Created on 11月 28, 2016
同日私は文化学園大学杉並(以下、文杉)の中学生の授業も見学させていただきました。中学には、グローバルコースがあり、生徒が英語を上達させやすいように、入学時の英語レベルに応じてクラス分けをしています。
「伝え方」の基盤
最初に入った教室では机をすべて後ろに下げ、先生も交えて輪になって立って授業を受けていました。先生は生徒たちに英語で話しかけ、多くの生徒は互いに日本語で先生の言ったことを確認しあっていました。理解できている生徒が他の生徒たちをサポートしている場面もうかがえました。
さて、輪になって何をしていたかというと、こんなゲームです。まず一人の生徒が自分を指しmeといい、その後誰かを指してto youといいます。指された生徒は同じことを繰り返し、ランダムに回していくというゲームです。生徒たちは面白がってやっていました。次に先生は言葉なしでアイコンタクトとジェスチャーだけでやってみましょうと生徒たちに呼びかけました。目が笑っている生徒もいてとても楽しそうです。最後にアイコンタクトだけになりました。自分が指されたと勘違いする生徒もいたり笑い転げたりする生徒もいてなかなか続きませんでした。しかし終始先生も生徒も楽しそうで、教員と生徒の間に壁を感じない素敵な授業だと感じました。このゲームの意義はというと、アイコンタクトの重要性や相手に伝える力をつけることだと思います。私自身の海外経験でも多少英語がうまく話せなくても伝えようとする気持ちによってある程度コミュニケーションを取ることは可能だと感じています。逆にいくら話せても気持ちの籠っていない言葉は相手に伝わりにくいこともあります。つまり、英語に限らず言語を話すうえで基盤となる伝え方をこの単純なゲームを通して学んでいたのではないでしょうか。
自己紹介
次のクラスでは、一見「普通」の授業を行っていました。先生が前に立ち、生徒が一人ずつ自分の机に座っています。
しかし、よくよく見ると全員一台ずつiPadを持っています。表示されている画面はそれぞれ別の内容で、どうやら自分で作成したドキュメントのようです。すると先生は生徒たちを二人組にし、お互いにプレゼンテーションをしあうように言いました。内容は自己紹介。このような授業は私も何度か経験していますが、文杉の生徒ほど静かに相手の話を真剣に聞く生徒は見たことがありません。その理由はおそらく先生の指示が的確であることにあります。生徒にペアになることを指示する際、他にもいくつかプレゼンをする際の注意点について説明していました。椅子を向かい合わせにすること、アイコンタクトをすること、そして熱意(enthusiasm)を持って話すことでした。一つ目のクラスと同様、アイコンタクトを強調していたことが印象に残りました。
Creative writing
最後のクラスも同じように先生が前に立ち、生徒たちは机に座ってiPadを操作していました。しかし入った瞬間感じたちょっとした違いがあります。このクラスの生徒は他と比べ、飛び交う自然な会話が英語でした。先生に対しても積極的に英語で質問する生徒がいたので、より海外のクラスルームに近いものを感じました。
ここでも自己紹介をしているのかと思いきや、聞くと先生がネット上で見つけた誰かの写真を生徒に配り、その写真のみをもとに想像でその人のプロフィールを書くというものでした。このクラスの先生が重視していたのは創造力(creativity)です。そしてプレゼンではアイコンタクトと表情(facial expression)を意識するよう指示していました。感心したのは授業時間が終わったとき、生徒たちから「あー…」という残念そうな声が聞こえたことです。熱心に取り組む姿勢が垣間見られた瞬間でした。
3つのクラスに共通して、他の中学生の英語クラスと違う点を一つあります。それは生徒の多くが電子辞書や紙の辞書を持たないことです。その理由は、生徒同士がコミュニケーションをとる際、両者が理解できる単語を使ってほしいからだそうです。確かに辞書に頼りすぎると、「正しい」表現に囚われて、コミュニケーションの基本が忘れられてしまうのかもしれません。
中学生の授業では、英語で授業を行うための前段階として、生徒が英語を使うことに慣れるようにBody language(例:アイコンタクト、熱意、表情)を交えた授業が目立ちました。また、英語を苦手だと感じないように様々な工夫を加え、生徒が楽しめるような仕組みづくりがされていることも感じました。海外経験のある生徒も、今までずっと日本で暮らしてきた生徒も同じ教室で同じ授業を行い、そこで協力しあうことは理想的な環境だと思います。それが実現できているのが文杉です。正直今回の訪問で、驚き、同時に嬉しくなりました。文杉生の将来を見るのがとても楽しみです。