順天 SGH 3つのワーク(3)

行ってみたい国ランキング1位は、すべてのチームが米国を選んだ。こんなにもアメリカナイズされているのかと面食ったが、まったくそうではなかった。西さんのワークショップは、そのような大人の先入観を心地よくも軽やかに崩していった。

すかさず、住んでみたい国はどこか問いかけた。すると、今度は2つに分かれた。日本とグアテマラ。西さんが理由をたずねると、慣れ親しんだ文化を重視するとか、自然を大切にする文化とか、食卓から文化に目をむける転回が生まれていた。

この自己と他者への眼差しの広がりが出てきたところで、またもしかしたらギャップへの驚きを生徒が感じ始めたところで、西さんは、いくつかデータを提示し、それをどう読むのか働きかけた。

自分事として多様な家族の姿について<話し合うことによって、西さんの問いかけに応えられるようになったのか?いやそこが目的ではなかったと思う。データから、目の前の自分たちの世界と地球の裏側まで全球を見渡した時、その違いやギャップを高感度に感じることができるようになっているかどうか、実際には、その場に行ってみなければリアリティを感じることはできない。

しかし、それはみんなが体験できるわけではない。豊かな感性とは、遠くの見えない世界の痛みをどこまで自分事として感じることができるのかという機能なのかもしれない。西さんは、生徒たちがフィリピンに行く前に、どこまで日本に居ながらにして、その感性をもてるか、問いかけていたのかもしれない。

中原先生よると、SGHの試みでは、DEAR以外にも連携していて、この間実施されたAPUの近藤教授のワークショップでは、隣にいつもとは違う他者が座っていたらどう感じるかという、隣接状況で生まれる気づきが中心に展開されたという。

今回の西さんのワークショップは、遠くの国の話題が中心だった。わたしたちは、近くにいても遠くにいても、無視できない問題にこんなに豊かに囲まれているのである。そしてどれほど多くの問題を意識の奥深くに眠らせていることか。順天のSGHで育つグローバル人材とは、全球的問題を覚醒する人間ということになるのだろうか。

中原先生の眼は、答えを急がないようにしましょうと語っていた。

 

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