第1回 21会Webグローバル教育セミナー(4)

英語教育・留学プログラム

江川先生:それでは、具体的な取り組みとして、英語教育や留学プログラムの話をお聞かせください。

青井先生:中3で全員がカナダにホームステイします。高1になると、英語コースの生徒がイギリスにホームステイ、高2で全員が修学旅行でローマとパリに行きます。若くて感性が豊かな時に、本物を見せたいという思いがあってヨーロッパに連れていってます。実際、オルセー美術館で「笛を吹く少年」を見て涙を流す生徒がいるなど、大きな影響を受けてくるんです。本校がインターナショナルコースでダブルディグリーという試みを始めるのも、やはり世界に目を向けていかないと、この先は渡っていけないという危機感があるからです。先日、韓国の英語村を視察してきてもらったんですが、韓国では国全体が英語教育に力を注いでいるのがよくわかりました。本校で英語村に宿泊できないかを調べてみたら、夏休みの間サムソンが借り切っていたのです。社員の研修をするのかと思ったら、そうではなく、社員の子供の教育のためというのです。これでは日本はまずいと改めて感じましたね。

 

江川先生:本校では10年程前に、高1の段階で1年間留学をするようになりました。最初は10名ほどの参加でしたが、今は46名います。最初は正直なところ、進学実績を上げるという目的もありました。英語力は受験でも合否に大きな影響を与えますからね。そして、せっかく1年間ニュージーランドの留学をやっているのだから、中学生の修学旅行を同じニュージーランドに変えたら、現地で1年間留学に行っている先輩がお世話することもできるだろうと思い、そういう仕組みを作りました。それからは、修学旅行に行った中学生たちが、先輩のように1年間の留学に行きたいと思うようになり、1年間留学に行く生徒も徐々に増えていったわけです。また、高校生の修学旅行は、これまでオーストラリアだったのを今年からロンドンに変えて、より語学面を強めるプログラムにしています。残りたい生徒は1ヶ月間そのまま残ることもできるのです。さらに、今度入学する中学1年生が中3になるときに、ニュージーランドに3ヶ月間行けるようにするプログラムを新たに作りました。中3の3学期は、先取り学習はやめてギャップタームのような使い方に充てることにしたわけです。そんなわけで、長期・中期・短期と、3つの留学プログラムが存在しているのです。

伊藤先生:英語教育にしても留学にしても、私学だからこそプログラムを自由にデザインできる良さがありますよね。ただ留学制度がポンとそこに置かれていても、誰もそれを利用しようとは思わないと思います。でも、学習効果や効率性を考えて、仕組みを適宜変えていくから、プログラムが魅力的に感じられるのだと思います。江川先生がおっしゃるように、以前は大学入試で英語ができると有利だという発想で英語コースも設置されていたように思いますが、現在は、英語という言語を通して世界を眺めてみようといった方が主流になりつつあります。本校でもスーパーイングリッシュコースで、短期留学や1年間留学を組み合わせながら、海外大学への進学への道筋を示しています。

辰巳先生:本校では3週間のアメリカ研修が高1で実施されていて、80%くらいの生徒が参加します。中1から週に1度「World Study」という授業があり、そこでは会話の中身を作っていくのです。中1から高3まで6年間、英語で日常会話を少しずつ学ぶようになっていて、交流するための話題を身につけます。話題があれば会話が進む、会話があれば交流も進むという考えです。ボランティアとか環境問題とか、話題をカードにして持っているので、ホームステイ先での会話に困らないわけです。もう35年やっているプログラムなので、現地でお手伝いしていただいている方も勝手が分かっていて、非常に効果があります。

江川先生:まさに会話のツールという考えですね。本校でも、浴衣やおそば、家族の写真などの会話のツールを持っていかせるように指導をしています。

白鶯先生:本校も短期留学は40年以上前からやっています。折り紙や書道といった日本の文化をイギリスの生徒に紹介するなどといった交流をしています。私は歴史の教員なので、交流よりも歴史的建造物などの観光をすればいいのになどと思ってしますのですが、生徒はやはり交流が楽しいようです。戻ってからもメール交換などをすることで、英語力向上に役立っているのではないでしょうか。また、高1や高2の希望者には姉妹校への3ヶ月や6ヶ月の留学も用意されています。日本を離れる期間が長いと、それだけ家族のありがたみも感じる度合いも強くなるようで、英語以外に人間的に成長する面が、留学の効果としてはあるのではないでしょうか。

江川先生:そろそろ予定の時間となりました。この続きは、懇親会の方で存分に意見交換をしていただければ幸いです。本日はありがとうございました。

 

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