工学院 IB型考える授業公開(4)

PBLを授業で行うことはいかにして可能か?本来、1つのテーマについて数か月、1年、あるいは3年間ぐらい探求を深めていく学び合いの体験がPBL( Project Based Learning)と呼ばれている。それだけに、このPBLは生徒1人ひとりの世界観を広げ深めていくし、チームワークやリーダーシップ、メンターなどのコミュニケーション行為も育てていく。

しかし、21世紀型教育では、授業は知識を教えるのではなく、知識を活用する方法や好奇心を公共的な関心に広げていく学び方を学ぶことが目的になっている。というのであれば、PBL的な学び方、学ぶ意欲を授業で学ぶことは可能なはずである。

実際IB(国際バカロレア)のプログラムはそのようになっているわけだから、大学や企業における研究や開発のためのPBLではなく、学び方、学ぶ意欲、多角的な考え方、多様な発想法を学ぶ場として授業を捉え返そうとしているのが工学院の教師なのである。

アクティブラーニング:PBLの前提はフィールドワーク

アクティブラーニングは、まず個人ワークから始まると述べた。その際、その問題に直面(フェイス)して、逃げ出さ(フライト)ず、学ぶ意欲を燃やせるのは、ワークシートで発せられた問いがそもそもフロー状態(没入状態)になれる質であるからであるとも述べた。

では、その問いがフロー状態になれる何かをいかにして内包できるのだろうか?それこそ中高時代の「体験」に横たわっているのである。工学院には、沖縄修学旅行やオーストラリア研修、10000人規模の科学教室など豊かな「体験」のチャンスが多い。

(フィールドワークの体験は編集してプレゼンする)

その「体験」はしかし、リサーチであり、実験であり、フィールドワークである。体験してああおもしおかったで終わることなく、そこに探究活動がはじまる契機がある。したがって、フロークエスチョンは、その強烈な体験を再び喚起するものである。

だからこそ、「人口爆発と貧困の解決」「南北問題の解決への提言」「フィリピンFWを通して」「ストリートチュルドレン」などの問題意識が生まれる。プレゼンテーションそのものは、アウトサイドのアウトプットであるが、そこに到るまでのインサイドにおける自問自答は深く広くなっていく。

最終的には、国際機関をどのように機能させていくかまで提言するほどになっているが、そこは主観的なアイデアや客観的なデータを示すだけではなく、サンデル教授の正義問題としての判断力まで、思考力を高めていく。

しかも、この過程における自問自答のリフレクションは、上記のような思考コードによる「ルーブリック」が教師と生徒間でシェアされていて、エンパワーメント評価ができるようになっているのだ。

アクティブラーニング:PBLの基礎「新聞切抜き作品」の作成

フィールドワークなどの体験から気づいた問題意識を、ではどうやって探求していくのだろうか?それがPBLなのであるが、すでに工学院では、全学年、すたわち学校全体で「新聞切抜き作品」作成をPBLのスタイルで長年やってきた。

毎年優秀賞を受賞しているほど活発に挑戦してきたのである。したがって、社会科の授業が中心となって行われてきたわけだが、全ての生徒がPBLとは何か体験していたわけである。

新聞切抜き作品の編集は、新聞記事で新聞を再構成するわけだが、その過程は、個人的な関心を公共的な関心に高める学び合い、つまりインサイドでの自問自答を深め広げる基礎を築いてきたのである。

 

 

 

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