GW明け早々の5月14日、聖ドミニコ学園は2019年度からスタートした新コースの授業を塾関係者に公開しました。英語によるサイエンス授業を説明会に出席している塾関係者に披露するなど、2020年度入試に向けてさらなるチャレンジに着実に歩を進めている様子がはっきりと印象づけられました。21st CEOに参加し2年目を迎える聖ドミニコがいよいよ本格的な21世紀型教育を発信させます。 by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家
この日の塾対象説明会は、インターコースの理科のモデルレッスンで開始されました。担当のデセオ先生がフレンドリーな笑顔とアクティブな動きで来場した塾の先生方を惹きつけていきます。スライドで絵や写真を見せながら、「なぜ?」そして「この後どうなる?」などと英語で問いかけていきます。もちろん正解は一つではないので、塾の先生方からは様々な答えが返ってくるのですが、そのたびに「Excellent(素晴らしい)」「I love that (その答え好きです)」などと賞賛しながら、その返答をもとにプレゼンテーションを進めていきます。
生徒にも同じスタイルで授業を行っていることが想像でき、ドミニコの先生方が新コースに対する自信を深めている理由が了解されました。これほどのエネルギーで授業をしてもらえるなら、生徒の英語力に関わらず、「科学的思考」そのものが促進されるはずです。「塾説」の常識にとらわれないデセオ先生のプレゼンテーションには、終了後に拍手が湧き起こるほどの「熱量」がありました。
デセオ先生は、問いかけを通じて、科学的な思考プロセスである「Observation(観察)」「Inference(推論)」「Prediction(予測)」の三段階を重視していることを説明しましたが、続いてプレゼンをしてくれた河野先生は、このプロセスが理科教育の本質であり、従来の日本の理科教育にややもすると欠けてしまいがちな部分であると語ります。インターコースの理科をサポートすることで、河野先生は、生徒だけでなく教員にもいろいろな気づきがあったといいます。その一つが科学的思考のプロセスを重視する理科教育のあり方で、固定的な知識ではなく、それを生み出すプロセスを学ばせる手がかりを得たということです。
ドミニコには「対話」の伝統がありますから、このようなリフレクションがそこかしこに発生しているのでしょう。単に英語による理科教育を導入したというレベルではなく、深い部分で「科学的思考」とは何か、理科という教科を通して生徒は何を学ぶのかという対話が行われているわけです。
聖ドミニコ学園のカリキュラムマネージャーである石川一郎先生は、デセオ先生の指摘した3要素のうち、特に「予測(prediction)」は創造的思考を伸ばす上で大切だと強調しました。答えのない世界を考えることがこれからの教育では重視されなければならないと指摘します。
説明会後の授業見学でも、21世紀型教育の要素が随所に見られました。理科の用語を英語で勉強しているインタークラスでは、教室の隅に「Alexa(アレクサ)」が置かれ、ウィリス先生が顕微鏡の部位についての定義をアレクサに尋ねるシーンなども見られました。面白いのはアレクサが置かれているのは、先生の机の近くではなく、生徒の座る机の後方で、まるでよくできる生徒が隅に座って、先生の問いかけに優等生のような解答をするかのような演出がされていたことです。
「アレクサ、きみなら顕微鏡の台座をどう説明するの?」「顕微鏡の台座とは・・・」のようなやり取りが教室に響き、なかなかハードな勉強の合間に、ちょっとした涼風がそよぐ感じがします。
ハードな勉強というのは、何も用語の暗記がたくさん課されるという意味ではありません。生徒が熱中して家で遅くまで勉強するのだそうです。廊下に張り出されていた課題がそんな様子を物語っています。ユリとアザレアを比べるだけならすぐに宿題が終わるかもしれません。しかし、花の構造を英語で確認しながら共通点と相違点を書き出す作業は中学1年生にとって途方もない学習量になるはずです。なぜなら「stigma」「ovary」という用語とともに、「柱頭」とか「子房」などといった日本語も同時に習得しているはずだからです。
こういった学習経験は彼らが社会に出た後に決定的に重要になってくるでしょう。日本の大学進学か、海外の大学進学かといった問題にとどまらず、世界とどのようにコミュニケーションをしていくのかという、まさに生き方が問われる時代がやってくるからです。