Created on 10月 2, 2018
2018年9月2日(日)、21世紀型教育機構(21st CEO)は『静岡聖光学院の教育の挑戦!-静岡から世界を変える人材育成を使命とする-』と題し、第2回静岡シンポジウムを開催しました。また、中学受験生に向けた「思考力セミナー」も実施されました。
会場となったホールには多数の保護者や教育関係者が集い、登壇なさった先生方の熱量もあり、盛況のうちに終了しました。
by 神崎史彦:21世紀型教育機構リサーチフェロー(株式会社カンザキメソッド代表)
静岡初の21世紀型教育推進校であり、各種メディアからも注目を浴びる静岡の希望の星、静岡聖光学院中学校・高等学校の教育が、昨年にも増してアップデートしている姿が印象的でした。そして、未来をつくる私学に転回する21st CEO加盟校の熱量が、静岡を中心に多くの保護者や中学受験生、教育関係者にも伝播している様子が伺えました。
新たなグローバル時代のジェントルマン
まずは、静岡聖光学院中学校・高等学校副校長の星野明宏先生が『新たなグローバル時代のジェントルマン』像を熱く語りました。星野先生は、株式会社電通を経て、高校教員になるという異色の経歴の持ち主。ラグビーU18日本代表の監督やスポーツ庁の「部活動に関するアドバイザリー会議」委員を務めています。
様々な社会経験を有する星野先生は、大学を卒業する22歳までに身に付けてきた知識が社会のミッションに適合しないことに疑念を抱いており、それは求められる人間像にも現れるといいます。学校では教科書をなぞれる子が優秀であるが、社会になったらクリエイティブなセンスが問われる、と。
こうした創造的思考を育む教育を求め、静岡聖光学院は昨年21世紀型教育機構(21st CEO)に昨年加盟しました。そして、静岡の私学としてフラッグシップとなり、教育改革の動きを加速しています。星野先生は「地方だからこそじっくりと鍛えていく」と、決意を新たにします。
そして、21世紀型教育機構加盟校で行う教育について、特に保護者に向けて、丁寧に主旨を説明していきます。明治維新直後の教育では社会や世界を見据え、逆算でカリキュラムがつくられていました。しかし、社会や世界は刻々と変わるにもかかわらず、教育は中々変わらない。
これからの社会や世界に必要な教育を展開しようと真摯に取り組んでいるのが、21st CEOだといいます。小学校・中学・高校で社会・世界との接続を促し、世に羽ばたく生徒を育もうという思いを持ち、「『生徒の未来、日本の未来、静岡の未来』が根幹にある」と星野先生は力説します。
創立50周年となった静岡聖光学院はピエール・ロバートがジェントルマンを育てるために、静岡の政財界と協力し合いながらつくられた私学です。その発展のため、STEAM教育等を通し、全人格を様々なところからつくりたいと願い、静岡聖光の教育改革につなげているとのこと。施設のリニューアルも、教育から逆算したものにすぎないといいます。
このシンポジウムの後、筆者はリニューアルした図書館へ見学に伺いました。
まるでカフェにいるカジュアルな感覚になる場づくり。生徒たちが談笑しあえる大きなテーブル、ひとりで学べるカウンターテーブル。そして、図書の展示もクール。植物をモチーフとした自然とサイエンスとの融合を表現した、インパクトのある展示。
生徒たちをさりげなく持続可能な社会へと誘っているかのようでした。生徒一人ひとりにさまざまな学びがあってもいい。でも、図書と世界とどう接続するか、手を差し伸べる。学びへのこだわりを感じさせる、まさに21世紀型教育のサードウェーブの波を感じる空間でした。
さて、本題に戻ります。
そのうえで、星野先生はいままでの教育にクリティカルな視点を向け、どういう男子を育むべきか、真摯に向き合ったそうです。外界からのインプットに対し、想像(妄想?)を繰り広げ、さまざまな思考を戦わせながら、創造(解決)の世界をつくる。
星野先生は「あなたがもしつくるなら?」と、クリエイティブシンキング(創造的思考)が求められる時代に即した教育、日本が弱い表現領域にメスを入れる教育を施したいと述べます。
その一翼を担うのが国際交流とのこと。世界のネットワークを学生のうちから構築するべく、イートン・カレッジ(1440年に創設された英国の男子全寮制のパブリックスクール。英国一の名門校。)との連携、アジアの学生との積極的な交流の推進を行っています。静岡私学では破格の教育環境と言えます。その交流の根幹には「man for others」があり、そして自分軸を持ったうえで異なる価値観とぶつかりあう逞しさが欠かせません。
静岡聖光学院の教育アップデートは、確実に静岡私学のみならず、日本の教育に大きな影響を与えていくものだと言えます。生きる力を持った男子たちを送り出そう、根幹に「man for others」の精神があるのです。
そして、教員や生徒を信頼し、マインドを広げ、育む星野先生のリーダーシップが、静岡聖光の「希望の光」をともし続けているのだと感じた講演でした。