東京女子学園 突き抜ける教師陣

東京女子学園には、地球思考委員会というプロジェクトチームがある。生徒1人ひとりの才能をいっしょに見出し、自分の言動即世界という地球共生に貢献するマインドを形成する教育活動やシステムのプロトタイプを構築していくチーム。

それを学内全体で授業で試行錯誤しながら、東京女子学園モデルとして強化していく。2013年から、PBLやC1英語、ICTの有機的な教育システムの組み立てを開始し、その全貌が明らかになり、すでに実践的な智慧として学内に広がっている。その地球思考委員会のミーティングに私も参加した。by 本間勇人 私立学校研究家

昨年地球思考員会が結成されて以来、ときどき参加する機会を得たが、毎回毎回進化の速度が加速しているのに驚きを感じてきた。しかし、今回の驚きは今までのものとはスケールが違った。

テーマは、「地球思考コード」が学内で浸透し始めてきたので、PBLやC1英語、ICTの有機的な教育システムをより効果的にするために、どのように活用できるかという実践的な智慧を出し合うことだった。すでに「地球思考コード」は出来上がり、授業や教育活動で使われ始めているという前提で、ミーティングが行われていたのだ。昨年の今頃は、「思考コード」とは何か?から議論していたはず。実に速い。

しかも、教育システム全体を再構築するために、まずは東京女子学園の教育ビジョンは何から何へ変わったのか、意識の共有からはじまったのだ。このようなミーティングは、すぐに何をするのか、結構「点」の話が多く、収拾がつかなくなるケースが多い。

毎回がブレストで、教育システムの全体のビッグ・ピクチャーが描かれないまま、道具立ての話ばかりが進む。結果、あれもこれもやることになり、引き算の美学はどこかにいってしまう。

ところが、このチームは違う。ロイロノートスクールを使いながら、まずは個人で自分の考えを書き、瞬時に共有し、今度はチームに分かれて、それをインテグレイトしていく。それもロイロノートスクールで、シェアしながら話し合う。

かつてはポストイットでやっていたことを、タブレット上で解決。自分たちの考えたコンテンツや話し合った痕跡が、そのままポートフォリオとしてクラウド上に残るから、議事録を書く手間も省ける。個人とインテグレイトという両者のアウフヘーベンの連続が、効率的かつ創造的な議論を進めていく。

私は、やはり4月から実際に成績表に活用している首都圏模試センターの「思考コード」の情報を提供した。すでに模擬試験という場で活用されている先行事例と教育の現場で活用されている事例を比較することで、共通点や相違点が明快になるからだ。

事前にパワーポイントの資料を送っておいたので、先生方は全員、タブレットにダウンロードしてミーティングに臨んでいた。ペーパーレスで、記録はポートフォリオとして蓄積されていく理想的なミーティングになっていたのだ。

「地球思考コード」と「首都圏模試センターの思考コード」の共通点としては、教師も生徒も学び方の情報を共有できるとすぐにコメントがでてきたし、今後の大学入試改革に求められている学習履歴を作成する際のポートフォリオとしての活用が可能であるという点は「地球思考コード」に優位性があるかもしれないという議論も盛り上がった。

実際に、早稲田大学のアドミッションオフィスのサイトに入り、来年開始する予定の「新思考入試」の情報やサンプル問題も、その場でアクセスしながら、具体的に議論するシーンもあった。実に興味深かったのは、そのサンプル問題の問いを、「地球思考コード」に一瞬にして分類して話し合っていたシーンだ。

これは、教師も生徒も共有しているから、今後生徒は、この問題は易しいか難しいかではなく、どのような思考のスキルを使うのか複合するのか、論理の次元でとどまるのか、創造的な智慧を働かすのかメタ認知を発動しながら思考していくことができる。

この思考コードで、知識理解から論理的×批判的×創造的思考に飛ぶことが、どんなに歴史的にもすごい事態なのか、それゆえ、未だに多くの学校が「知識・理解」の次元で足踏みをしているということが了解できたわけであるが、そのことについて書かれているオットー・ラスキーの英語の論文を、サイトでこれまたすぐに検索して、話し始めた。

英語科の先生方がすぐに要約しながら、議論の参考情報として活用したのだが、そのようなシーンも今までには全くなかった光景だった。

この地球思考委員会のミーティング自体が、PBL型授業であり、C1英語教育であり、ICT教育であり、リベラルアーツのマインドに満ちた対話だった。今や、全校生徒全員がタブレットを所有して授業に臨んでいる。このミーティングは、普段の授業のプロトタイプだったということなのだ。つまり、授業の風景も同様なのである。

この会議で話された有益なプランについては、まだ企業秘密の段階なので、ここで明かすことはできないが、説明会が行われるたびに、段階的に公開されていくことになろう。突き抜ける女子校には、突出した教師陣がたしかに存在するのである。

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