富士見丘 本物のグローバル教育をゆく (3)

学校を中心とする学びの環境の中で、生徒1人ひとりがそれぞれの好奇心や関心を抱く。それを学校内で学ぶだけではなく、外にも目を向け、あるときは外のネットワークとコラボして、新しい発見をし、課題を解決する活動をしていく。その活動がやがては進路やライフスタイルにも影響を与えていく。生徒会のプロトタイプが、学内全体に広がっている実感が伝わってきた。

富士見丘のグローバル教育のプロトタイプは輻輳的にリファインされていく

――生徒会活動が、富士見丘のグローバル教育のプロトタイプであることがわかりました。それは学内の他の活動でいえば、たとえばどういう学びがあるのですか。

大島先生:自主学習「5×2」という教育システムがその学びの場を形成しています。いわば、今話に出たプロトタイプを、全員が実践する場です。個々の出発点は違いますが、そのような学びの過程は全員が体験を積み上げていきます。

白鶯先生:月曜日から金曜日は、通常の授業が中心ですが、土曜日と日曜日は自主学習で、そのプロトタイプを積み上げていきます。もちろん、探究活動で生まれてくる疑問について通常の日も先生をつかまえては質問しています。

一つのテーマ、たとえば、「鳥の生態」とか「医療過誤」のようなテーマを6年間ずっと追究していた生徒も多いですね。前者のテーマを探究していた生徒は、お茶の水女子大に進んでいるし、後者のテーマを追究していた生徒は慶応大学法学部に進学しました。

大島先生:法律を探究テーマにしていた生徒は、小学校6年生のとき、病気で入院していた時のことがきっかけです。自分と同じ病気の子が医師のミスで後遺症が残ったという事件に遭遇したということでした。そこから「医療過誤」をめぐる法律制度や裁判制度を調べていったのです。

「医療過誤原告の会」のシンポジウムに出かけ、多くの方と出会い研究のネットワークを拡大していきます。早稲田大学法学部主催の「スーパー・リーガル・エデュケーション」という全6回のプログラムにも参加し、弱者の立場に立って遺族を守りたい、弁護士になりたいという気持ちが膨らんでいったようです。

法律の勉強だけでなく、いろいろな教科の勉強にも、この学びの方法は応用できたと語ってもいます。何より遺族の方々や自分を支えてくれている友人、教師、そして親に感謝を素直に抱けるようになったというのです。

グローバル教育で大事なのは、たしかに1人ひとりの才能だし、それを豊かにしていくスキルやテクノロジーです。しかし、最終的にはやはり思いやりや寛容性が抱けるかではないでしょうか。

白鶯先生:富士見丘のグローバル教育の学びのプロトタイプは、大島先生の話にあるように、個人の中で磨き上げられていくというプロトタイプのリファイン、リファイン、リファイン・・・が起きていますが、実は先輩後輩どうしの間でも生まれています。

サタディ―プログラムという5×2を促進する土曜日の講座がありますが、その中に、自主学習「5×2」の優秀作品や探求中のものなどを生徒どうし共有する講座があります。卒業生も含めた先輩が後輩にプレゼンして知的好奇心を高めたり、学びの方法や進路の相談にまでのったりしています。

ふだんの日もメールなどで情報交換までし、人間関係を深めていっている生徒も多いのです。人間関係抜きのグローバル教育は考えられません。

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