工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)は、多様な研修を内製化/内省化しています。もちろん、先生方自身、外部の研修でも自己陶冶していますし、NPOなどとの連携プログラムもコーディネートしています。しかし、最終的には、自分たちの力で学校をパワフルにしていく必要性を感じています。
ですから、自分たちでコーチングシステムを生み出し、学んでいこうとしています。授業・テスト・評価の流れをPIL・PBLに転換し、自らつくった思考コードというメタルーブリックでプログラムをつくり、データによって検証していくシステムはかなり進んでいます。プロジェクトチーム→教科チーム→全体研修と浸透を広めています。
しかしながら、最終的にはどんな局面でも、メンバーと協力し、乗り越えていくリーダーシップを発揮しなければなりません。そのため、リーダーシップ研修の内製化も開始したのです。 本間勇人:私立学校研究家
平方校長は、C1英語、PIL・PBL、ICT、思考力テスト、リベラルアーツなど、まずは中学から大改革を進めています。試行錯誤、紆余曲折はあるかもしれませんが、改革項目は中学校全体に広がりました。
したがって、来年から高校にまで広げていきます。しかし、高校は中学の3倍の生徒の数になりますから、たんに教育方法論を改革したからといって、入魂改革は容易ではありません。やはり、最終的には人材です。教師のモチベーションと生徒の未来を拓くリーダーシップこそ重要です。
だからといって、リーダーシップを発揮せよと号令をかけて動くものでもありません。改革のパラドクスは、改革の号令をかけると動かない人材がでてくるというものです。したがって、平方校長は、リーダーシップが教師1人ひとりの心に火がつくような学びのチームを形成しています。
中高から主任クラスを集めて、自分たちでリーダーとは何か?リーダーシップとは何か?どう語るのか?どう動くのか?メンバー一人ひとりの特性をどのように理解していくのか研修しています。
(左から太田先生、田中先生、岡部先生)
プロジェクトチームのリーダーである太田先生、田中先生、加藤先生(加藤先生は、今回は生徒のために海外研修にいって不在でした)が、リーダーシップ研修については、人生の先輩である岡部先生にプログラムを作成してもらい、指導を仰ぐという形式でスタートしました。
岡部先生は、その道の名ファシリテーターで、「映画」を使ったり、Web上のゲームを使ったり、要するにICTを自在に操りながら、何が一体乗り越える壁なのか、明らかにしていく機会(オポチュニティー)を創っていきます。
素材がわかりやすいものなので、互いにストレスなくオープンマインドで議論していく環境が整います。もちろん、参加した先生方は、この研修がリーダーシップ研修であると同時に、自分たちの授業でも活用できるサイトやアプリ、流れなどメタ的に理解しますから、一石二鳥なわけです。
リーダーシップ研修の内製化の何より重要なのは、映画やストーリーのケースを、最終的には自分たち学校の具体的なケースメソッドに落として議論していけることです。外部の研修ではこうはいきません。ですから、プレゼンにも責任を引き受けた真剣なものになります。
edModeを活用して、行うので、アンケートもとりながら、メッセージも共有しながら研修は進みます。簡易エゴグラムの結果も互いに一気に共有しますから、個人のリーダーシップの特徴を理解し合います。そして、とそれがチームになったときの組織的動きにどうつながらぬかも見えてきます。
事実確認をしながら、根本にある問題を共有し、それをどう解決していくのか。創造的問題解決型リーダーシップをトレーニングしているのです。
もちろん、この創造的問題解決型リーダーシップは、生徒も身に着ける大切な使命です。予想がなかなかできない未来にあって、生徒はこのリーダーシップを自分軸として持っていれば、なんとか突破口を見いだせるのではないでしょうか。
それにしても、少年少女のように学ぶ先生方。研修はいつもPIL・PBL型で行われるのですが、この姿はそのままふだんの授業の生徒の姿や表情に重なります。
教師も生徒も共に学ぶ組織が着々と形成されているシーンを見学することができました。