聖徳学園ー新たなICT教育へのチャレンジ始まる

聖徳学園グローバル教育センター長でスクールカウンセラーでもある山名和樹先生が、ICT教育の領域で新しい試みを開始しました。早稲田大学大学院の教職研究科の研究室とのコラボレーションで、TalknoteというSNSを利用した中学2年生向けの公開授業を6月に実施。異なる世代の考え方に触れる体験を通して、情報リテラシーやコミュニケーション能力を高めるICT教育のあり方です。 by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

山名先生が示した授業目的は、次の3つです。

  • 外部とのつながりによる、新たな道徳教育の形
  • SNSの効果的な活用
  • コミュニケーションを考える

現代社会の働き方は、チームでのコラボレーションが重視されつつあります。会社の文化や世代の違いを超えてコミュニケーションをしていくことがますます求められている時代です。FacebookやツイッターといったSNSもまた、自分のメッセージが見ず知らずの人の目に触れてしまうかもしれないという意味で、実は高度なコミュニケーション能力を要求されるツールです。

聖徳学園では、そういう時代に要請されている高度なコミュニケーション力を育てつつ、しかもいきなり荒海に出るという危険性を回避するために、Talknoteというアプリを採用しました。学校外に開かれてはいるものの、一応学校の目を光らせておくこともできるSNSであるというところがポイントです。

そして、異なる世代で、顔も知らない大学院の学生とオンラインで交流することを通して、情報リテラシーやコミュニケーション能力を磨いていこうというわけです。

聖徳学園の中学2年生から大学院の学生に、Talknoteを通してすでに3つの質問が出されていました。

  1. 中学時代に戻ってやり直したいこと
  2. 中学時代に出会った大きなこと
  3. 14歳までに知っておくべきこと

年長の人たちが自分たちの年代を振り返った時にどのように感じるのか。自分が過ごしている「今」が未来からどのように見えるのか。こういうことを知る意味で、年長者による助言は時に有効な手がかりになります。特に中2という学齢は思春期の真っ只中で、自分を見失いがちな年代です。スクールカウンセラーでもある山名先生にとって、そういう問題意識がプログラムに活かされているのでしょう。

この日の授業では、学生がTalknoteを通して返してきた回答をカテゴライズして、それぞれのチームがプレゼンテーションを行うという流れになっていました。

この日、Talknoteでやり取りをした早稲田の学生は別室に待機していて、中継を通して教室の中2生たちの様子を見ていました。中2生の教室でも学生の姿がスクリーン上で中継されており、それまで顔が見えなかった相手がこの日初めて確認できたのです。「あの人が〇〇さんなのかも」と考えることで、どうやら親近感が湧いてきたようです。チームの対話も活発になってくるのがわかります。

ポスタープレゼンテーションでは、自分のチームでプレゼンテーションをするだけでなく、ルーブリックを用いて他のチームの評価もしました。

振り返りは、やはりTalknoteを通して行われました。中2生と学生とが、自分の感じたことをそれぞれ交換し合います。そこで印象的だったのは、顔が見えた後の安心感に言及している生徒や学生の意見が多かったことです。

SNSがコミュニケーションツールとしてこれだけ広がっている中、そのツールをただ禁止したり制限したりするのではなく、どのような特性を持っているのかを考えさせ、活用するための知恵を身につけていこうとする意味で、この授業はとても意義のあるものでした。実践を通して常に新しいことに挑戦する聖徳学園は、ICT教育においても新しい方向性を模索しているように感じられます。

おそらく今後はこうしたSNSを活用した学びをグローバル教育にも結び付けていくことになるのでしょう。年齢の異なる他者から文化が異なる他者へのシフトは、グローバル教育センター長である山名先生にとって、すでに想定済みのことであるように思われます。次の展開が今から楽しみです。

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