八雲学園 新しいステージ“Inquiring Minds”(1)

2014年中学入試の手続き終了直後、榑松史人先生(理事長・校長付 英語特別委員長)のインタビューができた。新中1生を迎える準備ができるや、新しい戦略が稼働する。八雲らしい俊敏な駆動力である。

榑松先生は、中学入試の準備に八雲の先生方が一丸となって取り組んでいる時に、新中1生を迎えるための新しい教育ステージの準備のために単身渡米した。1週間という短期間にカリフォルニア州からニューヨークまで、姉妹校ケイトスクールをはじめ、高等学校や大学でタイトなミーティングをこなしてきた。

そして幾つも手ごたえを感じ、八雲学園の教育の新しいステージを発見。全貌は試行錯誤しながら、組み立てていくということであるが、その設計図の一端を聞くことができた。   by 本間勇人:私立学校研究家

姉妹校ケイトスクールとの新たな協働作業

八雲学園は、中3のときには、全員がサンタバーバラにある八雲レジデンスを拠点に語学研修・異文化交流の学びを行う。そのときに、ケイトスクールと交流するプログラムがある。また高1のときに、希望者はケイトスクールで学ぶプログラムがある。

これらのプログラムは、単独のプログラムではなく、イングリッシュパフォーマンス、英語祭、イングリッシュファンフェアなどの行事と英語の授業がすべてが循環するようにつながっている。

そして、ケイトスクールは八雲学園からウェルカムの精神や欧米の「動」の活力とは違う「静」の心性を学び、八雲学園はケイトスクールから欧米的なオープンマインドと自分の興味を掘り下げる構えを学ぶ。互いに世界観を交換し、豊かな人間力をつくってきた。

その英語教育が、イングリッシュパフォーマンスなどの行事で成果として表現されてきた。そしてそれが、社会や市場で支持されてきた。しかし、近藤校長、榑松先生は、グローバルな人材が必要とされている今日、国内の市場で支持されるだけでなく、さらに広い市場で支持されるかどうかに挑戦する時だと確信を抱いているという。

榑松先生:15年以上のケイトスクールとの語学研修やスクールライフの交流は、今や固い絆になっている。しかし、これですべてではないのです。実はケイトスクールは、Round Squareという国際機関で、 世界各国の高校と連携して、ボランティア活動や創造的作業、異文化交流を行っています。

グローバルシチズンのリーダーシップは、このグローバル規模の協働体験を通して、はじめて培われるというわけです。

とするならば、姉妹校ケイトスクールのその活動に八雲学園も学べないかと気づいたのです。

菅原先生:その通りです。その気づきがどうして生まれたのか?プランだけなら、ケイトスクールがRound Squareに参加した2007年に、八雲学園もいっしょに活動すればよかったのですが、そのときはその選択判断はしなかったのです。

すでに毎年1年間留学をしている生徒もいますから、そういう幾人かの生徒を集めて参加させることはできたはずですが、入学してもらった以上、全員がある一定水準の英語力やリーダーシップを発揮できる力を育てることが最優先だったのです。

その底上げが、八雲全体で到達したのではないかという手ごたえを、昨年感じたわけです。エール大学の学生との精神的で好奇心に満ちた交流、高校生有志による英語のドラマパフォーマンスなどの活動が、昨年新しく生まれました。

自分たちの興味と関心を、世界観として人々とシェアできるように、探求していく姿が、学園全体に定着したのです。

まずは知識やスキルを全体で定着できるレベルまでもっていこう、そして同時に知識やスキルが、ウェルカムの精神やダンスなどの表現に活用できるように総合力を育成しようとしてきたわけです。

榑松先生:そうだと思います。3年前に八雲に赴任して間もないから、私はまだ岡目八目で客観的に見ていると思うのだが、たしかに、機が熟した感じですね。

近藤校長の「感性教育」。つまり、自分の言葉や行動が、人の心を動かし、社会を動かすような、共感を生み出す「感性」を身につける次のステージに来たと思う。

そして、この人の心を動かし、社会を動かす「感性」は、価値観も文化も違う多様な国の生徒とディスカッションするところから始まると思っています。

ですから、いきなりRound Squareに仲間入りしようとせずに、ケイトスクールの生徒とまずはその「感性教育」を協働していこうと思っています。

(ケイトスクールは1クラス12人ほどのサイズで、ディスカッション授業やプロジェクト型学習が日常化している)

ケイトスクールは、“Inquiring Minds”を大切にしています。リサーチするには自分で問いを見つけなければならない。それには好奇心や興味・関心をもつことが出発点。ここは八雲学園の生徒はすでに準備ができています。

ですから、たとえば、サンタバーバラの八雲レジンデンスで、ケイトスクールの生徒も宿泊しながら、ディスカッションをする。すると、彼らは世界の問題について深くディスカッションするから、八雲の生徒もインスパイア―することになるでしょう。

 

 

 

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