聖徳学園 21世紀型教育への挑戦(1)

聖徳学園は、15年以上前から知能開発プログラムをベースに、生徒の個性・創造性・国際性を伸ばすプログラムデザインを積み上げてきた。高度な英語教育及び海外研修、教養講座もその一環。

そして、昨年就任された伊藤校長を中心に、さらにそのバージョンアップに取り組んでいる。伊藤正徳校長、藤尾直樹副校長・庄子眞也教頭に聞いた。by 本間勇人:私立学校研究家

左から、藤尾副校長、伊藤校長、庄子教頭

聖徳学園の21世紀型教育の基盤

聖徳学園は、建学の精神を聖徳太子の「和」の教えに置いている。2020年東京オリンピック・パラリンピックにおける「おもてなし」の話題、和食の無形文化遺産登録を目指す話題の背景には、日本の文化の内在的要因の構造が注目されているということがある。

この構造の枠組みを作っているのは、ある意味聖徳太子の十七条の憲法である。世界が注目するには悠久の文化的価値観が条件であるが、その核である聖徳太子の精神を継承している聖徳学園が、その精神の不易流行、つまりバージョンアップに挑戦する理由は、歴史的必然であろう。

伊藤校長は、この「和」の精神を具体化する教育の3本柱は「個性」「創造性」「国際性」である。21世紀型教育は、20世紀が個人主義重視の「個性」に走ってしまったが、それを軌道修正する必要性に迫られていると語る。

たしかに、今日本の学校現場で起こっている問題の背景には、個の重視が、絆の希薄化を加速させ、それをつなぎとめたいがために、SNSで「いいね!」という記号上のつながりに置き換えていると言われている。

だから、伊藤校長は、「個性」は人と人とのつながりの中ではじめて本物となる。したがって、教育環境も親密なつながりの重ね合わせが重要である。2名担任制にしているのもそこに理由があると。

カウンセラーは常駐しているが、エンカウンターというオープンマインドを形成するプログラムを実践しているのも同じ理由だ。

クラス、学年、教師と生徒のつながりを大切にしているが、これだけでは「未見の我の発見」には至らない。教師と生徒のタテの関係をときには、ヨコの関係に転換することがなければ、互いに開放されたつながりにはいきつかないと。

そこで、聖徳学園では、生徒がピア・サポーターの講習を受け、生徒どうしが悩みをカウンセリングする機会もつくっている。これは生徒どうしというフラットな関係にタテの関係も縦横無尽に織り込み、生徒が社会における人間関係を体験する貴重な教育活動。

(学校説明会資料から)

伊藤校長は、学内の人と人のつながりは「個性」の可能性を引き出し、伸ばす拠点であるが、それだけでは井の中の蛙になってしまうのは世の常である。それゆえ、聖徳学園の幼稚園、小学校、中高の教師が連携しながら、個性の生涯という糸のつながりを発見する議論を開始していると。

家庭、友達、クラス、学年、中高、学園全体と「和」のネットワークを広めていく中で「個性」を磨いていくというのは、たしかに21世紀型教育の特徴を言い当てている。しかし、伊藤校長は、それでも、それは学園内のネットワークだから、外にもネットワークを結ぶ教育活動も必須であると語る。

それが、東北大学や東京農工大などの高大連携、時代を超えた歴史探究活動や異文化体験、3か月留学、1年間留学などの幅広いネットワークをつなぐ教育活動につながっているのだ。

(学校説明会資料から)

そして、伊藤校長は、この「和」の精神を普遍化し、バージョンアップしていく知性こそ、教養であり、これは学校側だけが行うのではなく、生徒1人ひとりの「個性」を生み出す学園のつながり全体が教養を身につける活動を6年間継続する教育を行うことであると静かな情熱をこめて説く。

この教養が埋め込まれた聖徳学園の幅広く奥行きの深い「和」のネットワークこそ、SNSがかかえる問題を乗り越える新しい本物のつながりのプロットタイプではあるまいか。

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