文化学園大学杉並中高(以降「文大杉並」、または「文杉」)の建学の精神は「感動の教育」である。生徒の心に感動があるからこそ、思いやりや尊敬も育まれ、生きることの意味も感得されるという。そのような感動を生み出す文大杉並の教育の根底には、PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)型の学びが浸透している。松谷校長、青井教頭、英語科の窪田先生にお話を伺った。(by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家)
感動の教育
これまで何度も壁にぶつかってきたし、逆に生徒に教わったこともある。決勝戦で敗れてしまった翌朝、テニスコートの近くの宿舎で寝ていると、ボールの音がポンポンとする。昨日敗戦でうなだれていたはずの生徒が、来年こそ勝ちましょうと言ってきて励まされたこともあった。諦めない気持ちを教わり、実際にその翌年に優勝することができたのです。
「学ぼうとする力=興味と関心」を引き出すPBL型の授業
文大杉並では、学びを「学ぼうとする力」「学ぶ力」「学んだ力」という三つの側面から捉えている。そして「学ぼうとする力」を伸ばすために、授業の最初の5分間に必ず生徒の好奇心を引き出す工夫をするように徹底されているのだそうだ。一見シンプルな工夫であるように思うが、校長がリーダーシップを取ってこれを実施していることの意味は大きい。というのも、授業をする先生にクリティカルな視点が埋め込まれ、そして、それが個人技ではなく、システムとして機能するようになったことを意味しているからである。
授業という場は、ともすると誰も口を挟めない聖域になりがちである。凄い授業を行う先生がいても、それがなかなか他に波及しないことがある。システムになるかどうかはひとえにリーダーにかかっていると言ってよい。その点、かつてテニス部を全国レベルに導いた松谷校長の手腕は折り紙つきだ。信頼をベースに進めるリーダーシップの手法は、確実に文大杉並の先生方に浸透しつつある。
松谷校長の考えが浸透しているとすぐに分かったのは、実際に校舎内の授業を見学させていただいた時である。ある中学校1年生の国語の授業では、自分が調べた漢字の意味を黒板に書き、皆の前で発表していた。また地理の授業では、生徒の興味を引き出すためのビデオを流していた。英語の授業でも、映画の1シーンを流して、そのセリフに使われているワンフレーズから英文法を学ぶなどといった工夫が行われるという。生徒の「学ぼうとする力」を引き出そうとすれば授業は自ずとPBL型になっていくわけである。