富士見丘 思考を相対化する「思考力」(2)
「新傾向問題」は、与えられたデータに自分の持っている知識・体験を結びつけ新しい考え方を生み出す思考の過程を大切にしている。
「新傾向問題」は、与えられたデータに自分の持っている知識・体験を結びつけ新しい考え方を生み出す思考の過程を大切にしている。
センター試験が廃止されるかもしれない。知識偏重1点刻みからの脱却が大きな理由。大学入試の改革がいよいよ実現するか。そんな話題が、今日、グローバル人材育成の教育政策と並行して喧しい。
しかし、もう10年以上も前に、富士見丘は、知識偏重・偏差値重視入試とは違う入試改革を果たしていた。そして、生徒の学力を飛躍的に伸ばし、才能を開花してきた。教務部長板垣先生、教頭大島先生に聞いた。by 本間勇人:私立学校研究家
(左から、教務部長板垣先生、教頭大島先生)
富士見丘は、1週間の間に2つの貴重な対話ワークショップを行った。1つは、国際理解教育・国際交流担当アドバイザーの吉田成利先生の『海外留学への道』と題する講演。もう1つは、建築家関本竜太氏(リオタデザイン代表取締役・一級建築士・日本大学講師)による講演『町の中のデザイン』。
どちらも、テーマは違っているが、対話型の講演であるし、その対話のシークエンスが似ている。体験から始まって重要な気づきに昇華し、最後に興味と関心を喚起された生徒が質問に講師を囲むのである。富士見丘の知の形勢過程を追ってみた。(by 本間勇人:私立学校研究家)
昨年末、オーストラリアとイギリスに3ヶ月留学体験してきた生徒が、その体験についてメディアの取材を受けているところに居合わせた。昨年会った時から半年ちょっとしか経っていなかったが、その成長ぶりは確かであった。
富士見丘のグローバル教育の基礎は人間力育成にあるのだが、人間力の育成の奥義は通常授業にあった。
-―自主研究「5×2」の教育システムは、生徒1人ひとりが、自分のテーマを深めていく過程で、内から外に自己開示してゆき、外のネットワークとつながっていくということはわかりました。しかし、それは「5×2」の「2」の部分のお話で、「5」の部分である通常授業はやはり教える授業なのでしょうか。そうすると、他の学校でもよく語られるように、月曜日から金曜日までは受験指導で、土曜日は教養教育というわりきった考え方という理解でよいのでしょうか。
白鶯先生:教える授業であるというのは、そうですが、受験指導をやっているというのは違いますね。そのような割り切り方だと、「5×2」という表現である必要がない。「5+2」でよいわけです。しかし、そうではないのです。
学校を中心とする学びの環境の中で、生徒1人ひとりがそれぞれの好奇心や関心を抱く。それを学校内で学ぶだけではなく、外にも目を向け、あるときは外のネットワークとコラボして、新しい発見をし、課題を解決する活動をしていく。その活動がやがては進路やライフスタイルにも影響を与えていく。生徒会のプロトタイプが、学内全体に広がっている実感が伝わってきた。
富士見丘は、「知識のある人」「信念のある人」「思いやりのある人」「バランスのとれた人」「探究する人」「考える人」「コミュニケーションができる人」「心を開く人」「挑戦する人」「振り返りができる人」総体としての人間力を、グローバル教育の基礎としている。その教育システムについて対話は深まった。
富士見丘中学校高等学校(以降「富士見丘」)の破格なグローバル教育の評判は、かなり広まってきている。帰国生からの問い合わせも多い。ロンドン大学キングズカレッジとの提携により、同大学のジョーンズ先生からは、富士見丘学園のグローバル教育の基礎がしっかりあるから、進学してから大いに探究し才能を伸ばしていけるだろうというメッセージが届いてもいる。
この富士見丘のグローバル教育の基礎は、ハイレベルな英語教育のみならず、グローバル社会が必要とする人間力も育成するところに特徴がある。グローバル教育の根っこについて、教頭大島則男先生と副教頭白鶯訓彦先生に聞いた。(by 本間勇人:私立学校研究家)
左から 大島教頭、白鶯副教頭
富士見丘学園の教師のプレゼンは、落ち着いていて、自信が内側から伝わってくる謙虚な印象を与えるものだった。品性という表現がぴったりであるが、同時に爽やかな雰囲気もあり、質感という言葉が思い浮かんだ。
■自己認識の構造
大島教頭のねらいは、中1から私とは何者であるかの回答を探すことではない。それはこれからいろいろな「体験」をし、「海外研修」で多様性を実感し、「自主研究5×2」を通して、見つけていくこと、いやサタデープログラム 『5×2セレクション~知の探求2013~』で、卒業生のプレゼンに耳を傾むけていて思ったのだが、自分の核はすでにあるというところから出発していた。
■ダブルクエスチョン
3つの対話は、単純にマズールに比べ、量が多いからパワフルだというわけではない。3つの角度から対話することができるから、複眼思考をせざるを得ないという意味でパワフルなのである。しかし、本当は問い自体がパワフルなのである。
たとえば、今回のテーマは「わたしは誰?」なのであるが、これはもちろん言うまでもなく難問であるが、内容の難しさと、そもそも「わたしは誰?」というの問いはどういう諸関係をそこに立ち上がらせるのかというもう一つ問いが隠されている。いわば、ダブルクエスチョンなのである。
富士見丘中学校高等学校(以降富士見丘学園)では、大胆かつ多様な学びのプログラムを実施している。そのうち「中学生のための哲学教室」と「自主探究5×2」という探究学習のプログラムは、それぞれ21会校が共通してイメージしているPIL型授業(Peer Instruction Lecture)、PBL型学び(Project Based Learning)のカテゴリーに入るのだが、同時に、そのカテゴリーをはみ出すほどパワフルである。
今回は「中学生のための哲学教室」を紹介したい。同学園の教頭大島先生と桜丘の副校長品田先生によるコラボスタイルの授業でもある。(by 本間勇人:私立学校研究家)
※PIL(Peer Instruction Lecture)型講義は、講義に対話を導入するタイプ。PBL(Project based Learning)の学びは、課題発見から問題解決までコラボレーションしながら探求するタイプ。
10月25日第5回21会カンファレンスでは、保護者向けの「教育セミナー」と受験生(小学校5・6年生対象)のための「思考力ワークショップ」を同時開催します。2020年大学入試改革による新しい大学入試の詳しいことは、まだまだ文科省及びその諮問機関やワーキンググループで議論されていますが、はっきりしていることは、SGU(スーパーグローバル大学)などの個別入試では、「思考力」を問う大型の問題が出題されるということ、また論文型試験になるということです。
ですから、中高のカリキュラムも「思考力」を養うカリキュラムイノベーションが行われようとしています。その最先端を走っているのが21会校です。すでに入試問題は学校の顔ですから、中学入試でも「思考力テスト」や「思考力型問題」を出題しています。2016年入試は、多くの私立学校がその方向で動いています。
(10月25日は、5つの思考力ワークショップを体験。ワークシートに考えた痕跡をどんどん書き込みましょう)
実際の入試問題に3つの求める能力が埋め込まれている。
「新傾向問題」は、与えられたデータに自分の持っている知識・体験を結びつけ新しい考え方を生み出す思考の過程を大切にしている。
センター試験が廃止されるかもしれない。知識偏重1点刻みからの脱却が大きな理由。大学入試の改革がいよいよ実現するか。そんな話題が、今日、グローバル人材育成の教育政策と並行して喧しい。
しかし、もう10年以上も前に、富士見丘は、知識偏重・偏差値重視入試とは違う入試改革を果たしていた。そして、生徒の学力を飛躍的に伸ばし、才能を開花してきた。教務部長板垣先生、教頭大島先生に聞いた。by 本間勇人:私立学校研究家
(左から、教務部長板垣先生、教頭大島先生)
佼成学園女子に入学したから今の私が有る
「成人を祝う会」に、学芸大学2年在学中の宮本真奈さんが参加していた。特進留学コースで学び、ニュージーランド留学も体験した。そして高3の時に英検1級に合格し、将来英語の教員を目指している。
教育実習も母校にお世話になる予定だという。英語の佼成学園女子の代表的なロールモデルであると、自身も江川教頭も思っており、卒業してもこうして佼成学園女子の仲間として活躍したいという。
2014年1月13日(月)、成人の日。この日、佼成学園女子では、平成23年度卒表生のために「成人を祝う会」を催した。思春期教育である中高のキャリア教育、就活のためのキャリアガイダンスは、現代社会でいつも話題になるが、成人を迎える期間のキャリア教育は見過ごされがち。
特に今の大学生は「さとり世代」と揶揄されるばかりで、中高と社会人のギャップをブリッジするプログラムは積極的につくられていない。そのミッシングリンクをつなぐ新しいキャリア教育の先進校が佼成学園女子である。「成人を祝う会」の第一部を取材した。(by 本間勇人:私立学校研究家)
キャリアガイダンスのものの見方・考え方の内的連関
キャリアガイダンスの緻密なデザイン