東京女子学園 デビッドソン予測すでに克服(1)

東京大学大学院准教授山内祐平氏は、米デューク大学の研究者であるキャシー・デビッドソン氏が2011年8月、ニューヨークタイムズ紙のインタビューで語った予測を紹介。

「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」。日本の中高・大学をはじ産官学に衝撃を与えた。

しかし、110周年を迎えた東京女子学園は、職業や企業、ライフスタイルが時代の大転換のたびに大きく変わることを、近代化日本誕生時から体験済み。

時代の変化に翻弄されない生き方教育として独自のキャリアガイダンスを9年前から構築していた。by 本間勇人:私立学校研究家

東京女子学園のキャリアガイダンスの先進性と独自性

今ここで学んでいる中高生にとって、進路先を考えることも、モチベーションを燃やして仕事に就く職業観を持つことも、未来の変化を知りそれに対応する人生を送ることを考えることも重要である。

しかし、それだけでは、大事な点を見逃していると東京女子学園教頭古城尚武先生は語る。

「20世紀末にバブル崩壊やIT革命に直面し、時代は大きく変化しました。それに伴って、フリーターやニートの問題も社会に現れました。

文部科学省、厚生労働省、経済産業省および内閣府なども、関係府省で連携強化を図り、2003年にようやく、将来を担う若者たちに勤労観、職業観を育み、自立できる能力をつけることを目的とするキャリア教育という構想を打ち出してきました。

それまでの進路先教育とは違い、若者たちの意識に踏み込んだところは評価できます。しかし、本学園は、何よりも重要な具体的な人生を生きていく“生き方”そのものを、ふだんの教育活動の中で、生徒たちと取り組んできました。

それをプログラムとしてきちんと表現することが日本の教育にも貢献することだと考え、キャリアガイダンスという講座を高校3年間の恒常的な学びのシステムとして積み上げてきました。」

進路先教育、職業観教育というのは、ある意味人生を考えるきっかけが外発的である。たしかに、昨今のキャリア教育は、

(1)人間関係形成能力―自他の理解能力とコミュニケーション能力
(2)情報活用能力―情報収集・探索能力と職業理解能力
(3)将来設計能力―役割把握・認識能力と計画実行能力
(4)意志決定能力―選択能力と課題解決能力

という重要な能力を養うように方向づけられている。しかし、これらは、中等教育レベルでは、技術訓練として集中講座を開設して行えばそれで身につくかというと、それがうまくいかないことは火を見るよりも明らかである。

そこで東京女子学園は、生徒の教科学習や進路の学び、面談などのあらゆる教育活動とキャリア教育が有機的にリンクするプログラムを開発した。そのために、中高の教育活動の専門家である教師陣とキャリア教育の専門家であるキャリア・コンサルタントチームとコラボレーションして作り上げた。

時代がどんなに変化しても、それに右顧左眄せず、翻弄されずに、内発的モチベーションを内燃させて、自己実現に向けて人生をおくる。

同時にそれまでに人間関係を中心として構築しサポートされてきた社会のネットワークにいかに貢献するかという共に生きる生き方を身につけられるキャリアガイダンス。

これは東京女子学園が目標とする、生徒たちの幸福に満ちた人生をサポートする教育活動の一環である。

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