Created on November 22, 2021
静岡聖光学院は、21世紀型教育を掲げて以来、STEAMやPBL授業を全面的に推進し、あっという間に21世紀型教育のトップランナーとして認められるまでになりました。さらに、英国イートン校やハロウ校などの名門パブリックスクールとの交流をきっかけとして、静岡県や首都圏といった枠組みを飛び越えた、世界にダイレクトにつながる学校へとその在り方を変貌させました。もともとカトリックという、世界と価値観を共にする基盤があったわけですから、むしろ時代の変化とともに私たちのメガネが静岡聖光本来の姿をようやく捉えられるように進化したと言った方が良いのかもしれません。by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家
静岡聖光学院のPBL授業は、教室を飛び越え、自然やICTを駆使して生徒自らが仮説を立てながら進みます。この日に見せていただいた中1理科の授業では、「光」について学習しているところでした。光の性質というと「光」そのものに普遍的な性質が備わっているかのように捉えてしまいがちですが、榊原先生の授業では、人間と他の動物とでは見えている世界が異なる可能性に触れながら、「見える」という人間の知覚が、三原色のセロハンを使うだけで見えなくなってしまうこと、そしてそれを再び見えるようにするためにどのような方法があり得るのかを、隠されたメッセージを読み取るというゲームにして感得させるという、よく練られた内容の授業でした。
バルコニーに出て、太陽光を利用してメッセージを読み取ろうとする生徒もいれば、iPadのアプリを利用して工夫する生徒もいたり、各自が思い思いに試行錯誤をしていきます。なぜ見えるはずのものが見えないのか、その疑問を解決するためにアクション(実験・リサーチ・ディスカッションetc)を起こす、これが学びのエネルギーとなっているのです。ここでの仮説は、次の段階ではより確固とした推論や論証となって世界を理解する知となっていくのでしょう。
英語の授業では、静岡聖光学院の魅力を英語で伝えるプロモーションビデオの撮影をしていました。各自が自分が紹介したい魅力的な場所について、その紹介文を英語で書き、それを動画にまとめていくのです。ネイティブ英語教員は、英文の内容や発音などでもちろんサポートはしますが、どの場所をどのように紹介するかは生徒が自ら考えていく必要があります。また出来上がった動画はアメリカの高校に送られるということで、生徒は皆真剣で、撮影時はかなり緊張をしている様子でした。動画を見てもらうにせよ、プレゼンテーションをするにせよ、あるいは展示(exhibition)にしても、最終的なアウトプットを誰かに見てもらうということでPBLはその学びの質が高まっていきます。
星野明宏校長先生と副教頭の田代正樹先生は、校内の学びがほぼPBLとして定着していることに自信を深めていました。お二人の話に耳を傾けていると世界スタンダードで考えており、すでに日本の枠組みを超越していることが明らかです。
2年前に公表したA-レベルの導入は、GCSEにまで対象年齢を下げることで、海外大学進学希望者や海外帰国生に強烈にアピールする学びの機会として実用段階に入ったということです。さらにAレベルを推進する上で重要な海外ネットワークにも接続、まさに「世界の学校」として不動のポジションを得たと言えるでしょう。
星野校長は、このような自校の成長や成功に満足することなく、より高みを目指す上で他所の学校や組織に積極的に関わっていきたいと語っていました。
今後の静岡聖光学院の躍進にますます期待がかかります。