聖徳学園 体験と授業をつなぐイノベーション(2)

山名先生:授業の中で、「体験」を擬似的に導入するには、やはりPBLやアクティブラーニングの手法が有効です。さらに、その手法を電子黒板やiPadなどのICTを使って、webに結びつけると「体験」と同じ質感の気づきが生まれる可能性が高くなります。

先日試みた授業では、ジグソー法とディスカッションというアクティブラーニングの手法とタブレット端末でtwitterを活用して行いました。テーマは「思春期」でした。まずグループに分けて、さらにメンバーのリサーチの役割を決めました。他のグループのメンバーと同じ役割を担った生徒が、twitter上で議論しました。役割の違いというのは議論する小テーマが違うわけですね。

これがジグソー法なんです。1つのグループがある国です。ジグソー法で、他の国の人々と議論して、そこでいろいろな考え方や感じ方に気づいた生徒が自分のグループに戻ってきて報告し合うわけです。

他国での体験をしてきた生徒が帰国して情報交換をする体験と構造は同じです。この授業によって、同じ日本人どうしでも、かくも多様なのかというのが改めてわかりました。

伊藤先生:それが実際に海外研修で体験するとどうなるのか。もっと多様な考え方や感じ方に直面するでしょう。そして、それがその国の人々の生活の背景が前提にあるといういことを見たり聞いたり触れたりして奥行きが実感できる。

そのためには、授業の中で、話し合うトレーニングをしておくことは重要なのです。だいいち、はじめからだれでも自分から話せるというわけではないのです。自分から話すというのは、生徒の中にはかなり勇気がいるものです。

山名先生:その通りですね。自分が話すことをせき止めている目にみえない壁はみなもっています。それをぶち破るには、ぶち破れと促してもなかなか破れない。でもtwitterなら、できるという生徒もいます。しかも短く書いていきますから、かなり自分の考えが書きながら明晰になります。そうすると、自分がしっかり持てるわけです。

伊藤先生:自分が持てると、壁は崩れます。自分という基準があれば、議論もできるようになります。

山名先生:まずは簡単なことでも恥ずかしがらないで質問できるようになることは、本当に大きな第一歩です。この一歩が踏み出せれば、体験の中で、直面した事象や現象を自分なりに解釈して、発信できるようになっていきます。

それにしっかりした自分というのも成長するものです。体験の中でその自分でもかなわないと尊敬するロールモデルに出逢う機会もあります。私自身、米国の大学に留学していましたから、そういうロールモデルに出逢いました。米国のできるやつというのは、出来るからこそさらに学ぶわけです。今でもこんなにできるのに、さらに学んだらもうかなわないというロールモデルに出逢いました。

今の私の行動の原動力は、そのロールモデルです。

伊藤先生:もちろん、そのロールモデルと全く同じように生きようということではないのです。

山名先生:その通りです。たとえば、ジョブスのようなカリスマをロールモデルにしても、自分はジョブスにはなれないでしょうが、ジョブスをロールモデルに生きていけば。自分の個性は引き出せるのではないかなと思います。

伊藤先生:体験や議論は、出会い、つまり「つながり」をつくりです。「つながり」にはチームやグループ、集団が背景にありますが、聖徳学園の授業は個の力を発揮させるために集団の力があると思います。

山名先生:多様性を受け入れ、つながりをつくっていく。その中でロールモデルに出逢い、しっかりとした自分を持っていく。これはとても大切な子どもたちの成長の過程ですが。そうすると、多様性のインパクトが強力であればあるほど、成長は加速します。大きくなります。さらにしっかりした自分を持てるようになるのです。それこそ砂漠に1人置いていかれてもなんとかできるぐらいの自信を持てるようになります。

 

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