桜丘 臨界を突破して未来を描く教育環境(2)

桜丘の校訓は「勤労と創造」。これを現代化した表現が「翼とコンパス」。この不易流行としてバージョンアップしたビジョンをどのように実現していくのか、その桜丘の教育環境の一端について品田副校長が語った。

翼とコンパスの21世紀型イメージ

翼は、知識をコツコツつなげていくというイメージ。知識が記憶されて棚に並んでいるだけでは、何も動きがない。知識は互いにリンクすると化学反応がはじまる。それはエネルギーを生み出すだろう。まさにオープニングソング「ユリイカ」の表題そのもので、「わかった!」という何かが結節した音がするわけだ。

歌詞にもあるように、そのエネルギーは、「現状の天井 決めてしまわないで/ 限界を知りたくなんてないや/ 地平線 水平線 イメージは果てしなく/ たまんなく青は無限大だ」という飛翔のイメージを生み出す。

この限界や壁を認識し、乗り越える新しいパラダイムを見つけることは、古来より「教養」と呼ばれてきた。そして、教養を身につけるには、やはり古来より修業が積み上られてきたのである。

この教養の翼を身につけるときにコラボレーションもまた必要である。1人で立ち臨むのではなく、協力してチームで立ち向かう多様で寛容な知恵こそ教養。そうしてやっと限界や壁の向こうに羽ばたくことができる。

品田副校長によると、コンパスは、既存の知識である「地図」と対比される。自ら地図は書き直さなければならない時代の到来。その自らの力を強くするのにはどうしたらよいのか。

2つのノート

それには、「SSノート」と「家庭学習帳」を積み上げていくというのである。「SSノート」(Self-Study notes)は、日々の学びのプランを描き、振り返り、改善していくノートである。自分で描き、先生にアドバイスコメントをもらう。試行錯誤と振り返りと教師とのコミュニケーションが埋め込まれている。

何気ない作業のように見えるが、ここで育つスキルは、コミュニケーション、クリティカルシンキング、コラボレーションである。つまり、21世紀型スキルである5Cのうち3Cのスキルのベースが育成されるのである。

「家庭学習帳」は「カタガク」という愛称で呼ばれている。SSノートは、自分の学習習慣全体を鳥瞰するメタ認知(20世紀までは学習指導要領で積極的に取り扱われてこなかったが、新学習指導要領では構成主義的学習観として少しずつ注目されている)が養われるのだが、カテガクは、各教科の内容を整理し分析するノート。

つまり、深層に踏み入れる探求への入口である。家庭でノートをとる習慣は、頭を使う習慣でもある。その痕跡を教師が見れば、どこまで考えて学習しているかすぐにわかる。そこでアドバイスをするわけである。

学習習慣とは、ただ時間を費やす習慣ではない。ノートの取り方いかんで、学習時間を確保するのみならず、密度を高めることができる。まずは机に向かう。次に机の上で考える質をあげる。それが「ユリイカ」で歌っている「臨界を超える」ということ。

そのためには、教師のアドバイスの言葉は重要である。この質の向上こそ創意工夫である。創造(クリエイティビティ)への第一歩。こうしてコンパスの描き方の基礎が身につく。21世紀型スキルの5Cのうち4Cは、すでに2つのノートに取り組むことでめきめき育つ。

 

 

 

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