3月21日に開催された21会教育セミナーでかえつ有明の新校長石川先生が語ったプレゼンテーション「未来からやってきた留学生」は、これからの社会を牽引していく子どもたちの学びを考える上で非常に示唆に富んだものであった。
アクティブラーニングのあり方
石川先生のプレゼンテーションは、昨今アクティブラーニングという言葉がよくメディアを賑わすようになっているが、クラスでおしゃべりが盛り上がったらそれはアクティブラーニングと言えるのかどうかという問題提起で始まった。そこを考えるための補助線としてReactiveとProactiveという二つの概念を提示しながら、予定調和の「リアクティブラーニング」ではなく、変革を促進する「プロアクティブラーニング」こそが大切だというメッセージを発信した。
突破思考
これまで気づかなかったような見方に気づけるような学びの状態、思考が活性化しいわゆるフロー状態を作り出すような学びのあり方がいかにして可能になるのか。そこの一つのモデルが、かえつ有明の今年の卒業生で、東京大学理科1類に合格した帰国生の学びのスタイルである。それを一言で表すなら「突破思考」であると石川先生は明快に示された。
自分が当たり前だと思っている世界に揺さぶりをかけるもの、それはある時は音楽や美術といったアートであり、そのような感性に訴えてくるものを知的に捉え返すことが自分の能力を拡張していくことにつながるのであると。実際この生徒は、ガリ勉で東大に合格したのではなく、シンガポールから来客があれば受験の講習会よりもそちらを優先するし、後輩や先生との対話を楽しみ、自分にないものを吸収しつつ成長していったのだと語る。
ランゲージアート
生徒が受けていた英語の授業は、文学についての対話・議論であった。フィッツジェラルドの「グレートギャッツビー」の原文に触れながら、表現の象徴性について1500 wordsの英文エッセイを書いたのだという。しかも、一見受験に関係のないこの学びが最も楽しかったとその生徒は語った。エッセイを書くまでに交わした先生との対話、そして作品の中に潜んでいる象徴性への気づき、正解のないものに自分なりの解釈を見出すことの喜び‥‥。そういったことすべてがこの生徒の学びの原動力であったのだ。
知ることの喜びに触れたこの生徒が、脳と宇宙という二つの大きな謎に惹かれ、東京大学で学びたいという気持ちを強く持ったというのは想像に難くない。
知のコード
石川新校長はこのような学びのプロセスを「かえつ有明 知のコード」として教員間でのシェアをしているのだという。
論理と倫理と美学の学びの領域を縦横無尽に行き交い、それぞれの限界を突破しながら楽しむ子どもたちと先生の姿が目に浮かんでくる。かえつ有明は21世紀教育の旗艦校としてますます注目を集めることになるであろう。