共立女子 渡辺校長 最高価値の実現の道(1)

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渡辺眞人校長は、たんに共立女子の学校運営を充実させるのみならず、時代の最高価値を教育を通して実現し続けてきてたし、これからもその灯を絶やすことはない。時代の最高価値とは何か?それをいかにして可能にしてきたのか?平成26年度入学式のときに、インタビューした。by 本間勇人:私立学校研究家

共立女子は19世紀末に34人の先覚者によって創設された。一人のオーナーが、熱い教育理念を掲げ、トップダウンで経営する私立学校とはかなりシステムが違う。理念そのものが、未規定性の余地があり、その正当性と信頼性、妥当性が議論によって、常に磨きあげられる優れたシステム論を伝統的に内包しているのである。

19世紀末から20世紀前半は、日本も世界の近代化に巻き込まれていった時代である。共立女子はその名の「共立」に象徴されているように、普遍的最高価値を求め、その求道の過程に生徒の成長を教育する学校である。

しかし、近代日本は、そのような普遍的価値は、優勝劣敗という進化の過程で塗り変えられる相対的なものに過ぎないとして、日清・日露、2つの世界大戦への道を歩んだ。共立女子も国家の教育政策に翻弄されつつも、しかし普遍的な価値を捨てることはなかった。

渡辺校長によると、だからこそ戦後、19世紀末のもう一つの近代の夢を実現するために、その理念を先鋭にするために、今の校訓に再構築されたのだという。それは、時代を超える近代の普遍的価値である「自由・平等・友愛」に重ね合わせる作業でもあった。

そのことを渡辺校長にはっきり伝えられたのは、東北大震災のときである。日本はこれ以降、特に「フクシマ」という記号で、社会進化論的な優勝劣敗主義を反省することになるが、渡辺校長は、それは1755年のリスボン大地震の時に、啓蒙思想が立ち上がったのに似ているという。

大地震のような予測できない変化によって凄惨な被害に遭遇したとき、人類は相対的な価値に翻弄されることに疑問を持つようになる。時代を超えて普遍的な価値を求道することこそが、ふだんは意識しない人間存在の深層にある最高の価値を見出す道なのではないかと。

共立女子は、リスボン大地震や東北大震災のような自然災害ではないが、戦争という凄惨な事件を通して、最高価値を求めることこそ重要であるとし、そのときに再構築されたのが「誠実」「勤勉」「友愛」という校訓である。

以上のような歴史的パースペクティブを広く深く洞察してきたのが渡辺眞人校長である。そして、正面玄関を行き交うごとに、この校訓が生徒の暗黙知になるように、認知科学的手法のアフォーダンスを活用して、校訓を象徴する3つの花の記号を空間に埋め込んだのである。最高価値の実現は、共立女子のあらゆる機会で行われる「表現活動」にこそ奥義がある。

 

 

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