自分たちの家庭の食卓について多角的に話し合ったあと、写真が各チームに1枚ずつ配られた。模造紙の真ん中に写真をおいて、マインドマップよろしく、写真から気づいたことをどんどん書き込んでいく。気づいたことはなんでも否定せずに書いていく。
写真は4種類、すべて家族とその家族が食する1週間分の料理が写っているが、国は違う。西さんは、とくに何を読み取るように指示はしない。生徒がのびのび話し合っているのを見守っている。
ただ、1つひとつのチームの話し合いを見ながらも、生徒たちの気づいたことをおうむ返しのように、そうなんだあ、ここを見ているんだねとマイクを通して、語りかける。意図しているかどうかはわからないが、その柔らかい声と、テンポが、チームのコンヴィヴィアルな勢いを活性化しているかのようにみえた。
生徒は、家族構成や食物の種類、添加物が使用されているかどうか、着衣についてなど細かく楽しそうに話し合っている。すでに自分たちの家族の食卓について9つのポイントで情報を交換しているから、それも一つのトレーニングになっていて、話しやすそうだった。
そして、その話し合った内容をプレゼン。そのとき、4種類の写真が、どこの国か明らかになっていく。特徴的な着衣や食事に、チームの話が国を特定出来る場合があり、ただ楽しい段階から、西さんのワークショップの意図に気づき始めた生徒。
もともとDEARとのワークショップは、多様性や格差の問題解決が背景にあることは知っているから、そこに生徒たちのパースペックティブが広がっていった。
そのとき西さんは、チームメンバーを入れ替えて、さらに写真を二枚付け加えた。日本とアメリカの家族とその食卓の写真である。
そして問いが投げられた。「行ってみたい国順にならべてください」と。今度はチームで合意形成するわけだけだから、少し話は楽しいという段階から興味深いという段階に移行したようだった。