工学院 ミネルバ大学もうなるSGT教師陣

今月14日、工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)は、工学院大学新宿キャンパスで、プレス・リリースを行った。2018年4月から、工学院の高校がハイブリッド4コース体制にするという画期的な教育イノベーションを発表した。

同時に、八王子キャンパスでは工学院の中学3年生は、あのハーバード大学でさえも改革の刺激を受けざるを得ないイノベーションを起こし、世界で今話題沸騰の大学がやってきていた。それはミネルバ大学で、日本事務所代表の山本秀樹氏によるスペシャルプログラムが行われていた。

工学院は、大学のみならず中高も、新宿キャンパスと八王子キャンパスで同時に教育を展開していく動きが加速しており、他校には真似のできない教育イノベーションを生み出している。by 本間勇人 私立学校研究家

2018年の高1から、2020年大学入試改革が行われるわけだが、実はその年はドバイで万国博覧会が行われる年でもあり、教育も研究も産業も一斉に第4次産業革命に突入する年である。そのときに、高いレベルの英語力が要求され、高次思考に基づいて多様性の中で議論する力が要求される。AIをはじめとするICTのテクノロジースキルは求められるのは当たり前の状況になっているだろう。

それを見越して、工学院では、3年前から本格的な教育イノベーションを進めてきた。そして、いよいよその成果が見え始めたので、来春の高校1年生から順次、4つのコースでさらに生徒一人ひとりの才能を開花することに決めた。その4コースは次の通り。

すでに、ハイブリッドインタナショナルコースは、実は4年前からプレ改革を行っていた成果がでたので、今年から先行設置している。その手ごたえもあって、思い切って4コース設置を決断したのだと思う。

つまり、今回のプレス・リリースは、完全に<グローバル高大接続準備教育>にシフトする宣言だったのである。

したがって、八王子キャンパスでは、来年の高1である現中3に対し、ミネルバ大学の日本事務所代表山本秀樹氏を招き、特別キャリアガイダンスを行っていたのであろう。工学院もミネルバ大学も、クリティカルシンキング、クリエイティブシンキング、コラボレーション、グローバルリーダー育成という点で、シンクロしている。

そして、ミネルバ大学は7カ国のキャンパス(従来のキャンパスイメージとはかなり違うが)を移動しながらプラグマティックな学問を広め深めていくという点では、新宿キャンパスと八王子キャンパスの両スペースを行き来して探究活動をしていこうといる工学院とも息が合う。

しかし、山本氏が工学院の教育イノベーションの本質に触れ、自分の子どもをこんな学校入れたいとうならせたのは、同校のSGT(スーパーグローバルティーチャー)教師陣のミーティングに遭遇してのことだった。

山本氏は、中3のプログラム終了後、qTeam(クエストチーム)のミーティングにも顔を出した。そこでは、2020年大学入試改革(グローバル高大接続システム改革)を見据えてすでに実験的に出題されている東大、京大をはじめとする国立大学の高次思考問題を研究している。

その日は、小論文の問題、英語エッセイの問題、数学的帰納法の問題などを扱っていた。各教科の教師がどこが生徒にとって肝かプレゼンしたあと、参加していた他教科担当のSGT(スーパーグローバルティーチャー)が、高1の場合だと、その因数分解は気づかないが、その仕掛けはどうするのか?中学と高校では要約のスキルはどう変わっているのか?演繹的にやったほうがスッキリするのでは?などとコメントがあり、講師役のSGTが応答する対話が溢れた。

その後、チームに分かれ、このような問題では、生徒がどこに気づくと突破できるのか、そのためには、たとえば、高1の段階では、どの教科でもどんな創意工夫をして授業をしていくのか?議論してプレゼンしていった。もともと思考コードやコンピテンシー、思考のスキルなどについて議論をし、思考力セミナーでそのプロトタイプを作成していたから、工学院のSGTにとっては、当たり前のミーティングだった。

しかし、山本氏には、新鮮だったようだ。日本の学校で、教科を超えて大学入試問題の背景にある根源的な問いについて探究していくシーンに出逢ったのは初めてだったという。数学の問題についてて、国語や社会など他教科の教師が、いっしょに解く過程をチェックし、そこから問いの本質を見出していく高次思考のリフレクションループがそこにあったからであり、それはミネルバ大学の学問のアリカタと同期するところがあったのだと思う。

このqTeamのリーダーは、中学教務主任の太田先生と高校教務主任の奥津先生。お2人は、チームのプレゼンを聞いてはコメントを投げていくが、そのときどんなコメントを投げるかは、先生方の頭の中には、工学院の思考のエンパワーメント評価表である「思考コード」がある。生徒の最近接発達領域を発見しながら、次のステップにジャンプするきっかけになるトリガークエスチョンを投げかけるのと同じスタイル。

幾重にもリフレクションループが循環しているミーティングで、このミーティング自身が工学院のPBL型授業のプロトタイプでもある。今回の工学院の教師の対話を通して、「SGTという教師は、かくもアクティブブレインを生み出すために、リフレクションループのデザインをするものなのか」と改めて気づいた。いわゆるプロデューサ―とは違う大胆で繊細な役割を果たしていると感じ入った。ミネルバ大学の山本氏はそこを見抜いたのであろう。

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