文杉 ダブルディプロマ・プログラム画期的(3)

§4 Co-Teaching <think pare share>

カール博士は、「今回私たちも大いに学んでいます。文杉の先生方は意欲的で、何よりオープンマインドで私たちを受けれて下さっています。生徒のみなさんがグローバル大学など世界にどんどんアクセスできる機会を共に作っていくことができるのは、たいへんすがすがしく、心地よく仕事ができます」と語る。

このダブルディプロマ・プログラムは、学習指導要領もきっちり実施し、BCプログラムも充実させる。そのためには、文杉の教師とカナダの教師が共に学び、共に教えるティーチンスタイルをとる校内ガバナンスが大切。このコラボが高い壁になるのが日本の多くの学校の難しいところだが、文杉は久しい間、国際交流の体験を積み上げてきたし、2年間この日のために学内で侃侃諤諤議論し、アクティブラーニングのトレーニングを積んできた。準備万端整ったのである。

ダブルディプロマ・プログラムは、今のところ週44時間。学習指導要領とBCカリキュラムの両方を実施するために、ある程度時間は膨らむ。しかし、一般的な学校の倍の時間数を学ぶというわけではない。

しかし、その質は非常に高密度である。というのもティーチングスタイルが<think pare share>というアクティブラーニングのため、生徒はクリティカルシンキングを総動員することになるからだ。

カール博士は、21会でも学びの基準として使っているブルームのタキソノミーを引き合いに出して説明してくれた。たとえば、数学は、知識や理解の段階では、幾何かは幾何、二次関数は二次関数、三角比は三角比、微積は微積として、ばらばらに学ぶから、数学のアイデアやコンセプトは体得できない。それぞれ学んでいくから物理的時間はかかる。

ところが、BCカリキュラムでは、これらの分野は数学的思考や関数全体のつながりとして<think pare share>していくから、授業としての物理的時間はかからないが、質の高い思考力を養うことができる。

だから、たとえば同じテーマである微分を学ぶとき、日本の学習指導要領では、「基礎知識と理解」の段階をみっちり学び、BCカリキュラムでは「応用、分析、理解、自己決定判断」という概念や思考のプロセスを学ぶという連携をすればよいということになる。

そして、このとき大切なのは、理解と応用のそれぞれの段階をつなぐ学びの方法、教え方を日本人教師とカナダの教師がシェアし、実際にチームティーチングや研修の機会でCo-Teachingを積み上げていくことであるようだ。

要は完全に役割分担をしてしまうのではなく、それぞれの役割を演じながら、情報をシェアし結合しながらプログラムを展開していく。そしてどちらを学ぶにしても生徒は別々ではないから、どちらの授業もアクティブラーニングを実践し、<think pare share>(これは21会でいう「思考×PIL×PBL」に相当する)を共有する。

これによって、生徒の内面で、タキソノミー全体のつながりがみえてくる。そのときクリティカルシンカーになれるだろう。カール先生の話を聞いて、改めて感じ入ったのは、「知識―理解」の段階だけで、技術的にクリティカルシンキングを育成することはできないということだ。

今学習指導要領が改訂されようとしているが、その準備はすでに2010年ころから行われていて、そこでブルームやマルザーノ、アンダーソンなどのタキソノミーの概念や発想及び21世紀型スキルを、国立教育政策研究所教育課程研究センターでリサーチしていた理由は、ここにあったのである。

しかし、タキソノミーの概念や発想は、一般的には教育現場では浸透しない。なぜなら大学入試が依然として「知識と理解」の段階で作成されているからだ。教育現場のタキソノミーによる革新が先か、それとも大学入試改革が先か、にわとりとたまごの話に終止符をうつべく、2020年大学入試改革一体型の学習指導要領改訂作業が昨秋やっとスタートした。

文杉とBCのダブルディプロマ・プログラムがいかに先進的で先駆的であるか。教育改革のインパクトが文杉から生まれることは間違いない。

 

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