「グローバル高大接続改革の時代到来〜2020年大学入試改革の本当のねらいを明らかにする」シンポジウムが開催!【前編】

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去る2017年5月27日(土)、「グローバル高大接続改革の時代到来〜2020年大学入試改革の本当のねらいを明らかにする」と題した、第2回21世紀型教育機構シンポジウムが明海大学浦安キャンパスで開催されました。
 
2020年、これまでのセンター試験が廃止され、代わって「大学入学共通テスト」が導入されることは、すでに教育関係者ならずとも大きなトピックとして語られています。
 
その大学入試改革では、評価方法や試験内容がダイナミックに変更する予定ではあるものの、この時点では具体的な内容が不透明でした。現役の文科省審議官やハワイ大学教授の講演が聞けるということもあって、教育関係者を中心に高い注目を集め、早いタイミングで定員に達しました。
 
「高大接続改革」の背景には、実は「グローバル高大接続改革」があります。このことは多くの現場では、当面実感が伴わないため、前面にでてきません。しかし、この背景も含めて今回の2020年の大学入試会改革を俯瞰しなければ、予測不能な時代に生きる日本の子どもたちの未来は、結局何も変わらない可能性があります。
 
したがって、今回は、改革の背景にある意図を丁寧に解きほぐしていくようなセミナーとなりました。      (教育見届け隊ライター/市村幸妙)
 
 
 
司会を務める工学院大学附属中学校・高等学校校長の平方邦行先生は開会にあたり、
「『2020年大学入試改革の本当のねらい』について、本当の意味は誰にもわからないかもしれませんが、今回登場いただく方々の話を聞いていただき、どういうものかという本質について解き明かしていきたいと思っています」と宣言します。
5月16日に文科省から発表された新教育指導要領について触れながら、日本の教育がどう変化を遂げていくのか、過渡期に直面している現状を改めて考えさせられる開会のことばでした。
なお、この後「高大接続改革の実施方針等の策定について」が7月13日に文科省から発表されています。
 
【講演①】21世紀型教育機構とグローバル高大接続改革
 
 
まず登壇したのは、21世紀型教育機構理事長の吉田晋先生です。富士見丘中学校高等学校校長、日本私立中学高等学校連合会会長であり、第7期中央教育審議会委員などでも活躍されています。国内外の教育事情に精通し、様々な立場から文科省へ提言したり、折衝されている私学人です。
 
私立学校のみならず、公立学校も含め日本の教育のビジョンをデザインする多大なる貢献をしています。
 
21世紀教育機構としてこれからの教育を考えてきた10年以上の研究を振り返りながら、なぜこの活動を行ってきたのかを含め、今後の教育のあり方や英語外部検定試験についての大胆な問題提起が行われました。
 
意識が変わってきている、大学選びの基準
日本社会は、東京五輪などを含めて、2020年を境に大きく変容しようとしています。教育も2020年の転換期を控え、文部科学省・政府において、大きく舵が切られています。
 
21世紀教育機構では、これまでのような単なる暗記力・記憶力をつけるだけの一方的な教育や偏差値で輪切りにされた中高大での学校選びを否定し、そこからの脱却を図り、本当に子どもたちにとって役立つ教育を行うための21世紀型教育を探求・実践してきました。
 
吉田先生は、同機構及び加盟校ではこの10年に渡り、どんな教育を行えば、生徒たちがこれからの社会で通用する力をつけられるのかを研究し、何を目指して21世紀型教育を実施してきたのかを力説します。
 
そこで意識されていた、これからの子どもたちに必要と掲げられた力に以下があります。
 
①自らの考えを人に対して伝えられること
②この国のためにしっかりと働ける人材となること
 
例えば①は、「表現力」や「主体的・対話的で深い学び」として新学習指導要領にも明記されたり、2020年の大学入学者選抜改革でも記述問題が出題されますが、これらにおいて肝となってくる事項です。
 
吉田先生が校長を務め、SGHの認定を受けている富士見丘学園では、サステイナビリティ(持続可能性)の考え方をベースに国内外で様々なフィールドワークを実施。「災害と地域社会」、「環境とライフスタイル」などにおいて問題を発見し、解決へ向けて仲間たちと共に、各自でも調べ思考し、発表の機会をふんだんに設けています。
 
②について富士見丘学園では、SGHの活動を国内外で豊富に設定。日本が世界の各国の中で置かれた状況を肌で感じることにより、海外に目を向けるだけでなく、より深く日本のことを学びたい、日本や世界の役に立ちたいと思う機会になっています。
 
つまり、海外と日本という区別をするのではなく、世界のどこにいても、グローバルな視野とその地域の固有の文化の両方をリサーチし、問題を発見し、解決する糸口を見いだせる機会を作っているのです。いまここで、身近な固有の問題も、世界の問題とつながっています。その結節点に気づく機会、さらにはその結びつきを創る機会が大切なのです。
 
その意味で、学園にいても、海外にいても、グローバルな環境にいることを自覚できる学びが展開しているといえるでしょう。
 
これらの経験と学びを通じて、生徒たちの間に学部・学科選択の際に自分の将来ややりたいことを見据えている風潮が広がってきていることを吉田先生自身も感じているのだそうです。
 
とはいうものの、現実問題として吉田先生をはじめ、この会場に集まっている方々が直面している最大の関心事は、やはり高大接続改革における「大学入学者選抜」の試験内容の変更でしょう。
 
吉田先生は学習指導要領の改訂にも触れながら、「『大学入学者選抜』は変わるのです。しかし大学は未だ変わっていない」と、嘆きます。ここには、大学入学選抜の手法の改革が加速するかしないかというよりも、未来を見据えたグローバル教育を高大接続において創っていかなければならない時代、中高が先に進み、大学が遅れれば、日本における未来のグローバルな世界で活躍する人材育成が後退するという危機感があります。
 
大学のスピードに合わせるドメスティックな高大接続改革では、世界の国々が当然のこととして行っている「グローバル高大接続準備教育」との格差がどんどん開いてしまうからです。
 
吉田先生は、企業から大学へ、大学生の質の低下が糾弾されることについて、その原因は学生の採用基準を設けている企業側にもあると言います。「その要因を高校に押し付ける大学の言い分に猛反発したのが我々21世紀教育機構のメンバーです」と語り、教育内容ではなく大学名で選んできた、これまでの教育への猛省を再度促します。
 
高校・大学における日本の英語教育の目標とは
 
吉田先生は「大学は英語の授業をやっている場合ではありません。本来は、授業を英語でやらなければいけないのです」と、大学での英語教育についても喝を入れます。この日の会場となった明海大学を例にとって、英語で授業を行う大学が少しずつ増えてきていること、世界の諸大学との比較や日本の大学が留学生を迎えるために英語教育は必要として、そうしたポリシーを持つ大学と考えを共にしたい旨を本機構の会長として発言されました。
 
「大学入学者選抜改革」で導入が決定している、英語外部検定試験のスコアを活用し、AO試験が免除される流れは、これまで富士見丘学園で進められてきた、高校段階で読む・聞く・話す・書くの4技能をしっかりと育てる英語教育と合致しています。高校で学んだ英語4技能を生かして、外部検定試験で結果を残すことで、大学入試だけでなく社会に通用する英語を身につける教育が広がっています。ここで吉田先生は富士見丘学園として、より4技能をしっかりと行う英語教育に邁進する決意を表明。
 
なお、一昨年から国家公務員の総合職での試験でも、これら英語外部検定試験のスコアに応じて加点される制度が取り入れられているそうです。
 
 
しかしここで吉田先生は、「主な英語の資格・検定試験」の一覧を見ながら、海外における通用度と国内での扱いの矛盾について、一部の英語検定試験を痛烈に批判。海外の日本人学校で実施されている実態についても触れながら、自分の進路を考えて、どの試験を選ぶのかこれからの英語外部検定試験との付き合い方を改めて考えさせられる内容となりました。
 
英語4技能を断行していくこととセットになって、「大学入試が変わることで、高校・大学それぞれの教育も変わる大きな力になる」と期待感を持つ吉田先生。「高大接続改革」の背景にある「グローバル高大接続準備教育」の展開がやがて前面に登場してくる大きな第一歩になるのだと。
 
これまでの信念が今回の教育改革につながり、「高校の改革」・「大学の改革」、そしてそれをつなぐ「高大接続改革」の三位一体の改革を歓迎しつつ、「この教育改革により、ある意味夢が叶った」と話し、これからの日本の教育に一石を投じる様々な提言が行われた講演となりました。
 
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