桜丘 桜華祭が映し出す「学習する組織」(1)

桜丘中学・高等学校(以降「桜丘」)の文化祭「桜華祭」は、在校生の知の発達を一望に眺めることができる。なぜこんなに生徒が成長するのか。その秘密について探究した。(by 本間勇人:私立学校研究家)

高1までに自己決定レベルにジャンプ

高1のプレゼンテーションは、自分の進路決定についてだった。なぜ自分がその道を選択するのか。その道を歩んだ先に、どんな社会貢献ができるのか。その道に立ちはだかる壁は何か。それを打ち砕くには、何をどこで学ぶのか。そこに進むためには、どういうプロセスで、どういう資格を取得していくのか、仕事のシステムの詳細は何か・・・・・・。

理想と現実のギャップを埋めるプラグマティックなプレゼンテーションだった。このプレゼンをするために、自分の人生の今までを振り返り、自分の人生の未来への展望を描き、それを多くの体験学習を通し、あるいは実際に大学のオープンキャンパスでインタビューやフィールドワークを積み上げて検証してきた。

ただの思い付きや意見ではなく、社会や世界に評価されるアイデアの創出とそこにかかわる自己決定という理想に向けて準備を積み上げてきていることが伝わってきた。このプレゼンにいたるまでのプロセス――体験・調査・探究・議論・編集・論文といった一連の活動は、学園生活そのものであり、このプロセスの幾重ものループの連続のある成果である。

そして、高1生が桜丘の教育は、進路先準備ではなく未来への自己イノベーションの準備だと高らかに謳うとき、桜丘の学びのビジョンが共有されていることが明快に映し出されていることに気づく。

そのビジョンとは、与えられた地図をたどるのではなく、「コンパス」でそのつど道を探索しながら、実現の道を試行錯誤しながら開拓し、飛翔する山の頂に到達し、いよいよそこから「翼」を広げ羽ばたく準備をすることが学びであるというものであろう。

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