富士見丘 SGH研究発表会(1)グローバルリーダーの意味

富士見丘は、2年前にSGH(スーパーグローバルハイスクール)アソシエイト校になり、昨年SGH指定校となりました。したがって、2月20日(土)に開催された「SGH指定校としての第1回SGH研究発表会」は、実際には2年分の挑戦の積み重ねが集約されていて、非常に高密度の発表会となりました。by 本間勇人  私立学校研究家

§1 富士見丘のSGHの本質的意味

SGHといえば、2020年大学入試改革―とりわけSGUの世界大学ランキング向上計画大学―に接続するグローバルリーダーを育成するモデル校。日本全国の高校でも3%しか指定されていません。CEFRでB2英語を達成することやアクティブラーニングを実施すること、そのための新しい教科プログラムの開発及び実践、高大連携、企業連携、海外フィールドワークの実施など、かなりハードルの高い条件をクリアしなければ指定校にはなれません。

ですから、富士見丘はそれだけでも、きわめて特徴的かつ斬新なプログラムを開発・実践しているのです。

しかしながら、果たしてこのようなプログラムが一朝一夕でできあがるでしょうか?できないのは言うまでもありません。ここに到るまでの実績の積み上げが肝心なことは言うまでもないでしょう。

吉田理事長・校長によると、「すでに1972年のイギリスの短期留学を、他校に先駆けて実施して以来、多様な海外研修プログラムを積み上げて、今ではロンドン大・キングスカレッジと推薦入学指定校の協定締結ができるまでになったことが大きな実績となったと思います。また、2013年には、ザイード未来エネルギー賞グローバルハイスクール部門ファイナリストに選ばれたことも大きな実績として認められ、SGH指定校になったのではないかと考えています」ということです。

しかし、このザイード賞にしても、もともと2000年に創立60周年を契機に建築した校舎のコンセプトが「地球にやさしい、人にやさしい」エコスクールだったことに端を発しているのです。吉田校長は「学びというのは、強制されるのではなく、知らず知らずのうちに、自然と身についていく学びの環境を創意工夫することが大切です。生徒会を中心に、ごみを収集し、生ごみから有機肥料を商店街の方々とコラボしてつくっていくプログラムがそのころから作られましたが、それは日々の校舎での生活の中に、そのヒントが埋め込まれているというデザインをしたわけです」と。

すでに21世紀にはいってから、壮大なプロジェクトベーストラーニングが形成されていた奥義が披露されました。

このような国際理解教育と環境教育、そしてそれらをすべての生徒が体験し深く学んでいく共有ビジョンとして、同校の建学の精神「忠恕」が有機的につながったSGHプログラムが創られたのです。

富士見丘のSGHプログラムの大テーマは「サスティナビリティから創造するグローバル社会」となっています。ここに、他校とはかなり違う同校が考えている本質的でオリジナルのグローバルリーダーの意味が埋め込まれています。

それは、サスティナビリティの背景には同校の建学の精神「忠恕」という意味が含まれています。創造には「クリエイティビティ」という意味が、グローバルには「4技能の英語」という意味がそれぞれ含まれていると考えられます。

そして、さらにそれらをそれぞれ、次の言葉に置き換えてみましょう。「寛容(トレランス)」「才能(タレント)」「技術(テクノロジー)」となります。これは、21世紀になって、リチャード・フロリダ教授をはじめとするグローバルシティ構想を実現しているチームでいうクリエイティブクラスの3つの条件3Tに相当します。

世界は、近代国家と国際都市以外に新しくグローバルシティ‐が重なり合って、複雑な様相を呈しています。その複雑系が、不確実で不透明な不安定な世界の変動をつくっているといわれています。このような激動の見通しの立たないグローバル世界に挑み、なんとか問題を解決しようとするグローバルリーダーは、「サスティナビリティから創造するグローバル社会」を創っていく3Tの力が必要になります。

グローバル経済に精通しているグローバルリーダーとは、同校の考えているグローバルリーダーを目指す生徒像は本質的に違うのです。

Twitter icon
Facebook icon