戸板のカリキュラムイノベーションの特徴は、学習目標を大項目・中項目・小項目・・・とできる限りいったん要素に分解し、今度は逆に要素と要素の関係を生み出すいわば機能的構成主義の方法論で組み立てられている。教育学では、機能主義と構成主義のカリキュラムデザインは、対立してきたのだが、戸板では統合したということではないか。
その統合の仕方は、1つはグループ学習及びプレゼンテーションという相互通行型の授業スタイルの導入によって果たされ、さらに何を議論し合うのかトリガークエスチョンまで形式知化するというナレッジマネジメントの手法によって、知識やものの見方の結びつきが拡張し深化するようになっている。
――大橋先生はご自身のブログで、たいへん興味深いことを語られていますが。
道具は使いようですから、おそらく今後は「授業のスタイルはどんなスタイルですか?」そんな質問も聞かれるようになる時代が始まっていると思います。
今井先生:実際、今回のカリキュラムイノベーションでそれを戸板から強烈に発信しようと目論んでいるのです。授業のスタイルを、≪グループワーク―プレゼンテーション≫型にしていくというのはそういう理由です。
ただ、一時間の授業を全部このスタイルで行うわけではありません。導入や知識の確認、最後のレポートの間に挿入するようなスタイルになると思います。
すでに、ホームページを見てもらえばおわかりのように、いろいろなバリエーションで行っています。グループも、ピアカウンセリング的なサイズからチームまで多様です。
原田先生:ある意味グループエンカウンター的な要素もありますから、before-afterでダイナミックな変化が1時間の中で起こるように仕掛けています。そのためには、トリガークエスチョンは、知識確認のような問いを投げて終わりにするわけにはいきません。知識を総動員して、その時間のねらいを「情報×ものの見方×問題意識」というトータルな思考にまでジャンプするようにします。
今井先生:そのために、トリガークエスチョンを精査していく作業が、今回のカリキュラムイノベーションの醍醐味なわけです。
原田先生:そして、1時間のトリガークエスチョンで成長した思考力が、次の時間のトリガークエスチョンでさらに成長する。そういう6年間であるようにするには、まだまだ試行錯誤が必要です。今後これでよいということはないでしょう。毎年バージョンアップの作業が必要です。教員研修や主任どうしのミーティングが密になっているのもそれを示唆しています。
――1時間の授業の中での成長は生徒1人ひとりにとってはものすごいジャンプでしょうが、6年間から鳥瞰すると一歩一歩ということなのですね。
大橋先生:おっしゃる通りです。ですからダイナミックなのですよ。モチベーションは、当事者は常に変化している感覚の中でしか生まれない。しかも互いに褒め合い、助け合い、優れたリーダーに導かれる。生徒中心主義でも教師中心主義でもないのです。
大事なことはモチベーションの連続が、視野を広めることです。探究活動を深めることです。それ以外に21世紀のダイナミックなグローバリゼーションの疾風怒濤を自分をしっかり持ち、多くの人々のランターンになることはできないでしょう。
未来の光に導かれることも大切ですが、子どもたち1人ひとりが光を次代の子どもたちに放てるようなカリキュラムイノベーションが、今ここで大切なのではないでしょうか。