富士見丘 知識の体系化が自己理解へ(3)

「自主研究5×2」は自己理解の過程

――サタデープログラムのプロジェクトチームの先生方は、土曜日の講座の体験は、月曜日から金曜日の授業に活かされると話してくれました。今日も、そのような循環が起こっている話になっていますが、その根本的な理由は何ですか? 

中島先生:実際の社会では、いろいろな提案をしたときに、必ずしもすぐには受け入れられない。むしろそういうことの方が多いですね。そういう壁にはやめに直面できるのは「5×2」でできる得難い経験。

関根先生:自分の興味関心のあることを、自分の視点で調べ、まとめあげていくけれど、そういう局面にぶつかったりすることは、自己理解に結びつくことなのです。自分は何ができて何ができないかは、そのように突き詰めてみないとわからない。その過程の中で自分を知るということが「5×2」の究極の目的ですね。

テキストの中の理解度だけでは、そのような自己理解はなかなか実感できないのです。できるのにできないと思ったり、その逆にできないのにできると過信してしまったりということもあります。それでは、社会に参加する準備にはならないですね。

中島先生:そういう意味では、「5×2」は、何のために勉強するのかという自分も持たないとできない学びでもあります。すべての生徒がそこまでできるわけでもないのですが、ただ、自分の学年や先輩の中に、そういうすごい研究や探求する仲間が身近にいるという経験こそが大事です。

関根先生:今はたしかにできていないけれでも、自分も将来はできるかもしれないという可能性を信じることこそ、自己理解です。この自己理解があるからこそ、自分の興味や関心のあるテーマも見えてくるし、知的好奇心も広がります。

この知的好奇心というのは、「なぜ」の連続です。多くの問いを設定することです。言うまでもなく、月曜日から金曜日の授業に臨む構えにも当然よい影響を与えることになります。

――国立教育政策研究所のプロジェクト研究である「教育課程の編成に関する基礎的研究」の平成24年度における研究成果の報告書に「思考力」を中核として、それを支える「基礎力」、その使い方を方向づける「実践力」という三層構造で構成した「21世紀型能力」のモデルが提示されています。富士見丘の授業と「自主研究5×2」の話は、それを先取りしていると言えませんか。

中島先生:先取りしているかどうかは別にして、この提案を見て、何か新しいモデルだとは思いません。むしろ、この三層がきちんとつながる教育活動は具体的にどうするのかに興味があります。

関根先生:たしかにそうですね。富士見丘の場合は、この21世紀型能力の図でいうと、「基礎力」と「思考力」の両方を授業がある程度カバーします。そして「自主研究5×2」は、「思考力」と「実践力」がカバーしていると言えるかもしれません。そして、この後者が、「なぜ」の連続を生み出す知的好奇心の領域にも相当します。

中島先生:ところが「自主研究5×2」は私たち独自のカリキュラムですから、一般にはまだそうないわけです。教育活動の場がないのに、「思考力」と「実践力」の領域を育成しようと思ってもなかなか難しいでしょう。

大島先生:それは部活や行事でカバーできるということだろうけれど、部活や行事は、やはり限定されたテーマを扱うから、「自主研究5×2」のように多様な知的好奇心を育成する知的領域とはまた性質が異なっています。「知識をつなげる体系化」と「合理的な考え方」に「自分の感性」を結び付け、自分の考えや判断、自己決定をしていくことを、部活や行事が直接養ってきたのならば、このようなモデルを描く必要はなかったはず。

富士見丘は、このようなモデルが目指している21世紀型能力の教育の実践をすでに行ってきています。その意味で、時代の求めている教育の有効性を証明して、日本の教育を導く光を照らす使命があると確信しました。

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