英国の国際教育団体「バーキー財団」が創設した「グローバル・ティーチャー賞」の最終候補者10人の中に、工学院大付属中・高校の高橋一也先生が選ばれたは、すでに21会では共有されていますが、いよいよ13日にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、この10人によるパネルディスカッションが行われ、受賞者が決定する日がやってきました。by 本間勇人 私立学校研究家
(バーキー財団は、すでに2月9日の段階で取材にきて、動画を作成。それは世界に発信されています。)
高橋先生のプロフィールや受賞理由については、読売新聞をはじめ多くのメディアが取り上げているのでそちらをぜひご覧いただきたいですが、読売新聞が触れている重要なことについてコメントしておきます。
読売新聞によると、高橋先生は、「慶応大大学院で英文学を学び、英国の大英図書館、ケンブリッジ大で研究を重ね、米ジョージア大で教育理論を学んだ」。教育理論というか学習理論はかなり網羅的で、深く研究されました。MITメディアラボの、learning by makingの流れにあるレゴベースの学びもその1つで、高橋先生のユニークな授業の1つになっています。
さらに、同紙の取材でキャッチされた次の一文は、最も重要。「実社会と連動して学ぶことが必要。世界や社会とつながる拡張性を授業内容に盛り込みたい」。実際に、昨年高校生とインドネシアに同行し、アントレプレノイアーシップを創発するプログラムを実施しています。しかも企業連携というまさに拡張的学習だったのです。
エンゲストロームの理論は、フィンランド、ヨーロッパ、アメリカ、そして世界へと広がり、政治経済、文化、歴史的パースペクティブなどが複合した学習理論で、世界標準になっています。ところが、アクティブラーニングを提唱する我が国の教育行政では、まだまだ浸透していません。
それゆえ、高橋先生の今回のTOP10入りは、日本の教育と世界の教育の違いをはっきりrと映し出した形になります。世界中で「教育ノーベル賞」の話題は盛りあがっているのに、日本では様子をみながら報道されています。なぜ様子をみなければならないのか?それは、日本の教育において、エンゲストローム理論が抜け落ちているからです。
そのような日本の教育の状況の中、2月24日、馳 浩文部科学大臣は「グローバル・ティーチャー賞」の最終候補者10人に選出されたことを極めて重視し、高橋先生と教育について対話したようです。これを機に、日本の教育が、高橋先生のように、幅広い視野で学問的「学びの理論」を研究し、それを実践していけるシステムに再構築されることを期待したいと思います。学問と実践の両立ができる学校システム。最も大きな教育改革となるでしょう!