世紀型教育機構は、【図1】のように、そこが足場となり、そこから新しい次元へスタートすることになる。その新ゴールを、いったん「生徒1人ひとりの価値創造学校」になると設定したい。今まで、本機構は、一握りの成績優秀者を育てるファーストクラス育成から、生徒1人ひとりの潜在的才能が開花する教育環境を開発実施し、すべての生徒がクリエイティブクラスとして羽ばたいていく理念にシフトしようとしてきたが、いよいよこの実現に本格的に着手することになる。

かくして、2018年、21世紀型教育機構は、この新ゴールを、2024年に到達できるように動き始めたのである。

 

 

 

 

プレ「グローバル教育カウンシル(GEC)」の挑戦(2)

「思考力の再定義~世界を変える思考力とは?」のワークショップは、本橋真紀子先生(聖学院)、内田真哉先生(聖学院)、田代正樹先生(静岡聖光学院)のファシリテーションによって行われました。リフレクションカードやLEGOといったさまざまなツールを用いながら、参加者の内に湧き上がる思考を表現・共有・再構成をしていきます。
 
 
 
ファシリテーターの先生方が課題とツールをなぜ用い、どういう思考力を見ようとしているのかを述べつつ、参加した先生方がその影響を受けて進めた内的対話の様子をグループで共有し、思考力の再定義を行う。これは、よくある技能習得の教員向けセミナーとは全く異なります。
 
思考力とは何か、生徒たちにどのような思考を促すべきか、といった内省を深め、知を共有する「サイクル」を生むことが最も重要であると理解しました。
 
この分科会で特徴的だったのは、リフレクションカードやLEGOといった補助的な道具を用いて対話を促すことです。創発的な思考を促すために、さまざまなやり方を用い、新たな気づきや手法を生み出す。そのプロセスを経て、思考力とは何かという命題と向き合ってきた3名のファシリテーターの姿とともに、その価値に共感し創発する先生方の様子が印象に残りました。
(「学びの再定義」ユースプロジェクトの発表の様子)
 
第Ⅲ部は、各分科会の様子を各グループの代表者がプレゼンテーションをしました。
 
まずは「学びの再定義」ユースプロジェクトの発表です。参加者は英語と日本語の両方で発表しました。生徒たちは、学び手として率直に感じた事柄を起点に、世界を変える教育について論じていました。エッセンスは以下の通り。
 
成果より過程を大事にすること、そのために先生方の思考力を高める必要があること、STEAMやIB教育を参考に多角的な学びを得ること、ツールとしての英語教育、日本語で学び考えることの重要性、学びのコンフォートゾーンが作られないことによる教育の不全、人間の内面的な部分の深堀ができていない、「なぜ」と問い続けること、色々なことに興味を持つこと、海外の人々との交流、生徒たちの自信を鍛える教育、保護者の過干渉、話し合い伝える能力と柔軟性の重要性…
 
生徒たちの「学び」の定義や提案は、多くの教育関係者の心に突き刺さるものばかりでした。学びの主役である生徒たちの思考の深さと、その問題の本質を掘り下げていく姿勢、教育者の前でも問題点を指摘する潔さ。21st CEO加盟校の生徒たちのクリティカルかつクリエイティブマインドに驚くばかりでした。
 
 
(「学びの再定義」教師部会のプレゼンテーションの様子)
 
次は「学びの再定義」教師部会のプレゼンテーションです。
 
これからの未来に向けて教師が変わる必要があること、いわゆる詰め込み教育の時代にも学びの本質を追求する教員が多くいたこと、現場の教員は実は知識を詰め込もうと意識しているわけではないこと、どのような種類の学びが世界を変えるのか、幸せな人生とは何か、クリエイティブな学びとは何か、日常生活から学べることは何か、多種多様な質問を持ってきて投げかける場が授業であること…
 
教師部会では、学びの根源を探る問いを探究してきた様子がわかりました。このワークショップでは、進学実績重視・偏差値主義が闊歩するガラパゴスした日本の教育界をクリティカルな視点をもって再考察し、学びを再定義してきた様子がうかがえました。そして、これまでの教育の在り方をすべて否定的に捉えがちな中で、それまで積み上げてきた教育実践者の姿を振り返りながら、よき伝統は引き継ぎつつ、新たな教育を生み出していこうという気概を感じました。
 
「学び」や教育の定義は多種多様で、自ら受けてきた教育を再生産すれば子どもたちは幸せになると信じがちです。しかし、21st CEOの先生方はその点を一度批判的に捉えてみようと試みました。学びの再定義、つまり学びを創発するためには不可欠なプロセスだったといえます。
(「思考力の再定義」教師部会の発表の様子)
 
「思考力の再定義」教師部会では、「創造性とは何か」を問うたり、学びの場のデザインについて考察したりする流れとなったようです。
 
組み合わせの面白さ、日々生まれる創造として組み合わせを無限にする方法はないか、バラバラに散らばっているものを時間と空間という軸で共有する場が必要、互いの知識をシェアする場づくり、肯定感の育成、何かとの出会いによって学びは起こる、知識を得るための集中力や訓練の必要性、自己変容することの重要性、創造性により社会問題の解決と貢献という21世紀型のゴールを目指すこと、その土台にはコミュニケーションが必要なこと、よりよく生きるための学び…
 
ワークショップの様子を見ると、ユースプロジェクトも2つの教師部会も、同じベクトルを向いて議論していたことがわかります。石川先生のPBL100%宣言にもあったように、このカウンシルでは、参加者がプロブレムから始まる学びから、プロジェクトによる学びへの変遷を感じていたのではないでしょうか。
 
「学び」「思考力」について、日本では様々な議論がなされています。その多くはプロブレムベースでのものです。AIに仕事を奪われる、グローバル化によって競争社会が激化する、学校教育には大きな問題がある、という問題を起点に教育を変えようと声高に叫び続けます。
 
しかし、今回カウンシルに参加したメンバーはもっと幸せな世界を創り上げてもよいのではないか、という思いのもとで、思考を巡らせた様子がわかりました。
 
(左上:本間先生、右上および下:全体会の様子)
 
最後に、「明日に向かって」と題し、本間勇人理事よりカウンシルのまとめがありました。
  
今回の分科会で行ったディスカッションワークショップは、量子力学の物理学者デヴィット・ボームの「ダイアローグ」と、ZENの「十字図」を参考に創り上げてきたということです。ここでいう「ダイアローグ(対話)」というのは、私たちが一般的に理解する対話の意義とは異なります。
 
 
対話は2人の間ではなく、何人の間でも可能だし、一人でも自分自身と対話できます。対話を通して、グループ全体で一つの意味の流れが生じ、そこから新たな理解が産まれ、創造的なものが産まれます。
 
それを具現化したのが、今回のディスカッションワークショップとのこと。一人が情報を提供し、互いの考え方・感じ方を承認し、自己を変容させながら柔らかな雰囲気のもとにプロトタイプを創発する。これは、一般的に行われるような、互いの意見に同意させるディスカッションとは異なります。メンバーで意味を共有し、互いに関係を密にしながら、協調的な態度で次の行動を促します。
 
 
21st CEOでは、ダイアローグを核とし、思考力と学びを創発し、それを加盟校でそれぞれ仕組みとして取り入れる活動をしています。こうして、世界を変えていく次世代を輩出し、最高善を生み続けられるようなトルネードを生み出したいと決意を共有し、会は終了しました。
 
日本の中高教育現場は大学入試合格による進学実績や教科書内容の習得を主軸に据えることが多く、本来の学びのあるべき姿である「未来をつくる」「世界を変える」ための教育とはかけ離れた様子をしばしば見かけます。まるで、良心を育むよりも、自己の損得勘定を優先するかのような、強欲資本主義に則った教育が平然と行われています。
 
しかし、21st CEOが描こうとする教育の世界は異なります。自他を認め、異なる価値観を有することを前提に、どう対話しながら、さまざまなプロトタイプを創発し、世に発信するか。加盟校に所属する全員が、社会の構成員としての立ち居振る舞いを明確にし、どう協調しながら行動するのかを意識しようという、学びの根源を追求する姿があります。
 
今回のプレ「グローバル教育カウンシル(GEC)」を通し、「学び」「思考力」とはダイアローグ(対話)から生まれること、外的・内的対話がこれからの世界を生む心を育むことを体感できました。今回は加盟校のみの開催でしたが、今後は公開イベントを目指しているそうです。開催の暁には、多くの保護者やお子様、教育関係者に、対話から生む世界をご体感いただきたいです。
 

プレ「グローバル教育カウンシル(GEC)」の挑戦(1)

2018年5月27日、21世紀型教育機構は富士見丘学園において、プレ「グローバル教育カウンシル(GEC)」と称した加盟校の評議会を開催しました。この会は、教育にかかる根源的な問いを参加者が追求し、新たな教育を創発・発信・実現しようという目的で実施しています。したがって、技術や情報、ノウハウを伝えることを目的とした受動的なセミナーではなく、参加者のディスカッションワークショップ形式で実施しています。(株式会社カンザキメソッド代表であり、21世紀型教育機構リサーチフェローでもある神崎史彦氏に取材記事として寄稿して頂きました。)
 
 
特に注目すべきは、加盟校の先生方だけでなく、生徒も参加していることです。21世紀型教育機構加盟校での学びをもって未来を切り開くのは、生徒にほかなりません。つまり学びの恩恵の所有権は生徒にあり、先生方のものではありません。この会は生徒には学びの主体者として議論に参加してもらい、教育をともに創ろうという21st CEOの意志表示でもあります。
 
(写真左上:平方邦行先生、右上:吉田晋先生、左下:大橋清貫先生、右下:石川一郎先生)
 
会の冒頭で、全体コーディネーターを務める平方邦行副理事長(工学院大学附属)は、生徒とともに教師たちも変容することの重要性を語りました。私立学校はその学びの先進性と独自性を意識し、スピードをもって時代の変化に対応することが必要だと述べ、GECの意義を参加者と共有しました。
 
第Ⅰ部は吉田晋理事長(富士見丘)、大橋清貫副理事長(三田国際学園)、石川一郎理事(香里ヌヴェール学院)によるキーノートスピーチ(全大会)でした。
 
吉田理事長は、正解がない問いを自ら導く力を育むことが21世紀型教育の大きな目的だといいます。日本の国力にかかわるゆえに、暗記力に頼る教育に疑問を抱くとのこと。よって、世界で活躍する日本人を輩出するためには高大接続改革や教育課程の改訂が欠かせませんが、特に英語4技能や多面的評価においては国内の議論が混迷を極めている状況であることを懸念していました。こうした中で、21st CEOの加盟校では、生徒たちの夢や希望が広げられるよう、満足が行く社会を創っていこうと、決意を熱く語りました。21世紀は、生徒の皆さんの時代であるからと。
 
大橋副理事長(三田国際学園学園長)は、高大接続教育の未来を語りかけました。世界や実社会の問題に向き合うためには、分析・仮説・実証・説得とともに、批判的思考から創造性を発揮するという「創造的破壊」のマインドを養うのが21st CEO加盟校であると述べました。
 
また、大学選択についても、各種模試の偏差値ではなく、イノベーティブな学び、コンピテンシー、PBL/PIL、アカデミズム、充実したICT環境、思考力入試の実施といった、21st CEOが実践している教育が行われている大学を選んでほしいとのことでした。
 
石川理事(香里ヌヴェール学院学院長)は、「PBL(Project Baced Learning)100%」を宣言しました。PBLにはProblem Baced Learning とProject Baced Learningがあるが、どちらと捉えるかが鍵だといいます。AIやグローバル化によって大変になるというとらえ方なら前者、それによってワクワクしたり社会をよくしたいと捉えるなら後者。
 
石川先生は、不安を煽るのではなく、新たな力を獲得して何かを生み出そうといいます。そのさいにC1言語、つまり単なる会話を超え、複雑な関係性の中で問題を言語的に解決できるところまで成長してほしいと述べました。
 
第Ⅱ部では、分科会として、ディスカッションワークショップを行いました。テーマは「世界を変える学び」「世界を変える思考力」の2種類。ともに学びにかかる根源的な問いであり、21st CEOがこれからも追い続けるものです。
(上:「学びの再定義」ユースプロジェクト、中:「学びの再定義」教師部会、下:「思考力の再定義」教師部会)
 
「学びの再定義~世界を変える学びとは?」のワークショップは、教師部会とユースプロジェクト(21st CEO加盟校の生徒)の二手にわかれました。
 
教師部会は田中歩先生(工学院大学附属)、児浦良裕先生(聖学院)、大久保圭佑先生(聖パウロ)がファシリテーターとして会をコーディネートしました。世界や教育を取り巻く課題、その壁は何かを言語化し、発散したうえで、どういう学びが硬直化した世界を変えるのか。先生方が付箋とホワイトボードシートを前にして、議論を重ねていました。
 
課題観は現状の学校教育が抱える課題、特にガラパゴスと化した日本の教育に対する疑念や、時代による教育観の変遷や葛藤、未来を支える生徒たちに向けた教育ができているのかどうか、既存の教育が本当に問題なのか、などと、さまざまな議論を展開していました。
 
しかも、会場では活発な意見交換がなされ、笑い声が絶えません。「これが日常の職員室になると、幸せだ」という声も聞こえ、創発的な思考が満ち溢れる場であったことは言うまでもありません。学びの場には、こうしたコンフォートゾーンを創り、クリエイティブテンションを上げることが欠かせません。
 
また、学びの主導権を参加者に委ねるといった勇気も大切です。教師はついその主導権を握り続けてしまうものですが、それでは自らが問い続ける学び手は生まれません。その塩梅を熟知しているファシリテーターと、相互の信頼を確信して創発する先生方の関係性が心地よく感じました。
 
 
一方、ユースプロジェクトでは、石坂雪江先生(工学院大学附属)の支援のもと、工学院大学附属高校の3名がファシリテーター役として会を運営しました。多種多様な国籍の持ち主が一堂に会し、英語と日本語での対話が行われていました。教師部会と異なるのは、生徒目線で21世紀型教育を見つめている点。これからの未来を見据えたうえで、現状の教育に潜む問題や課題を共有し、それをメンバーが弁証法的にまとめ上げていきます。最初は日常の学校生活に対する疑問から思考が始まりますが、その意義を自分たちで見出し、よりよい教育の在り方を模索する姿が印象的でした。
 
また、興味深かったのが知性の変容がわかったということです。ハーバード大学院教授のロバート・キーガン氏は、「知性」を順応主義的で指示待ちの「環境順応型知性」、課題を設定し、自分なりの価値観で自律的に行動する「自己主導型知性」、1つの価値観のみならず複数の視点や矛盾を受け入れるリーダーとしての「自己変容型知性」の3種類に分類しています。
 
会の当初は、環境順応型知性が作動し絵ちましたが、3名の若きファシリテーターと異文化交流を経るうちに、自己主導型知性、自己変容型知性へと知性の段階を駆け上る姿を目の当たりにし、高校生の可能性を感じる2時間でした。
 

プレ「グローバル教育カウンシル」開催しました。

2018年5月27日(日)、富士見丘学園で、プレ「グローバル教育カウンシル」を開催しました。今回は21世紀型教育機構加盟校(アクレディテーション認定校)が集って、ディスカッションワークショップを行いました。80名強の先生方と生徒が参加。

「世界を変える学びとは?」「世界を変える思考力とは?」という根源的な問いを、英語と日本語が飛び交うディスカッションを通して、深めていきました。多様なアイデアと気づきが生まれ、日常のフレームシステムの中で忘却しがちな学びや思考の根源的な内蔵秩序に迫りました。

英語と日本語の両方で語る生徒の皆さんが挑戦する姿勢は凛々しいものでしたが、特に、生徒の皆さんのクリティカルシンキングに基づいたアイデアや提言には、先生方にとっても目が覚めるような刺激となりました。そして、その生徒の皆さんが自由に発言できる雰囲気をつくる先生方の寛容な精神こそ、グローバルスタンダードなものでした。

ノウハウや技術を体得するセミナーとは違い、生徒のかけがえのない存在に迫る根源的な問いを、ディスカッションWSという「対話」で深めていくことができました。日本の教育界で、学校を超えて、教師も生徒も参加して、英語と日本語両方で、根源的な在り方について対話するワークショップは、本邦初の試みと言えましょう。

このようなことができる21世紀型教育機構の加盟校の先生方と生徒のみなさんの存在こそ、世界を変えるアクティブな知であると感動した1日でした。当日の模様をお知らせする記事は、また別途掲載します。しばらく時間をいただきたいと思います。ご期待ください。

 

プログラム(外国の方にお渡ししたものをご紹介します。)

May 27, 2018 (Sunday) Pre-"Global Education Council (GEC)"
Organized by the 21st Century Education Organization
Entire Coordinator, Vice President, 21st Century Education Organization Kuniyuki Hirakata
 
【Part I】 Keynote Speech 
 
■13: 00-13: 20 Susumu Yoshida, Chairman of the 21st Century Education Organization
"Global education that supports the future world"
■13: 25-13: 40 Kiyomichi Ohashi, Vice Chairman of the 21st Century Education Organization
"Future of education between High Schools and Colleges"
■13: 45 - 14: 00 Ichiro Ishikawa Director of the 21st Century Education Organization
" Who is learning to open the future? "
 
【Part II - 1】 Subcommittee: Redefinition of learning : Discussion  "Redesigning learning - What is learning to change the world?"
 
■14: 10 -16: 00 Teacher's Section Discussion 
Facilitator :  Ayumu Tanaka (Kogakuin Teacher), Yoshihiro Koiura (Seigakuin Teacher), 
Keisuke Okubo (St. Paul Teacher)
 
■14: 10 ~ 16: 00 Youth Project Discussion 
Facilitator :Yukie Ishizaka (Kogakuin Teacher) · Students(Kogakuin )
 
【Part II - 2】 Subcommittee: Redefining Thinking Ability: Workshop & Discussion
" What is thinking ability to change the world?"
■14: 10 -16: 00 Teacher's Workshop Workshop & Discussion 
Facilitator:Makiko Motohashi (Seigakuin Teacher) · Shinya Uchida (Seigakuin Teacher) · Masaki Tashiro (Shizuoka Saint Seiko Teacher)
 
【Part III】 General Meeting: Presentation 
■16: 10 -16: 40 Presentation 
■16: 40 -16: 50 Looking back presentation, Students :English and Japanese
■16: 50 -17: 00 Closing "Towards Tomorrow" 
Vice President, 21st Century Education Organization Kuniyuki Hirakata

 

 

 

八雲学園 共学化とラウンドスクエアで進化加速(2)

八雲学園は、ついにグローバル教育3.0に突入した。海外修学旅行、年に数度の交換留学などはグローバル教育1.0の段階で、1989年ベリリンの壁崩壊後広まった。英語力はA2(CEFR基準)で十分だった。21世紀に入って、2014年くらいまでは、さらに現地校の長期留学や多くの生徒の3か月留学などが加わった。グローバル2.0のステージである。英語力はB1くらいで十分だった。

そして2015年から今に至るまで、さらに海外大学進学の道が多くの学校で見られるようになった。グローバル高大接続準備教育が着々と進んだ。IBやBC州のプログラム、およびそのエッセンスは共有するも独自の21世紀型教育が登場した。

そして、ラウンドスクエアのような世界の私立学校200校強とのネットワークをつないでいるグローバルコミュニティとの連携が誕生した。この段階が、まさに八雲学園がララウンドスクエアと連携したようにグローバル3.0のステージなのである。英語力はC1を要求される段階でもある。

ラウンドスクエアについては、本サイトでも何度か取り上げているので、そちらを参照していただきたい。→「八雲学園 グローバル教育3.0に転換」

4月の末から6月初旬にかけて、オーストラリアから留学生が八雲学園で学んでいる。ホームステイは横山家。横山先生は、毎日留学生と家族と一緒に英語を話しながら、ラウンドスクエアのシステムを学んでいる。そして、つくづくラウンドスクエアとの連携の凄まじさに驚愕し、加盟校になったことの重大さに今更ながら気づいたという。

何が凄いのかというと、ラウンドスクエア加盟校は、自動的に姉妹校扱い。来月うちの生徒が日本に行きたいから留学させてくれないかというと余程のことがなければ受け入れるというのが互いのルールである。もちろん、受け入れた場合、同時にその学校に留学したいという生徒が八雲学園側から現れたら受け入れてもらえる。

すでに姉妹校であるケイトスクールもラウンドスクエアの加盟校であるから、同じように交流ができるのである。オーストラリアからの留学生が帰国すると、今度はロサンゼルスのパロロスバーデスの超エスタブリッシュ校の生徒が留学しにやってくる。そのあとは、カナダからやってくるという。

横山先生は「グローバル教育というならば、海外に学びに行くだけではなく、海外からも学びに来る教育環境をつくることが重要であると気づきました。1年間通して、海外から学びに来る超優秀生がいつもいる状態になるわけです。しかも1人2人ではなくなってくる。加盟校の生徒が修学旅行で突然やってくるときもある。昨年はケニアのエスタブリッシュ校から36名もやってきたんです。大事なことは、ウェルカムの精神なのですが、多くの八雲生が英語で対話ができるようにしておかねばなりません。

しかも、訪れるたびに、右往左往できませんから、国際センターとまではいきませんが、すぐに動けるように、生徒たちがラウンドスクエア委員会を開設しています」と熱く語ってくれた。

日本でラウンドスクエアのことを熟知している5人のうち1人に横山先生は入るだろう。

(留学生は、日本語も学びながら八雲生となんら変わらず授業を楽しんでいる。)

今回オーストラリアからの留学生は、今年4月に高校3年生5人が訪れた地域会議の場所バンバリーからの生徒。八雲生は国際会議や地域会議に訪れ、ディスカッションベースのミーティングを繰り返しながら、ホスト校のアドベンチャープログラムやボランティアプログラムにも参加してくる。そのとき親しくなったオーストラリアの生徒が日本に来たいということだったようだ。

地域会議に挑戦してきた高3生5人は、もちろんラウンドスクエア委員会のメンバー。国際会議や地域会議で行われるディスカッションは、Barazaとよばれていて、今回訪れたときも、6名が出会ったとき、さっとそのスタイルになって、八雲の生活は快適かとか日本語と英語の違いなどについて自然と対話が行われていた。

日本でただ一人ラウンドスクエアの名誉会員は榑松先生(英語部長)。ラウンドスクエアと日本の学校をはじめ世界の学校との懸け橋になっているグローバル教育の第一人者。八雲学園のイエール大学との国際芸術交流も榑松先生が結び付けた。

ラウンドスクエアの国際会議や地域会議に、八雲生が行く時に同行するのだが、そのときタブレットやスマホに生徒の様子を録画し、説明会などで紹介する素材もとってくる。今回もダークダイアローグ体験をしていた八雲生の姿を撮影してきていて、焚火だけが燃える暗闇の中で対話をするプログラムだったという。

静かな森の中で、ファシリテーターからの問いが投げられた後に続く長い沈黙を最初に破ったのが八雲生だったというのである。榑松先生は、その生徒のその挑戦する勇気がそこで生まれてからというもの、彼女がどんなに成長しているかを熱く語るのである。もはや榑松先生は、この機会に英語力をどう身に着けるかなど眼中にない。

将来間違いなく世界を動かしているだろう人材と自分の想いや考え、行いを通して交流することがどんなに得難い大切なものであるかについて着目しているのである。生徒も当然その重要性を感じている。榑松先生は、生徒が、自分もそのような価値ある存在になろうと感じて、どんどん成長しているが、このような体験がなければ、なかなかそのような意志は芽生えない。日本の受験英語教育ではなく、このような体験をいかにつなぎデザインしていくかがこれからは重要になるだろうと語る。

それには、コーディネーター、プロデューサ―となれる教師力育成も大事ではないかと。榑松先生の精神とスキルを継承する教師の数を八雲学園内に増やしていきたいと語る。八雲学園の加速する進化は、やはり教師力だったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工学院 ライティングパワーが新しい学びを開く

工学院の21世紀型教育改革は4年目を迎える。プレ改革を入れると5年目。新高2が、そのプレ改革の学年にあたるが、すでに改革を牽引する学びの成果をあげている。

高1に引き続き高2のハイブリッドインタークラスの担任であると同時に、日本の教育における新しい学びのリーダーである石坂雪江先生(英語科)と今年から高校の教務主任に就任した田中歩先生(前英語科主任)がさらなる学びの新しいカタチを語る。 by 本間勇人 私立学校研究家

(左から石坂雪江先生、田中歩先生)

高2のハイブリッドインタークラスの生徒は、英検でいえば、準1級以上の生徒がほとんど。しかし、石坂先生は、民間英語試験のスコアを上げることが目的ではなく、教養をベースとした実用的な英語の授業が中心だという。

「実用的」というと、日常英会話ができることと思われがちだが、石坂先生は、人間や自然、社会にとって重要な問題について、ディスカッションやディベートなど多角的なパフォーマンスができることを意味するという。

そして、ディスカッションやディベートをするには、物事を捉え返し、自分なりに再定義できるクリティカルシンキングが必要なのであると。

石坂先生の授業のコンセプトは、そのためには、教養がなければならないというのである。なるほど、ギリシア神話、紋章学、詩学など日本の高校では扱わない領域の素材を使っている。しかし、そのような本を英語であれ、ただ読んでいるだけでは教養主義的で趣味人的な学びに過ぎないという。

では、何が「教養」なのか?それは様々な体験や読書、議論、対話を通して、自分なりに物語を創作できるようになることであるという。あるいは論理的仮説を立てられることだという。教養とは自己陶冶であるが、自己陶冶とは、オリジナリティとクリエイティビティが必要である。他人が書いたり言ったりしたことに拠って立って、ディスカッションしたり対話をしても互いに相乗効果を生み出せない。

知的に興奮できるコミュニケーションができるには、独創的でウィットに富んだ独自のコンテンツを物語れなければならないというのが、石坂先生の授業のフィロソフィーである。だから、ライティングの学びの環境が重要なのであると。

ハイブリッドインタークラスのライティングの授業は、多くの先生がかかわって行われている。上記の冊子の写真は、高校1年のときの同クラスのライティングの制作物の成果であるが、そのときかかわっていた外国人の先生は、ジョン先生(Jon Otto)、ジョエル先生(Joel Post)、アレックス先生(Alex Dutson)である。日本人の先生は岡部先生ともちろん石坂先生。

中でもジョン先生は、ライティングこそ死でさえ乗り越えることができるほどパワフルなのだという信念の持ち主で、石坂先生をはじめみなその想いを共有し、多様なライティングの機会を設けている。ある時は、フィクションとしての挿話、あるときは詩、あるときはロジカルシステム、あるときはドラマ、あるときはリサーチエッセイ。

上記の写真は、ジョン先生と岡部先生が協働して、グーグルドライブで、互いに自分のものの見方や考え方を共有し、リスペクトし合いながら、刺激を与えあいながら、パワフルなライティングを行っている。ICTも活用した先進的な授業のシーンだ。
 

授業の種類には、英語で哲学の授業もあるし、ドラマエデュケーションといった表現力を豊かにする授業もある。

しかし、その前提として多様なライティングの授業があるのである。先述したようないろいろな切り口のライティングの取り組みをすることで、表現への意欲や創造性が生まれ出てくるようになっている。石坂先生は、このマインドの形成こそ大きな成果だと語る。

田中先生も、この自分で物語を創るところから始めるのが、学びの本来の姿であると語る。「主体的・対話的で深い学び」と言われているが、調べ学習で終わったり、日本の大学入試で出題される課題文型小論文などのように、他人の文章の中に手がかり足がかりを見つけ、それをロジカルにアレンジすればできてしまうようなエッセイが行われている。

そのような入試に立ち向かうことは、疑似主体性でしかないと。やはり、自分なりに物語を創り、矛盾に遭遇し、それを創造的に問題解決していくところから始めることが主体性をつくるキーであるという。

今までは、英語科主任として、石坂先生と共に、そのような根源的なものを生み出す主体的な学習者を形成してきたが、今後は、すべての教科で、実行していきたいと教務主任としての抱負を語った。

特にハイブリッドインタークラスの生徒は、グローバル高大接続準備教育を行っているので、世界大学ランキング入りしている大学が選択されやすい。THEでは1100位くらいまで公表しているが、日本の大学も89校ランクインしている。

日本の大学も含め、世界大学ランキング入りしている海外の大学も射程に入れている。

しかし、このような視野を広めることによって、海外の大学と日本の大学には学びの格差があることにも気づかされると石坂先生と田中先生は語る。ある海外大学のエッセイの問について、いかに日本の大学入試と違うか説明してくれた。

もしも、入試問題のレベルや質に格差があるとしたら、それは学びにも大きな影響を与えるから、同じ17歳、18歳の生徒も、どの学びに取り組むかで、大きな差ができてしまう。日本の大学にだけ目を向けていると、世界では全く役に立たない偏差値ランキングという格差で思い悩むけれど、世界に視野を広めると、思考力のレベルの大きな差がついてしまうことに気づくのだ。

偏差値階層構造で競争している間に、そのシステム自体が、海外の学びのシステムに溝をあけられているということ。このことが示唆する背筋が寒くなる子どもたちの未来。石坂先生と田中先生は、すでにそのことに気づいている。

だから、工学院では、日本の大学を受ける生徒にも、この差を甘んじて受け入れるのではなく、その格差を解消できるパワフルなライティングの授業を行っているのである。今後が実に楽しみである。

 

三田国際 1人ひとりの価値を高める入学式

☆2018年4月7日(土)午前、三田国際学園の中学の入学式が挙行された。開幕10分前には、新入生の中学入試当日から、入学式に向けての足跡をドキュメンタリータッチの映像を流した。
 
☆この映像は、新入生にとって、この新しい人生の第一歩の記念すべき入学式のときのみ流される。激戦の中でいまここにいるそのかけがえのない三田国際生としての価値と誇りを生徒と保護者、教職員全員で共有する絶大なる効果があると思う。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
 
☆そして、午前10時。同校の吹奏楽部の響きが時を告げ、新入生は、会場に入ってきて、赤絨毯の上を歩きながら、自分の席についた。21世紀型教育改革、共学化、校名変更を大胆に行って4年目。生徒募集が成功したことは、あまりにも有名である。
 
 
☆そして、その効用の1つに、多様な部活が活発に行われるようになったということが挙げられる。今では、当たり前のように吹奏楽部が、美しもパワフルに演奏しているが、これも生徒募集を成功に導いた経営戦略があってこそである。
 
 
☆新入生が全員着席するや、入学許可のセレモニーが始まった。1人ひとりの名前が呼ばれ、1人ひとりが起立し、「はい」と返事をして着席する。このセレモニーは、1人ひとりを大切にしていることの証である。もちろん、赤絨毯の空間を歩むという行為にもその気持ちは染みわたっている。
 
 
その凛としたテンションの中、大橋学園長が登場し、このような趣旨の式辞を語った。
 
「かつてないほどダイナミックに時代が動いている。これからの時代に求められる気質は、今までのように言われたことや与えられたれたことをきちんと速くできるだけではなく、自ら考えることがキーになる。
 
一歩先を考えることで浮かび上がってくることがある。深く考えることでわかってくることがある。違う視点で考えることで判断がきくことがある。とにかく考え続けることである。そうしていくうちに、学ぶことに加え研究するという意欲につながり ひとたび研究者たるたる姿勢で学べば、自分だけにみえる鮮やかな景色がみえてくる。これからはこうしたいという気持ちもでてくる。
 
 
その積み重ねが、自分ならではの探究の景色を・世界を描くことができるようになるのである。
 
思考の扉を開き、世界に羽ばたきという校歌の言葉は、そのようなことを意味している。このことは決して簡単なことではないが、皆さんならきっとできるはずである。
 
また、今回の中学入試受験生のうち合格できたのは12%である。今、みなさんが、座っているその席に憧れ、夢をかなえることができなかった受験生もたくさんいる中で、それを勝ち得た皆さんは同士であり、同期生である。生涯変わらない同窓生となる。だから、結束して欲しいのである。
 
心から尊敬できる信頼できる友を持つことは、お互いの存在を称賛し、尊敬し合える生涯の友、人生の誇りを手に入れることである。ぜひ結束してほしい。この日のこの気持ちを、6年間の原点にしてほしい。それがいつか人生の原点なのだと誇りをもって言える日が必ずくると信じてほしい。
 
新しい三田国際生に「発想の自由人たれ」という言葉を送りたい。この精神で卒業生が必ずや社会で活躍し貢献していくはずである。同期生が一丸となって、先輩に続いてほしい。」
 
 
と三田国際の“Soul”を贈った。
 
それに応えて、新入生からも誓いの言葉があった。新入生代表は2人。1人は日本語で、もう1人は英語で。たしかに、今年の新入生は、6クラスのうち4クラスがインターナショナルクラスで、2クラスが本科である。もはや、学園生活そのものが日本語と英語の併用で行われるようになっているのだから、この誓いの言葉が、両方の言語で語られるというのは、自然なことなのである。
 
新入生は、こう高らかにスピーチした。
 
「夢に見た三田国際の生徒になった。毎日の勉強や部活を通して、新しい先生や友達との出会いがあると思う。その中で、難しいことにも挑戦し、協力していきながら考える力を身に着けたい。
 
 
明るく楽しい学園をつくってくださった先生方や先輩たちに学び、どんなことにも全力で立ち向かい、実りある生活をおくる。」
 
という頼もしい誓いの言葉が語られた。はやくもすばらしいプレゼンテーション能力を披露したのである。
 
今年の三田国際の新入生は、入学時点で、すでに深く学ぶ力、ハイレベルの英語力、豊かなプレゼンテーション能力を持っている生徒が多い。他校であれば、中学の間に、このくらい成長すればよいというレベルから中1をスタートできるのである。
 
 
☆吹奏楽部の演奏に合わせて先輩たちの合唱と共に新入生は校歌を歌った。その響きを聞きながら、また新たな三田国際の学びの景色を見ることができると期待が膨らんだのである。

静岡聖光学院 バージョンアップ イートン・カレッジと新たな交流に

静岡聖光学院は、一気呵成にグローバル教育の内容も質もアップデートすることになった。その突破口は、先月、あのイートン・カレッジとの新たな交流の連携が確定したことによる。イートンと言えば、伝統的な学校と思われがちだが、伝統と革新を統合させてきたからこそ、600年もの歴史を創り上げてこれたのだと同校サイトには記述されている。

その意味では、静岡聖光学院もキリスト教教育や探究という学問的な伝統と21世紀型教育という革新の統合を企図しているという点で同じである。両校が果たしてどのような連携を行っていくのか、今後その発展が大いに期待されるわけであるが、まずは、この3月にその出発点にしっかりと立ったわけである。by 本間勇人 私立学校研究家

(イートンカレッジは、イノベーティブな教育も促進している。写真は同校サイトから。)

今年3月、静岡聖光学院の副校長星野明宏先生と国際交流担当の佐々木陽平先生が、イギリスに飛び、マレーシアなど経由して、エスタブリッシュな私立学校視察を行いつつ、「グローバル教育3.0」のプロジェクトも同時に構築してきた。まずはイートン・カレッジとの2つのプログラムである。

とにかく、両校は、出遭った瞬間から意気投合したということだ。キリスト教教育をベースにした伝統的教育とイノベーティブな革新的な教育を実践しているし、ラグビーを始めとする卓越したスポーツやアクティビティのプログラムを実践しているからである。

 

もちろん、最も重要なことは、そのような伝統と革新の統合されたオールラウンドな教育によって、生徒のタレント(ここでは聖書に出てくるタラントの意味も含んでいる)を豊かにし、論理的思考を土台としたクリティカルシンキングやクリエイティブシンキングのスキルを高めること、強い身体と精神を育てるという生徒の成長を目標としているという点で強烈に一致したということである。

まずは、7月に実施するイートン・カレッジ・サマースクールのプログラムが確定したということだ。歴史が刻み込まれた学校施設を使って同校の教員から実際に指導を受ける。 英国そのものを築き上げてきた最高水準の教育と生きた国際感覚を体感するというのである。

そして、2つめは、2019年にイートン・カレッジのラグビー部初来日の受け入れ先が静岡聖光学院だということなのだ。受け入れるとは具体的には、部員全員のホームステイ先を静岡聖学院の在校生の家族が歓迎するというものである。そこを拠点に、静岡聖光学院をはじめ、いくつかの日本の高校のラグビー部とラグビー交流を行っていく。

このような交流ができるのは、静岡聖光学院のラグビー部が、花園の試合に出場してきた実績やその実力があるからであり、同時にイギリス伝統の競技としてジェントルマンの精神を内に秘めている生徒の存在があるからであろう。

(静岡聖光学院のラグビー場は、富士山を仰ぎながらのロケーション。イートンの生徒の驚く姿が目に浮かぶ。)

いずれにしても、2019年といえば、ラグビーのワールドカップも日本で行われるので、このラグビー交流は世間の耳目を集めることになるだろう。

それゆえ、静岡聖光学院では、ますますPBL型授業でディスカッションのスキルを鍛え、英語力を高めるさらなる創意工夫が展開していくことになる。開かれた学校は、相互に刺激を与えあいながら、教師も生徒もその成長曲線は指数関数的な弧を描くわけである。

そして、このような交流はイートン・カレッジにとどまらず、今回訪問してきた幾つかのパブリックスクールの中の1校であるハロー校とも交流が始まることが確定されたということだ。ハロー校と言えば、イートンと並び、イギリスパブリックスクールの双璧である。

さらにマレーシアのエスタブリッシュ私立学校マレーカレッジとの国際交流も7月から始まる。マレーカレッジは、イートンカレッジをモデルにしているため、伝統と革新の統合が図られているようである。革新的教育においては、ニューロサイエンス部・英語社会部・ユネスコ部・ロボット部・ソーラ ー部等は国内屈指の活躍をしているということだ。そういえば、イートン・カレッジもニューロサイエンスをはじめコンピュータサイエンスなどイノベーティブな学びにも力を入れている。

(マレーカレッジキャンパス)

毎年7月に行われているインターナショナルサミットに参加させてもらうことが決定。テーマはロボット・サイエンス・テクノロジーで、東南アジア各国から招待校が参加する。4名が招待されているから、7月までに、学校を挙げてその準備にかかる。こうして、教師も生徒も、そして学校も成長カーブを描くことになる。

2月に行われている国際 7人制トーナメントにも招待をうけているというから、イギリスから東南アジアにかけて、多様な文化、歴史、価値観との交流の幅が広がり、新しい時代を切り開く発想や思考の技術を創発させていくことになるだろう。

静岡聖光学院のグローバル教育の今後の進化に大いに期待したい。

 

 

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