東京女子学園 梅香祭 創造的才能の発揮(1)

今年、東京女子学園は、創立110周年を迎えた。1903年(明治36年)東京府内で高等女学校として認定第一号の学校。女学生の系譜のルーツである。今年の文化祭「梅香祭」は、21世紀型女学生にふさわしいクリエイティビティを解き放った。

しかも、東京女子学園流儀の創造を生み出すシステムも随所に見える化。生徒自身が創造の方法(学ぶ力・学ぼうとする力)を共有していた。その方法を探った。 by 本間勇人:私立学校研究家/永田修介(東京理科大学1年):リサーチャー

創造性の系譜

今回の「梅香祭」のポスターは、他校の生徒から作家はだれか問い合わせが多かった。このイラストデザインは、高2の在校生。梅の花の放つ光の香りに包まれている。未来を照らすと同時に、東京女子学園生の内なる魂を解き放つパワーを象徴している。この内なる魂はどこから来るのか、またそれをきっちり表現するスキルはいかにして可能か。ポスターが誘う問いかけが心地よい。

しかし、その謎はすぐに解けた。創立110周年であることもあって、真っ先に「史料室」に行ってみた。すると、そこには初代校長棚橋絢子先生を中心とした東京女子学園の歴史資料が展示されていた。そして、絢子先生は、学校経営者であると同時に、歌人であった。なるほど、創設当初から、女性リーダーがすでに創造的才能者だったのだ。

しかも、これは当時のの女学生の特色でもある。なぜなら、絢子先生と親交があった同時代人は与謝野晶子である。源氏物語以降のなでしこの魂を近代的に表現する女学生の系譜が、東京女子学園から花開いたのだ。

それがさらにはっきりしたのは、歴史部の部屋で東京女子学園「歴女」たちから説明をうけたときだった。

東京女子学園も、関東大震災の大きなダメージを乗り越えた学校の1つだが、そのときの再生の象徴が「時の鐘」。110年の歴史を探求する出発点として、「歴女」たちは、「時の鐘」の銘文の拓本を行った。実習のトレーニングを積みながら、拓本する行為は、110年の歴史を自分たちが再現するという意志の表れだっただろう。そして、そこからいろいろな発見があった。

 

「大正評判女番付」もその1つ。当時活躍した女性の財界人、教育家、芸術家が並んでいる。絢子先生も名を連ねているが、この番付の主催者が勧進元の1人与謝野晶子である。「歴女」の1人が、番付表に載っている当時の女学校の校長先生方を紹介してくれた。

ポスター→史料室→歴史部展示とたどりながら、今回の「梅香祭」の女子高生とその内なる魂のルーツは、みだれ髪に象徴される源氏物語以来の日本の女性の魂に由来しているのではないか、その近代化を絢子先生が実現し、いま在校生が再び時の鐘の響きにのって、21世紀に進化させようとしているのではないかと歴史のロマンを感じた瞬間だった。

東京女子学園のクリエイティビティの構造は「女学生の魂=創造性×近代化された日本の女性のセンス」なのではないだろうか。また、ポスターのイラストデザインにしても、歴史部の拓本実習にしても、MITメディアラボが21世紀型学習として重視しているlearning by makingという学び方がすでに体現されているところに、東京女子学園のクリエイティビティの源泉があるのではないか。その思いは、梅香祭を巡りながら確信に変わっていくのだった。

 

 

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