第1回 21会Webソクラテスセミナー「21世紀型学習をめぐって」(4)

知のネットワークを形成するテクニックとは?

菅原先生:大島先生の知のネットワークのイメージで、牧畜という結節点で、プレーリーやウマ、ウシなどは収束していますが、プレーリードッグやモグラはそこには結びつかない。でも、プレーリーとプレーリードッグとドッグは結びついている。いったい何を示しているのですか。

大島先生:要するにカテゴライズしているということです。

有山先生:カテゴライズというのは、分類と同じですよね。分類するには共通項と差異が明快にならないとうまくいかないのですが。互いに結びついたり離れたりするのは、その共通項と差異の両方があるということですね。

大島先生:そうです。そして明快でないとき、グレーになるわけです。ここが問題解決で困難なところです。

本橋先生:パラドクスとかジレンマですね。まさにそこが思考の一番面白いところだし、問題解決でスリリングなとこころです。IB(国際バカロレア)のディプロマのハイレベル数学では、デンジャランス・ナレッジというカントールやゲーデルの登場するプログラムですね。

菅原先生:カテゴライズとかそれがショートするパラドクスとか、それはまさにテクニックだとか吟味だとか、最初に大島先生が提示した項目に当てあはまる話ですか。だとすると、知識と思考の一元論化というネットワークの構築には、そのテクニックが欠かせないということですよね。

大島先生:その通りだと思います。この間、「21会論叢」にも掲載したけれど、「比べる」という反転授業用教材を制作したのです

有山先生:カテゴライズするには、たしかに比較しなければなりません。比較するとどうして共通しているのか、違うのか、理由=因果関係のネットワークが増えますね。

本橋先生:昨年から聖学院で行っている「思考力セミナー」でも、「比較」「因果関係」「カテゴライズ」は必ず問いかけます。

有山先生:工学院でも先日「思考力セミナー」を行いました。「トイレ」をテーマにしました。

大島先生:衝撃だよね。デュシャンが「泉」を美術館に出品したときと同じくらいサプライズだったのでは。

有山先生:そうです。しかし、マンダラートというマッピングシートで、カテゴライズというより、大島先生の知のネットワークのようなシートを活用すると、どんどんでてきます。色々な国のトイレから、人間の生活の違いに気づく生徒もいました。

菅原先生:知のネットワークが、思考のテクニックにかかわっていることがわかりましたが、いわゆるテクニックではなく、知識の身体の部分のようなものですね。私たちが、知識と思考を一元論化したとき、知識が身体化するということが腑に落ちました。何より「サプライズ」ということが知識と思考の関係で生まれるということも、言われてみれば当たり前ですが、新鮮でした。

本橋先生:知識は、決して論理の文脈だけではなく、先ほど菅原先生がおっしゃったように、意志や配慮という気持ちも、サプライズという躍動感、これは心理活動と身体活動の両方を含んでいますが、そういうもの全体が絡んで、「関心」という場を形成するという、最初の話に戻りました。しかし、そこからまた、もともと関心のない場に子どもを連れていったとき、そこから問いはいかにして生まれるのかという新しい問いが生まれてきたような気がします。

大島先生:来たー!って、こういうときに使う言葉でしょうか。その通りです。だから対話です。関心がない場、たとえば、トイレとかゴキブリとか、そんな課題のトポスを設定した場合どうなるか。有山先生の言うように、カテゴライズという、比較や因果関係などを対話する。するとどうなりますか。

菅原先生:今まで気づかなかったようなことがそこに広がれば、そのこと自体「差異」ですから、サプライズが生まれます。内容がマイナスだと哀しみが生まれますが、プラスの「差異」だと楽しさ、have fun ! が生まれます。

有山先生:いつも始めは終わりで、終わりは始めですね。好奇心、興味・関心は初めからある場合もあるし、あとから形成する場合もある。でも、大切なことはやはりサプライズであり、have fun であり、楽しいということですね。問いを立ち上げることは楽しくなくては、あるいは楽しくなくては問いは立ちあがらないということでしょう。

大島先生:今日は、課題の場の設定、問いの立ち上げ、思考のテクニックが、こんなに深く広く結びたいとは、実に感動ですね。まだまだ深めなくてはと思いますが、まず一回残りの「実行」と「評価」のところまでいって、また循環しましょう。螺旋という意味で。

今度は思考力テスト部会から、「実行」としての「思考力テスト」あるいは「思考力セミナー」のテキストの提示があるのですね。そして、当然それには「評価」が関係してきます。思考力部会の座長は本橋先生ですね。それでは今日の知のバトンを渡します。

本橋先生:はい。引き受けました。有山先生と「対話」をして課題の場を提供いたします。次回のセミナーでぜひまた新たな問いを立ち上げていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

大島先生:それでは知の饗宴にでかけましょうか。みなさま、ありがとうございました。

 

 

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