2011年に21会(21世紀型教育を創る会)が発足して以来、21世紀型教育機構への改組を含め、当機構は吉田晋会長のもとでバージョンアップを重ねてきました。昨年からのコロナ禍において、生徒や教職員の安心安全を守りぬくという強い覚悟のもと、吉田会長は富士見丘学園の理事長校長としての職務はもちろん、私立学校全体のために文科省や関係機関とも連携しながら、いつ起こるかも分からない事態への対応に注力されています。
この難局に全力で立ち向かうため、21世紀型教育機構の新たな節目の年に、吉田会長は新しい教育への思いを平方先生に託しました。そして、平方先生は、21世紀型教育機構の新しい幕開けを「ワールドメイキング」と位置付けると冒頭挨拶で宣言されました。
平方先生は「自分がしてほしいことを他人にもしなさい」という黄金律を引き合いに出し、キリスト教のみならず、私立学校の連合である21世紀型教育機構が従うべき理念を確認しました。そして将来を担うZ世代が自分たちで世界を創る力(=ワールドメイキングの力)を持つことこそが21CEOとしての新たな目標であると語りました。
平方先生は、4つの「89」、すなわち1689年の名誉革命、1789年のフランス革命、1889年の大日本帝国憲法発布、1989年のベルリンの壁崩壊という、民主化の流れにおける不思議な符合に触れつつ、2089年、私たち大人がおそらく生きていないが、Z世代が築いているであろう未来がどのようなものであるべきなのかを問いかけました。2089年の世の中を構想し、そこから今の教育を考える必要性を問いかけたのです。
ワールドメイキングは、グローバル教育のさらなるバージョンアップ(=GE4.0)を意味します。「C1英語」を目指すだけでなく、「C1言語」として、英語だけではない多様な言語や数学などの世界共通言語を思考言語に取り込んでいくこともGE4.0に含まれます。自分を見るためには鏡が必要であるように、多様な言語によって自らの思考を捉え返すことがグローバル教育に必要であることが示されました。
教育研究センターからは聖学院の児浦先生が話をつなぎます。これまで推進してきたPBLやSTEAMの授業実践は、生徒がクリエイティビティを発揮し主体的に学んでいく力を育むものである一方、そのような授業にだれもがアクセスできるように可視化し、活動を学校外に広げていくためには、スーパーグローバルティーチャー(SGT)の育成を急がなければならない、それが今年度の教育研究センターの目標となるということが示されました。
具体的な年間イベントも、21CEO加盟校の若手の先生を巻き込みながら進められていくという方針が、工学院附属の田中先生、静岡聖光学院の田代先生、和洋九段女子の新井先生とともに明確にされました。その際には、21CEOが蓄積してきたアクレディテーションスコアなどのデータや、昨年から始まったPBL動画のアーカイブなどを活用していくことになります。今年度のイベントに若手の先生方が参加できるようにと、加盟校のマネジメントの先生方に協力が要請されました。
イギリス在住の哲学者、Alex Dutson先生からは、英語哲学対話の意義についてプレゼンテーションが行れ、PBLやSTEAMの授業がいかに哲学的思考によって深められるかということが説明されました。八雲学園の近藤先生にその場で通訳をお願いし、参加者全員がAlex先生の話を共有しました。
プレゼンテーション後の質疑応答では、生徒のConfidence が哲学によってどのように生み出されるのかという点についての質問があり、Alex先生は、生徒にとって、答えが一つではない問いに応答することがリスクテイキングの体験であること、そして、そのリスクを教員のファシリテーションに支えられながら乗り越えることが生徒のConfidenceにつながるというメカニズムを示唆してくれました。
定例会の前半は、以上のような内容で進められました。この後、各加盟校がコロナ禍においてどのように活動を行ってきたか、またこれから行っていくかが共有されることになります。(続く)