三田国際は魔法学校。 今まで誰も見たことのない一条校。

9月29日(土)、三田国際学園中学校・高等学校(以降「三田国際」と表記)は、Open Dayを開催しました。関東圏の中高一貫校で唯一のApple Distinguished School(全世界400校)として、尖ったICTの活用をした授業を、全国の教員対象に公開したのです。

同学園は、iTunesUというバーチャルとリアルな学びの場を統合するシステムを活用して、創造的な思考力を養う授業を、すべての教科で、すべての教師が、すべての生徒が展開しています。その創意工夫に満ちた多様な授業が全開されました。

全国から参加した教師は、みなその様子に驚愕。IPadやMacBookを手に、表やグラフやエッセイを作成しながらディスカッションしている様子は、もはや今まで見たことがない学校だったからです。
 

プログラミングで、スフィロは、スターウォーズで登場するドロイドよろしく動いていました。紫の閃光を放ちながら動かしている様子は、あたかも魔法を使っているかのようでした。分科会で、ディスカッションも交えてのリフレクションに、自分たちはどうすればできるのか、自分たちももしかしたらできるのではないかというGrowth Mindsetされていく姿は、三田国際に魅力を感じて入学してくる生徒の様子に重なっていたのです。by 本間勇人 私立学校研究家

一般に、授業というのは、情報xをインプットして、知識として定着させてxを再生産するものです。しかし、三田国際学園では、創造生産するのが授業です。情報xをインプットすると、yという新しいもが創造されるのです。しかし、大事なことは、x→xではなくてx→yということだけではなく、むしろその→のプロセスを発見したり、自分で創ったりすることなのです。

たとえば、プログラミングによって、スフィロの回転運動を操作していくのですが、その操作を憶えるテクニカルな問題以上に重要なのは、プログラミングそのものを学ぶ創造的なマインドセットなのです。

つまり、y=f(x)の関数がどうなっているを解明する思考力、さらに関数そのものを自分で創る思考力が最も重要なのです。興味あるものの情報をリサーチしてインプットして、自分のものの見方や考え方、感じ方をカタチにするとき、その過程の仕掛け=関数関係はどうなったいるのか、どうすればよいのかがわからなければ、人から与えられた道具をただ使っているだけで、自分で創造的に問題を解決することはできないのです。

近代科学を開いたルネサンスにおいて、錬金術師は、まさに自分で方程式を解明し創っていきました。自然にあふれる情報を、どうやって人間の文明や文化に活用できるのか、その関数関係=方程式を考案していきました。

あのニュートンも、今でこそ近代科学の父の1人として称されますが、当時は錬金術師というイメージの方が強かったでしょう。すなわち、三田国際は、あの落合陽一氏ではないですが、現代の魔法使いをトレーニングする学校だと言っても過言はないでしょう。

連想とは何か、どんな仕掛けで連想は生まれるのかという議論を、インプット→ブラックスボックス→アウトプットという流れでしているクラスがありました。しばらくすると、教師が自らつくったアプリだと思いますが、任意の数字をどんどん入力してある数字が出てくる操作をiPadでやりながら、今度はブラックボックス部分の方程式について議論していました。

数学の授業だったのです。連想の過程も、計算の過程も、対象としては、あるいは素材としては違いますが、論理的な過程があることに代わりはないという、数学的思考力=アルゴリズム=関数関係を生み出す授業だったのです。

なるほど、プログラミング、連想過程、方程式というのは、教科が違ったり、対象や素材が違っても、y=f(x)という知識再生産ではなく、知識創造生産を行っていたわけで、それができるのは、関数関係を見出す力、創り出す力が必要なわけです。

インターナショナルクラスでは、SGDsについて、世界に広がる多様な問題を改善する方法を英語で議論し、考えていました。グローバルイシューの多様な情報をインプットし、幸せになるとはどういうことかという解決目標をアウトプットすることができても、その目標達成の実現の仕掛け=方程式をどう作るのかということに力点が置かれていました。

あらゆるものを関数関係という発想で、解決しようとした数学者や哲学者は、たとえばバートランド・ラッセルやエルンスト・カッシーラーのように、たくさんいますが、いまだにその知恵の輪は解けていません。

三田国際という現代の魔法学校ならそれはできるかもしれません。

理科の授業では、弾む物体を弾まないようにするにはどうしたらよいかというトリガークエスチョンを、実験によって検証していました。同じ球の容器の中に、条件を変えて詰め物をして、実験していきます。その姿を動画で撮り、自分たちの仮説の検証をプレゼンする時のモニタリング用の動画も作成していました。

この授業も多様な条件の違う素材を入力して、結果が違ってくるのは、なぜか、y=f(x)を解き明かしていたわけです。

美術の授業では、ある音楽をインプットしたときに、どんなイメージがアウトプットされるか絵で表現していました。しかし、それで終わるのではなく、その絵をアプリに取り込んで、音楽や動作を交えて、音楽を聞いたときにイメージされる感情や発想、絵画などの表現がどのようにでてくるのか動画にまでしていたのです。

MST(メディカルサイエンステクノロジー)クラスの英語の授業は、各国の情報をリサーチして、チーム内で、それぞれ自分の考えをアウトプットし、シェアしていました。この授業がMSTの特徴をどのように反映しているのか、生徒に訪ねてみると、メンバーのいろいろな考え方の過程をしることで、国の特徴を捉える方法が見えてくるし、特色を表現する際、表やグラフなど数学的な発想のものを使いますからと明快に解答が返ってきたのです。

実は、どのクラスでも尋ねてみたのですが、同じように俊敏な反応がかえってきます。いったいなぜか?それはいつでもどこでも、iTunesUにアクセスすれば、自分は今何を何のためにどうやって学んでいるのかシラバスがはっきりしているし、eポートフォリオでリフレクション過程がみえてくるからです。

三田国際のメタルーブリックは、シンプルですが、それがゆえに、教科ごと単元ごとに具体的なルーブリックが同じ構造で多様に展開しています。拡散と収束のシステムができあがています。しかも、教師も生徒も共有しているのです。そして、それが、トリガークエスチョンのインプット、その解決策のアウトプット。そしてその過程としてのPBLの学びという授業にきっちり反映しています。つまり、授業そのものが、y=f(x)になっているのです。

休み時間に実験室の近くを歩いていくと、MSTクラスの生徒が、実験をしていました。何をやっているのか尋ねると、校内や近くの公園などから採集してきた植物の遺伝子を分析して、将来抗生物質などのように役立つ遺伝子を身近なところから見つけられないか研究しているということでした。

この遺伝子の研究方法について、丁寧に解説してくれましたが、あまりに専門的すぎて、にわかにわかりませんでした。しかし、彼らがすでに学部レベル以上の研究をしていることはわかりました。アメリカのAP(アドバンストプレイスメント)プログラム級のカリキュラムがMSTクラスで行われていると大橋清貫学園長には聞いてはいましたが、なるほどこれは凄いと実感できました。

OPEN DAYの最終プログラムは、参加した教員が興味をもった授業のリフレクションのための分科会に参加するものでした。その中で、教頭田中潤先生は、このようなiTunesUをはじめとするICTを活用して、すべての教師がすべての生徒とまったく新しい授業を創っていくことはいかにして可能かについて、参加者と議論しシェアしていました。

魔法学校の授業やカリキュラムができる背景には、組織マネジメント論が存在し、それが学内全体で共有されていなければならないのですが、そのシェアの方法もまた、y=f(x)を創り出すことだったのです。点としてのxやyを作るだけでは、新しい学びの文化資本はできません。文化となるには、持続可能性がなければなりません。

教師一人ひとりの力を養うだけではなく、チームとして共有して活用してルーチンになることが大切です。しかし、その道のりは結構いばらの道です。クラッシュする場合もあります。動かざるごと山のごとしの場合もあります。

改革がうまくいく方法について、参加者が額を集めて考え対話していました。田中先生は、そこからまた新しいアイデアを思い付いたようでした。いずれ、それは公表されるでしょう。

 

 

 

 

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