文化学園大学杉並 グローバル教育の未来を拓く(1)

文化学園大学杉並は、2014年度からは中学部にグローバルコースを、2015年度からは、高校部にインターナショナルコースを新たにスタートさせる。この新コースは卒業時に日本とカナダの二つのディプロマ(卒業資格)を取らせるという、画期的なものである。日本の中高のグローバル教育の新たな指針を示すものとして、大きな影響を与えることは必至である。新コースを牽引する青井先生と小島先生にお尋ねした。by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

 

2015年開設予定のインターナショナルコースは、認可申請中とのことで、青井先生は、「まだ全貌を明らかにするには時期尚早ですから」と、慎重に言葉を選びながらこのコースについて教えてくださった。申請中とは言っても、すでにカナダのブリティッシュコロンビア(BC)州の教育省とも具体的に話が詰められており、ここまで段階が進んでいれば、認可についてはほぼ確実であろう。

このインターナショナルコースは、BC州と日本の高校の卒業資格が両方とも得られる、いわゆる「ダブル・ディプロマ」が特長である。このことの凄い点を、まずは整理しておきたい。

BC州のディプロマを取得するということは、それだけで欧米の主要大学への進学パスポートを手にしたことになる。ここは重要な点である。ディプロマは、単に高校を修了したことを表しているだけではなく、大学に入学する資格を有していることを証明するものなのである。日本でいう「高校卒業資格」と異なる点はここにある。

一方で、日本の学習指導要領に沿った履修も行われるため、日本の大学受験をする上でも、出願上の制約はまったくない。日本のインターナショナルスクールの場合、国内の大学受験において出願上の制約を受けることが多いが、そのような心配が要らないわけである。

さらに、BC州カリキュラムという目のつけどころも鋭い。カナダは移民が多く、英語とフランス語の二か国語が公用語になっている関係で、多言語・多文化社会を前提にした教育が進んでいる。ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)をいち早く導入しているのも、言語教育についての目配りがよいことを表している。しかも、アメリカとの国境が近いこともあって、アメリカの文化的影響を相対化するためのメディアリテラシー教育も発達している。

平たく言えば、英語を上から授けようという態度ではなく、英語を数ある言語の一つとして捉えた上で、Non-Nativeがどのようにそれを習得するのが望ましいかについて徹底的に研究している国なのである。国際バカロレア(IB)も、西洋的な価値観を中心としない教育に徐々にシフトをしているようであるが、BC州カリキュラムはそのあたり、先を行っている。

では、このBC州カリキュラムと日本のカリキュラムをいかにして両立させるのか。そのあたりについても伺ってみた。

当然勉強時間を増やさないと二つの教育課程を修了させることなどできない。そのために、平日の授業時間数を7時限にするほか、BC州での5週間のホームステイがカリキュラムに組み込まれるという。
これまで英語コースを牽引し、実際に海外研修プログラムなどを推進してきた経験があるだけに、インターナショナルコースが目指す教育水準の高さについて、青井先生は気を引き締めて臨む覚悟を話してくださった。
 
そうは言っても大変な面もあると考えています。インターナショナルコースに入る生徒には全員Dogwood*を取得してもらいたいので、7時限授業の後にも、特別補習を用意します。勉強漬けというイメージを持つ人もいるかもしれませんが、塾に行って受験対策の勉強をすることに比べれば、有意義な学習になると思います。世界に通じる教養やビジネスでも通じる交渉力につながる英語力を見つけるわけですから・・・。もちろんその英語力は大学受験でも役立ちますしね。
*Dogwood…BC州の高校ディプロマの別名
青井先生によると、学年が上がるにしたがって英語の比重を高めるという。そして高1の終わりの段階では、コースを継続していくだけの学力・英語力が身についているかどうかもチェックしていくという。
これほどの手厚いフォローをしてまでも、生徒にダブル・ディプロマを取得させたいという意気込みは、どこから来るのだろう。青井先生はその理由を次のように語ってくださった。
今回カナダのプログラムを研究するために、膨大な英語の資料と格闘し、カンファレンスやパーティで外国人をもてなしたり、あるいは交渉をしてきました。その中で感じたのは、語学力としての英語はもちろんですが、それ以上に、国際的な教養や異文化理解力、それにビジネスのための交渉ストラテジーなどを身につける必要があるということです。これから社会はますますグローバル化が進んでいきます。今の中高生が社会に出るころには、単一言語・単一文化では生き残れません。そういう意味では、この新しいコースをぜひ今後のグローバル教育のモデルとしていきたいですね。
 
青井先生は、カナダのBC州のカリキュラムを選定するまでに、様々なプログラムを比較検討してきた。最終的にBC州カリキュラムを選んだのは、やはり言語教育に対するきめ細かさだったのであろう。例えばEnglish Language Artsのカリキュラムの説明をぱらぱらと見てみれば、そこには当然のごとくCritical Thinkingのエッセンスが組み込まれているし、ヴィゴツキーの発達の最近接領域の考えに基づく指導案が盛り込まれている。こんなカリキュラムで学べて、しかも日本の卒業資格も得られるというのだから、このコースで人気が出ないはずがない。
 
 
 
次の記事では、インターナショナルコースに接続するグローバルコースについてご紹介したい。
 

 

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