聖学院のSTEAM教育 2050年社会も越境する

聖学院のGIC(Global Innovation Class)は教科学習以外にLiberal Arts、STEAM、Immersion、Projectの4つのスペシャル授業が時間割の中に収められています。全日制高校でこのような柔軟なカリキュラムマネジメントを行っているところはレアケースです。
 
 
その中でも、STEAMの時間は週6時間設定しています。聖学院は、行政セクター、民間セクター、学術セクター、非民間セクター、サードセクターなど学校を越境した連携をつくっていますが、このSTEAM教育の連携の多様性とその密度はかなり高いものになっています。したがって、同教育を推進するリーダーである情報の山本周先生(数学の教諭でもある)は、情報の教師であると同時に、学校を越境したSTEAM環境のデザイナーであり、多様な団体をコーディネートするプロデューサーでもあります。
 
実はSTEAMだけではなく、GIC・Project(探究)のゼミ活動の担当もしています。武蔵野美大の新井恒陽さんによる特別授業、貧困vs.起業ゼミとコラボ、(株)ガイアックス スタートアップスタジオ 吉川さんの特別授業、日立産総研ラボと未来の循環型社会を創造する、FAB QUEST体験講座・アイデアをカタチにするなどコーディネーションやプロデュースをしているわけです。
 
特に日立産総研は、京都大学の広井教授と協力して2050年以降のウェルビーイングな社会を予測する壮大なビッグデータを分析しています。文科省の次期学習指導要領にも影響を与えています。生徒の皆さんは、そんな壮大なプロジェクトにいつの間にか結びついていく可能性を得ているのです。
 
さらに、山本周先生は、STEAM教育をはじめGICの教育を熱くかつクールに語るマーケッターでもあります。特に聖学院は、社会課題をポジティブな解決に転換させる教育を積極的にやっていますから、山本先生のマーケッターとしての活動はブランドアクティビズムの手法です。
 
 
もちろん、聖学院には山本周先生のような多彩な能力を有している教師がいっぱいいます。そして、それは生徒も同じです。Fabラボはいつでもオープンになっていて、時間があればそこでハイテクの世界に没入している生徒もいます。
 
STEAM授業というかプロジェクトでは、生徒1人ひとりが自由に語り合いクリエイティブな思考や作業に目を輝かせています。そして無限の価値を生み出すのです。
 
見学した授業は、株式会社スクーミーのCEO塩島氏によるスクーミークラスが実施されていました。山本周先生によると、最終的には社会課題をSTEAMで学んだ科学やアート、テクノロジー、工学、数学の多様な視点と技術を融合して解決するモノづくりとその社会的な価値についてプレゼンするということです。
 
今回のスクーミークラスでは、その出発点として身近な困りごとをセンサーで察知し、解決のレバレッジポイントをセンサーに反応したデータ(瞬時にグラフ化される)から読み解き、推理していく学びのようです。
 
このテクノロジーを活用して、身近なものから社会課題に視点や視野を広げて取り組んでいくという生徒の才能の成長とスキルの発展を交差させたSTEAM授業になっています。ですから、この授業は、同時に新しいタイプのキャリアデザインにもなっているわけです。
 
それにしても生徒の皆さんは、塩島氏が傘立てにセンサーを付けて何をしたいとか、ポットの場合は、歯ブラシの場合はと矢継ぎ早に出してくる質問に、ユニークな回答をどんどん返していました。途中で、仲間どうし回答が矛盾していると指摘する場面もありましたが、塩島氏は、それを悲観的あるいは否定的にとらえるのではなく、それはまた課題を発見したということだよと課題解決の志向へ切り替えるクリエイティビティを生徒と共有していました。
 
自分の身体やメンタル、人間関係などに関係する身近な困りごとに対し、それを解決するIoTを創るにはどうしたらよいのか、多様なセンサーによるイノベーションによってそれを解決するプロトタイプを作成していく全部で10時間のプログラムです。
 
身体とメンタルと人間関係は、たしかに身近なことですが、そこで起こる問題は、実は世界的な問題につながります。実際遠くの国で、身体は傷つき、メンタルは暗闇の中に閉じこもり、人間を信じることができない状況になっているのは、毎日のようにニュースで報道されています。その状況と身近な私たちの状況は比べ物にならないかもしれませんが、相似形であることに気づく瞬間が聖学院のSTEAM教育の凄いところです。
 
この気づきは、おそらくOnly One for Othersという聖学院魂が生徒1人ひとりのアイデンティティになっているからでもありましょう。この世界の痛みを引き受けるマインドから生まれるアイデアを形にして、社会貢献への価値を生み出していく生徒1人ひとりの世界を創出する環境を山本周先生はクリエイトしています。
 
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